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感染症法は感染症を1~5類と「新型インフルエンザ等」などに分類していて、新型コロナは「新型インフルエンザ等」に位置づけられ、結核などの「2類」以上に相当する対応がとられています。
岸田政権は2023年1月26日、新型コロナウイルスの感染症法上の分類を5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる方針を固め、本日1月27日に開かれる厚生労働省の感染症部会での議論を経て、政府の対策本部で正式に決定します。
なんとマスクの着用は、屋内外を問わず、原則として個人の判断に委ねる方針ということです。
つまりもう、電車や病院や公共の施設でマスクをしていない人に着用を求める根拠はなくなります。
新型コロナの感染症法上の扱いの格下げに伴って、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の適用からも外れることになるので、政府の対策本部は廃止されますし、二度と政府は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの行動制限を伴う措置はできなくなります。
さらに新型コロナが5類に引き下げられると、感染者を隔離するための入院勧告をしたり、感染者や濃厚接触者に対して外出自粛を要請したりできなくなります。
濃厚接触者が外出できないことで病院での人手不足に拍車をかけていましたから、これまでの濃厚接触者についてはPCR検査で陰性なら働いてもらった方がいいわけです。
しかし、はっきりと検査で陽性になり感染していることが明らかな人が外出するようになるわけですから、これはこれまで以上に感染が拡大することは必至です。
コロナ第8波ではこれまで以上の感染者が出て、死者もこれまでの波で最大となり、この1月は1万人以上の死者が出るのが確実なのに、これ以上コロナ軽視で対策を緩和して市民の命と安全はどうするのでしょうか。
新型コロナ国内初確認から3年、ウィズコロナはまだ早い。コロナ第8波で最多のコロナ死者数を出している中、室内でのマスク解禁や感染症法5類への格下げはさらに市民の警戒心を緩め、被害を拡大するだけだ。
コロナを季節性インフルエンザと同じ扱いにする唯一の理由は、どの病院でも診察・治療ができるようにして、医療崩壊を防ぐという建前です。
しかし、実際には感染者数が数桁違う事からもわかるように、コロナの感染力は季節性インフルエンザよりも段違いに高く、だからこそ死者数もはるかに多く出ているわけです。
コロナ患者を診察できるようになったからと言って診察・治療を始めてくれる医療機関は少数にとどまり、むしろこれまでコロナ患者を扱うことで出ていた補助金などが打ち切られて、コロナから手を引く医療機関が多数出るかもしれません。
しかも、コロナはまださまざまな変異株が登場していて、5月以降にどんな事態になるか誰にも予想はできません。
コロナを5類扱いにするのは完全な悪手です。
そのようなコロナ対策を緩和しておきながら、屋内マスクについても本人の判断に任せる=ノーマスク解禁というのは、感染拡大を助長するものでしかありません。
感染者が外を自由に歩ける状態にするのであれば、せめてマスク着用はこれまで以上にきっちりしてもらうのが当たり前です。
そもそも感染症法の分類は危険度による分類ではなく、感染症の感染経路や症状による分類であって、マスクの着用の要否とは何も関係ありません。
HIVウイルス、いわゆるエイズも感染症法で5類なのですが、コロナ対策でノーマスクを解禁するのは、性行為でも感染することがあるHIVの患者がコンドームなしにセックスをするのも同然だと言われています。
新型コロナが5類になることで、感染者の全体を把握するために「発生届」を医療機関に提出させる必要も無くなり、感染者数の把握は医療機関を絞っての定点観測に移行します。
もはやコロナ感染者数の正確な把握は完全に放棄され、単なる推定となります。
さらに、感染者の入院医療費や検査費などを公費で負担したり、自宅や宿泊施設で療養する人に食事を支給したりする法的根拠もなくなります。
無料のワクチン接種もコロナの治療も、いずれは縮小し、有料化する前段階がこのコロナ5類への移行です。
新型コロナを感染症法5類にすれば何か問題が解決するわけでは全くないのです。
それなのに是が非でもG7より前に屋内マスク解禁とコロナ5類移行を岸田政権が急ぐのは、岸田首相がサミットで日本もウィズコロナ、アフターコロナになりましたと各国首脳に言うためのカッコツケでしかないのです。
新型コロナ1月死者1万人ペースの中、施政方針演説をノーマスクでやるパフォーマンスの岸田首相(呆)。中身はスカスカで防衛増税・原発推進隠し。愚かで不正直な岸田首相は内閣総辞職せよ。
Dr.岡の感染症ディスカバリーレクチャー 新型コロナウイルス COVID-19特講 2022
良書をお勧めしようとしても、コロナに関して正確な知識を伝えてくれる本が少なすぎ、反ワクチン陰謀論などのトンデモ本が多すぎますね。
以下に、現場で頑張ってきておられる岡秀昭さんなどお医者さんたちのインタビューを載せますので、ぜひお読みください。
岡先生と舩越先生のインタビューは必見で、舩越先生のハフィントンポストは字数が多すぎて転載できないので、図表を除いています。
ぜひ、もとのインタビューのリンクからご覧ください。
コロナ軽視・ノーマスク派の三浦瑠麗氏がテレビやツイッターから消えていて、彼女が大喜びする姿を見ないで済む、それだけはホッとするのですが。
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政府は26日、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを現在の「新型インフルエンザ等感染症」から季節性インフルエンザと同等の「5類」にする移行日を、5月8日とする方針を固めた。岸田文雄首相と加藤勝信厚生労働相ら関係閣僚が首相官邸で協議し、確認した。27日に新型コロナ感染症対策本部を開き、正式決定する。
また全額公費で負担している治療や入院にかかる医療費については、治療薬の無料提供を続けるなど一定の公費負担は残し、過度な患者負担が生じないようにする。医療機関への支援や補助は、3月初めごろまでに方針を決める。緩和する方針のマスク着用は屋内・屋外を問わず、個人の判断に委ねる。
移行日について政府は当初、年度が替わる4月1日を軸に検討していたが、自治体や医療機関が準備する期間を設ける必要があったほか、3月下旬から4月にかけて統一地方選が予定されていることに配慮した。また、行政や医療機関の体制が手薄になる大型連休の合間の5月1日も避けた。政府は移行日の1カ月前に、感染状況などから、移行が可能か最終的に確認するという。
首相は20日、今春に新型コロナを5類にする方針を表明した。移行時期は「できるだけ早いタイミングで確認したい」と述べていた。23日にあった厚労省の感染症部会で、移行について専門家から肯定的な意見が大勢を占めたことなどを踏まえ、具体的な移行日について検討を進めていた。同部会は27日も対策本部に先立ち開かれる予定で、5類移行に向けた専門家の意見をとりまとめる見通し。【原田啓之、神足俊輔、村田拓也】
感染症専門医が警鐘「コロナ5類移行の“開放感”が最も怖い」 「コロナ診療はどう変わるのか」など、徹底解説
1/26(木) 6:02配信
東洋経済オンライン
春にも感染症法の位置づけを引き下げる新型コロナ。それによって私たちにはどんな影響が出るのでしょうか(写真:Ryuji/PIXTA)
岸田文雄首相は1月23日、通常国会で行われた施政方針演説で「この春に新型コロナを『新型インフルエンザ等』から外し、5類感染症とする方向で議論を進めます」と述べた。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)上の位置づけを、「2類相当」から季節性インフルエンザが属する「5類」に引き下げる。
今後、国内の治療はどう変わるのか、5類になれば医療逼迫は改善するのか、マスクはもうしなくていいのか……? 感染症の専門医として新型コロナと闘う最前線の医療現場を取り仕切ってきた埼玉医科大学総合医療センター教授の岡秀昭氏に、私たちは新型コロナとどのように向き合っていけばいいか聞いた。
【漫画】家族全員「コロナに感染」自宅療養2週間のリアル
──岸田首相も述べていた「5類感染症」への変更、岡さんはどう思いますか。
岡:まず誤解してほしくないのは、現在、新型コロナの死亡率は減っていますが、それはオミクロン株の病原性が下がったからだけではない、ということです。肺炎を起こす確率が高かったデルタ株に比べれば重症化のリスクは下がっていますが、実は病原性はそれほど変わっていません。
それにもかかわらず、死亡率が減っているのはなぜかというと、ワクチンです。さらに治療薬の登場や、皆さんの感染予防意識という複合要因によって、ようやくここまで死亡率を下げることができました。
5類の議論が出てきたからといって、新型コロナは大した病気ではないといった誤った解釈や、5類になったから病原性が低くなったなどと誤解しないことが大切です。
──新型コロナは季節性インフルエンザと同等、あるいはそれ以下だと言う人もいます。
岡:死亡率は同等かもしれませんが、新型コロナは感染力が非常に強いので、決してインフルエンザと同等ではありません。実際、死亡率は低いにもかかわらず、全体として死亡者が増えているのは、感染者が増えたためです。どうしても体力が落ちているお年寄りを中心として、コロナによって持病が悪化して亡くなってしまっています。
■5類で隔離が不要になるわけではない
──そもそも感染症法上の5類とはどんな分類ですか。
岡:感染症法上の分類は、感染力や、罹患した場合の重篤性、頻度などを総合的に評価して決められている公衆衛生上の分類です。一方、私たちは分類ではなく、その病原体の特性により対策を行います。5類になったからといって、新型コロナの患者さんは病院で隔離しなくてよくなるということはありません。これまでと変わらず飛沫感染対策をしますし、マスクも付けてもらいます。
感染症法は公衆衛生上の分類であり、感染対策はウイルスの性質によって決まるので、「5類になったらマスクをしなくていい」という話をしている政治家やメディアの方たちは一部で誤解したり、国民に誤解を促す情報を流してしまったりしていると思います。
──5類にすれば、どの医療機関でも対応でき、医療逼迫が改善されるという声も聞かれます。
岡:2類相当では、入院患者の受け入れは感染症指定医療機関に原則限られているのですが、実は現状はかなり緩和しており、指定医療機関以外でもすでに感染者を受け入れています。もちろん、その縛りがない5類にすれば、建前上はどこでも対応可能となっています。しかし、私はそれに懐疑的です。
5類には季節性インフルエンザのほかに、HIV感染症・エイズ (後天性免疫不全症候群)、破傷風、急性脳炎などが属しますが、これらの感染症が今までどの医療機関でも診られていたでしょうか。専門医がいないなどの理由で診療されないことがあった現実からすると、新型コロナも同様に受け入れを拒む医療機関は多いと思います。
そもそも、感染症法は「緊急その他やむを得ない理由があるときは知事が適当と認める医療機関に入院させることができる」としており、実際、今は指定医療機関以外の病院でも新型コロナの患者を診療しているのは前述の通りです。
一方で、専門医の不足やクラスター発生の恐れから新型コロナ患者を受け入れない医療機関も多く、二分化しています。5類になったら新型コロナの特性が変わるというわけではないですから、これまで対応してこなかった医療機関が診療を速やかに行うようになるとは考えられません。
■5類で患者側に生じることとは
──どんな弊害が予想されますか。
岡:まず患者さん側から見た場合ですが、5類になると行政による病床確保や入院調整がなくなるため、自分で受診先を見つけなければならなくなり、今まで以上に受診の際には混乱が生じる可能性があります。
また、治療費が公費から1割~3割負担になるため、感染者が検査や治療を控えて受診が遅れ、重症化につながる恐れもあります。現在、無料で行われているワクチン接種も、有料になれば接種率が低下するでしょう。
感染者の自宅待機期間がなくなるという話も出ていますよね。これまでは医師として、感染したら周囲にうつさないためにも「7~10日間休みましょう」と言ってきましたが、これからは強制力がなくなりますから、翌日出歩いてもとがめられません。だから、隠れた感染者が増えて感染する機会が増えてしまうでしょう。自分は感染したくないという人は、自分で自分を守るしかありません。
そして病院側から見た場合、これまで新型コロナ病床を確保していた医療機関には政府からの補助金が給付されていましたが、5類になることで給付が打ち切りになれば、民間病院を中心にほかの病気を診るために病床を埋めてしまい、積極的に新型コロナの診療を行う医療機関は減るでしょう。もともと病院の黒字経営には、100%近い病床稼働が要求されているのです。
──弊害を防ぐにはどうしたらいいですか。
岡:岸田首相も「段階的な移行を検討する」と言っていますが、“ワクチンを打ち、罹患したときは速やかに病院で診療を受けられ、いざというときは入院治療が受けられる”という体制を保つためには、医療費、ワクチン接種の補助や空床確保費を一気にやめるのではなく、できるだけソフトランディングさせることが重要です。
また、患者を受け入れられないという内科や小児科などに対しては、発熱をしっかり診る医療機関は診療報酬が有利になるようにしたり、感染対策をサポートしたりしたうえで、発熱患者に対応するよう政府から求めてほしい。
無症状でも感染力があるコロナでは、積極的に受け入れれば受け入れるほど、院内感染をゼロにすることは困難です。感染対策を取っていながら院内感染が起きてしまった場合、医療機関に責任を問うことはしないと政府が明言することも必要です。そうすれば少しずつ受け入れる医療機関が増えて、混乱や被害を少なくすることができると思います。
──それでも5類にするメリットは何でしょう。
岡:“気分”ですね。開放感。長いコロナ禍が終わった、と。でも、その開放感や安心感が過剰にとらえられてしまうと、とても危険です。感染しても会社に行っていいんだ、学校に行っていいんだ、マスクもしなくていいんだ、となれば、コロナはあっという間に広がります。
■5類になっても気をつけることとは
──我々国民が気をつけることは?
岡:まずはワクチンを打ってください。とくにオミクロン対応のワクチン1回を含めて最低3回は打ってほしいです。そうすれば、確実に重症化リスクが下がり、重症者が増えないので医療逼迫も防げます。
今、重症化して入院する人を見ると、その半数は未接種か接種3回未満です。シンガポールは新型コロナ感染者の治療費を公費負担していますが、2021年12月からはワクチン未接種者が新型コロナに感染して治療を受けた場合、自己負担としています。そのくらいワクチンは重症化を防ぐ効果があります。シンガポールほど強い措置は難しいかもしれませんが、アレルギーなどのために接種できない人以外には、接種率を上げる取り組みが大切です。
マスクは、今までのようにどこでもずっと付けている必要はないですが、感染状況によっては人混みの中や、家庭内でも感染症状がある人がいる中では付けたほうがいいでしょう。
5類になるということは自己責任になるということですから、政府が「マスクを付けなくてもいい」と言っても、どういうときにマスクを付けるべきなのか、自分で考えられるようにならなければいけません。
5類になっても、今後、新型コロナの感染者は増えたり減ったりを繰り返すでしょう。新たな変異株が出現する可能性もあります。これまで以上に個々人の感染対策が求められます。
埼玉医科大学総合医療センター 岡秀昭教授
2000年日本大学医学部卒。日本大学第一内科(現血液膠原病内科)にて初期研修し感染症診断治療の重要性を認識する。横浜市立大学院で博士号取得後、神戸大学病院感染症内科、東京高輪病院感染症内科部長などを経て2017年埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科に着任、2020年7月より現職。9月より病院長補佐として感染症診療の指揮をとる。感染症患者を現場で診察する臨床感染症の第一人者。著書「感染症プラチナマニュアル」、「感染予防、そしてコントロールのマニュアル」(メディカル・サイエンス・インターナショナル)ほか多数。
井上 志津 :ライター
東北大学大学院(物理学・医学)本堂毅准教授:「布マスクを着けると感染が56%減る。高性能マスクをすると83%感染が減るということです」

物理学や医学を専門とする東北大学大学院の本堂毅准教授。オンラインで行った会見の中で、「新型コロナは、世界的に見てエアロゾル感染、いわゆる空気感染が主な感染経路だ」と指摘。アルコール消毒などよりも、室内の換気が感染を防ぐのに最も効果的だと説明しました。その上で、換気が十分ではない室内でマスクを外せば、空気感染のリスクが非常に高まるなどと政府のルール見直しに否定的な見方を示しました。

東北大学大学院(物理学・医学)本堂毅准教授:「ウイルスの性質が変わらない限りは、感染は非常に高まる。制御不能に陥る可能性が十分にあると思います。(室内でのマスク着用は)現状を見ると、そうせざるを得ないのではないかと思う」

一方で本堂准教授は、屋外でのマスクについては、会話をしない場合などは、基本的に着用の必要はないとの考えを示しています。
「そんなことをするために医者になったわけじゃない」ピークの終わりが見えない救急医療。現場から見える風景とは
新型コロナの第8波はピークをうちましたが、救急ではまだ逼迫した状態が続いています。 救急車要請が新型コロナ流行前の2倍近くになり、受け入れ率が60%まで落ちる中、溢れる患者を外来に宿泊させ踏ん張っている千葉県の救急医療の医師に現状を聞きました。
Naoko Iwanaga
by Naoko Iwanaga
岩永直子 BuzzFeed Medical Editor, Japan
新型コロナウイルスの第8波はようやくピークを過ぎたようだが、救急医療の逼迫は続いている。
救急搬送困難事例(※)も増えており、本来な助けられる命も助からなくなっている状況だ。
そんな中、救急医療の現場ではどんな風景が見えているのだろうか?
BuzzFeed Japan Medicalは、東京ベイ・浦安市川医療センターの舩越拓・救急集中治療科部長に話を聞いた。
Naoko Iwanaga / BuzzFeed
「ピークアウトした実感は救急ではない」と話す舩越拓さん
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※インタビューは1月23日に行い、その時点の情報に基づいている。
※救急車が現場到着後、医療機関への照会を4回以上行なっても、救急搬送先が30分以上見つからないケース
受け入れ率が95%から60%に
——第8波はピークアウトしたとはいえ、救急は忙しそうですね。
ピークアウトしたのですかね...。したと言われていますが、救急は厳しい状況が続いています。
第115回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料3-5
全国の救急搬送困難事例は1月22日時点ではピークを超えたようだ
——どんな状況ですか?
うちは救急車が年間1万1000台来るので、月間約1000台、1日平均で35台ぐらい。休日になると45〜50台ぐらいです。
8波は年末年始の前、12月半ばぐらいからかなり大変になってきました。まだピークを抜けた実感はありません。
救急車を受ける件数が増えたわけではありません。コロナ前は応需率(救急車の受け入れ率)が95%でした。つまり救急受け入れ依頼の95%は受けられていたのです。
しかし、コロナ禍になってから台数はそれほど変わらないか、もしくは多い状況で、応需率は60%ぐらいになっています。
1100件受け入れ要請があって1000台受けている状況と、2000件要請があって1000台受けている状況では、同じ1000台でも全く違うのです。
断っても他で受け入れてもらえるわけではない。応需率60%は異常な状況です。
——この病院ではどの範囲の患者を受け入れているのですか?
東葛南部医療圏に属していて、千葉県の市川市、浦安市、船橋市、習志野市、八千代市、東京都の江戸川区が範囲です。主に診ているのは市川、浦安、江戸川区の患者ですが、東京の患者はほとんど受け入れられない状況が続いています。
「コロナ疑い」を受け入れない病院も 満床でも受けて交通整理
——今はどんな患者さんが多いのですか?
やはり発熱した高齢者が多く、行き場を失っています。それと並行して、冬なので脳血管障害や心筋梗塞、心不全の患者も多い。そもそも冬は一般救急の繁忙期なのですが、それに発熱が上乗せされて大変になっています。
Naoko Iwanaga / BuzzFeed
救急科の待ち時間は180分と掲げられていた
——発熱は基本、コロナなのですか?
コロナはもちろん多いですし、一般救急の発熱、胆管炎なども普通にあります。救急車で運ばれてくる時点ではコロナかどうかはわからないので、「コロナ疑い」となると受け入れに及び腰になる施設はあります。
うちもコロナ病棟の空き具合によって受け入れられるかどうかが変わってきます。それでもなるべく受け入れた上で、コロナでないことがわかったら、他の病院に転送をしています。
コロナでなく、胆管炎などならば受け入れるという施設もありますし、逆にコロナだったら今は行政の入院調整が動いてくれます。
満床でもまずは受けて交通整理をすることも、大きな救急部門のあるうちのような病院が担うべき役割になっています。
救急外来に泊める裏技 入院料は取れず
——どこからも断られて、ここしかないと懇願されるようなことはありますか?
ありますね。コロナとは関係ないですが、先日は呼吸困難だった不法滞在の外国人が80件断られたそうで、うちで受けました。保険もなく支払えないから、どこも受け入れないのです。行政も補填してくれるわけではありません。
こんな特殊な例でなくとも、今、高齢者の発熱はどこも受け入れに消極的です。うちも連日満床なのですが、何をしているかといえば、救急外来に泊まってもらって凌いでいるのです。
Naoko Iwanaga / BuzzFeed
救急外来に設けられたベッド。宿泊しても入院費は取れない
——外来にベッドがあるわけですか?
そうです。そこでいったん泊まってもらって、翌日の日中、うちのベッドが空くかもしれませんし、平日の日中なら夜の救急や休日は対応していない病院も転院搬送を受け入れてくれることがあります。
だから夜はいったん外来に泊めて、翌朝行き先を考える方法をとるのです。ただ、行き先が決まらなくて外来に2泊した患者もいます。
——それは入院という扱いになるのですか?
ならないです。あくまで外来で1日過ごしたというだけです。先日も30時間うちの外来にいた患者がいましたが、入院料は取れません。
——コロナ禍の8波だからそんなイレギュラーな対応をしているのですか?
そうです。コロナ前はそこまで頑張らなくても、救急医療はなんとか回っていました。コロナ禍、特に第7波や第8波になってからは、そこまでやらないとどこにも行き場のない人が溢れてしまいます。
留め置く場所をどこにするかという問題なのですが、アメリカも救急外来にずっといることが当たり前だそうです。日本は「救急車内で8時間待機」など、救急車にしわ寄せが来ています。
小さな救急外来では患者を1泊させることは考えられないでしょう。お金にもなりません。だから自宅待機や救急車内待機になっています。
でもそれはリスクがあります。医者の近くや病院内にいた方が安全です。
——外来に泊まっている間、入院料は取れなくても放置するわけではなく、医師も診なければならないし、看護師さんも看護をしなければならないわけですよね。職員の負担は増えるのでは?
Naoko Iwanaga / BuzzFeed
夕方の勤務交代の時間に申し送りをする医師たち
大きな負荷がかかっています。看護師さんは排泄の手伝いをしなければなりませんし、点滴は交換しなければなりません。ご飯も出しているし、ナースコールも持たせています。実質入院と同じなのです。お金にならない入院です。
——千葉県など行政にどうにかしてほしいですね。
どうにもならないのですよね。入院費用を取るには病室などの基準を満たなさければならず、それは難しいようです。病院の経営側は理解はしてくれていますが、急に救急外来のスタッフを多くするのは難しい。
救急外来には重症用のベッドが3床、中等症用のベッドが6床あるのですが、一晩過ごすのは半分までとしています。スタッフの負荷を考えてのことです。
マスク外して「感染しても医療が受け止めてくれる」は酷な要求
——2類相当から5類へ、マスクの屋内着用の廃止など、感染対策の緩和についてはどう見ていますか?
確かに死亡率や重症化の割合は、デルタの時よりオミクロンでは明らかに少なくなっています。治療薬や感染対策も進歩しました。
しかしこれから定期的に来るであろう波に対して耐えられるぐらい救急医療の予備力がこの3年間で上がっているのかといえば、そうではありません。
医療は経営の観点からは、ほぼ満床で回してやっと利益が出るシステムです。余裕を持って利益が出るビジネスではありません。
それが解決されていない中で、時々来る大きな波に対して「現場で頑張ってください」と言われても、厳しいものがあります。
「マスク外しましょう」「みんな感染しても医療が受け止めてくれるでしょう」と言われると、酷な要求だなと思います。
Naoko Iwanaga / BuzzFeed
救急科の医師たち。 救急救命士が救急車からの電話を取り、情報をまとめて受け入れるかどうかを判断している
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——もしこのまま感染対策を全面緩和して、常時コロナが社会で流行する「エンデミック」の状態になると、高い感染率のまま、救急も慢性的に逼迫すると理論疫学者の西浦博先生は指摘しています。ひと足先に全面緩和したイギリスでは、救急の逼迫が慢性化して、スタッフが立ち去っていく問題も起きているようです。
この状態がずっと続けば、救急医療は立ち去る人が増えるリスクはあるでしょうね。看護師さんも使命感をもって働いてくれていますが、やはり今は負荷が大き過ぎます。
これまでは医療従事者に対する補助金も出ていて、コロナ対応している病棟の看護師にはインセンティブが付いたりしていました。
対策緩和でそれがなくなっていけば、インセンティブも減るでしょうし、わざわざつらく、リスクのある職場で働こうという気持ちは少なくなると思います。使命感だけではどうにもなりません。
医師もつらい時期がずっと続けば、モチベーションは下がってしまいます。本来、救急医は「なんでも診ますから誰でも来てください」という心構えでやっているのですが、「社会的に搬送困難な発熱の人」の調整ばかりになっていくと、やりがいを失っていくと思います。
もしコロナが5類になって県が入院調整をやめたら、医師同士、病院同士で連絡を取り合うことになるでしょう。そこに時間が取られて本来の診療ができなくなることも考えられます。
救える命が救えない 医師にとっての心の負担
——普段の状況なら救えたのに、コロナ禍で救急が逼迫していて手遅れになった患者さんを経験したことはありますか?
それはよくあります。救急の特徴として、時間との勝負の病気を診ることがあります。敗血症だったり、心筋梗塞だったり、脳梗塞だったり、外傷もそうです。
時間が経つと、命は救えたとしても、麻痺が強く残ってしまったり、有効な治療が受けられなかったりということがあります。場合によっては命を落としてしまうこともあります。
いつもは10分、15分で搬送できていたのが、50分、60分かかってしまう。または搬送先を決めるだけでも1時間かかってしまう。
もっと早く治療できていればもっと軽い後遺症で済んだかもしれないわけですが、それは見えない被害です。見えにくい形で患者さんに皺寄せが来ているのは間違いないです。
Naoko Iwanaga / BuzzFeed
救急外来の医師たちと語る舩越さん
——8波で印象的な出来事はありましたか?
例えば、千葉市から心室細動の40代か50代の男性が運ばれてきたのですが、病院に着いた時には心肺停止で死亡確認だけすることになりました。こういう人は本来、千葉市から運ぶような人ではありません。
そういう人でも市外の施設に受け入れ要請をしなければいけない状況が異常なのです。すぐに治療を受ければ救えるし、元気になる可能性も高い。時間勝負であることは救急医だったら誰でもわかることです。
それでも遠くの施設に要請せざるを得ない状況に追い込まれて、搬送時間も長くなり、亡くなってしまう。
脳梗塞でもそんな事例は枚挙にいとまがないです。そういう時間が左右する病気の治療成績は確実に悪くなっていると思います。
——それは救急医としてのやりがいにも影響しますか?
二通りあると思います。「このような患者が救えないなら、この状況をなんとかしなければ」とカンフル剤のように働くのか、「もうこれは絶望的だ」と悪い方向に働くのか。
間違いないのは、思ったように標準的な救急医療が提供できない状況は救急医にとってストレスだということです。
普段なら救えていたはずの人が亡くなってしまう現実は、医療者にとって非常に大きな心の負担になるのは間違いない。そんなことを目の当たりにしてしょうがないとはなかなか言えませんし、そんなことをするために医者になったわけではないのです。
コロナで犠牲になるのは健康格差の弱者
——救える人が救える医療体制があることは私たちみんなにとって良いことですが、今後の政策転換によっては、医療がますます逼迫することも考えられます。
マクロな視点で見れば、医療を守るために経済を停滞させて、失業者が増えて、自殺が増えると言った影響がでれば医療逼迫よりもインパクトが大きいという議論も理解できます。
それなら救急で目の前の人が一人亡くなったとしても、全面緩和の方が費用対効果としてはいいという考え方もあるのかもしれません。
そこのバランスを取るのが政治家です。当然、天秤にかけて考えていると思いますから、決まった方針に対してはガタガタ言いたくはない。
でも医療面から言えば、大切な人が亡くなることは個人にとって非常に大きな衝撃です。それを減らしたいという願いが根底にあるので、医療側に負担を増やすことで、そういう悲しみがもっと増えるのではないかという懸念は大きいです。
また、対策緩和では経済的な問題のことがよく言われますが、コロナ禍で犠牲になっているのは健康格差、経済格差の弱者です。高齢者や経済的弱者は持病をたくさん持っていますし、コロナの感染拡大で一番しわ寄せが来ているのはそういう人たちです。
そういう人たちは、「経済を動かそう」というマジョリティとは違います。その人たちは亡くなっていいのか。そこをどう考えるのかは倫理的な問題だと思います。
Naoko Iwanaga / BuzzFeed
インタビュー中も問い合わせの電話がかかる
——コロナで症状が悪化するのはやはり持病がたくさんある人なのですね。
そうです。それと高齢者、ワクチンをうっていない人です。ワクチン、受けない人は受けないですが、うっていない人の方が確実に重症化しています。
ワクチン、マスクで身を守って
——この状況で、一般の人に救急医の立場から伝えたいことはありますか?
一番呼びかけたいのはワクチンをぜひうってください、ということです。
流行って、かかる可能性が高くなっていく中で、普通、防御はするものだと思います。戦争に行くのに、裸では行かないのと同じです。
できる最大の防御はワクチンです。
それからもし「マスクを取ってもいいよ」と言われたら、逆にマスクをすることのデメリットは何なのかを考えてほしい。密閉した空間で、不特定多数の人が密集していれば感染のリスクは高まるわけですが、そこでしない理由は何か。
「マスクをつけなくてもいいよ」と言われても、そんな場所ならつけていればいいと思うのです。食事の時はさすがにつけられないと思いますが、狭い空間で長い会議をする時はマスクをつけたらいい。
「取りましょう」と言われたとしても、リスクのある場所なら、みんなで取り始める必要はないと思います。
「やらなくてもよい」は、「やってはいけない」とは違います。そうした判断がより個人の裁量に委ねられていくわけですが、できる自己防衛はした方がいいと思います。
飲み会するな、外出するなとは言いません。何が感染のリスクで、何がそのリスクを下げるのか、3年間でわかってきました。その代表がワクチン接種であり、3密を避けることであり、マスクだと思います。
その情報を個人でうまく活かし、自分自身や自分の大事な家族を守ってほしいです。
——それがひいては救急や医療を守ることにもつながるわけですね。
そうです。我々の負担を軽くしてくれますし、そうすれば、いつ自分に起きるかもしれない不慮の怪我や急病の時にちゃんと医療が受けられる状態を維持できます。
地域の感染者数が低いレベルであればあるに越したことはないですが、波が高くなれば、地域の医療のキャパシティには限界があります。コロナはゼロにはならないでしょう。でも、波の高さは低くできるはずです。
それは患者さんが出てから対応する僕らが病院内で何をしてもダメで、一般の人が自分を守る対策を取ることが必要不可欠です。
日本は常に医療にアクセスできて、安価な水のようなものでした。それが日本の誇るべきシステムとしてあり、常に当たり前にあるものだと思われています。でも大事にしなければこのシステムはもちません。
「欧米ではマスクしてません」と言って取るのはいいですが、思ったように病院にかかれないし、かかかろうとしても膨大な待ち時間が発生する欧米の医療と同じ状況になっていいのですか?と問いたいです。
美味しいとこどりは難しい。大事にしないと医療は保ちません。皆さんと手を携えていきたいと思います。
【舩越拓(ふなこし・ひらく)】東京ベイ・浦安市川医療センター救急集中治療科(救急外来部門)部長、放射線科(IVR部門)部長
2005年、千葉大学医学部卒業。千葉大学総合診療部、国保旭中央病院を経て、2012年3月から東京ベイ浦安市川医療センター救急科。2017年、東京ベイ・浦安市川医療センター救急集中治療科(救急外来部門)部長、放射線科(IVR部門)部長に就任した。
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