
2006年5月12日、原爆症集団認定訴訟最初の判決だった、大阪地裁での原告9人全員勝訴を伝える翌日の朝日新聞。
わたくし、原告弁護団席で、原告お一人お一人が裁判長から名前を読み上げられて次々に勝っていくのを目の当たりにして、まさに前が見えない滂沱の涙!
これがその時の旗出しです。
その後も連戦連勝!
ここまで近畿原爆症認定訴訟!
全国でも勝ちまくり!
全国各地で勝訴の嵐!
厚生労働省は2015年7月1日、被爆者健康手帳を持っている全国の被爆者は2014年度末で18万3519人となり、平均年齢は2013年度末時点に比べ0・69歳高い80・13歳だったと明らかにしました。
被爆者の平均年齢が80歳を上回ったのは、旧原爆医療法が施行されて手帳の交付が始まった1957年度以降初めて。
私が近畿原爆症認定訴訟弁護団事務局長として大阪地裁に提訴した10年以上前は、確か、原爆手帳を持っておられる被爆者の方が27万人、平均年齢は71歳だったと記憶しているので、被爆者の方の高齢化が本当に進んだのだなとあらためて感じます。
戦後70年を経て、今は年9000人以上の被爆者の方が亡くなっているそうで、被爆者の高齢化が一層進んでいる状況があらためて確認されたといえます。
ところで、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)など被爆者団体などは、医療特別手当の支給要件を定めているこの原爆症認定制度の抜本的見直しを求めており、厚労省の担当者は
「できる限り早く原爆症の認定をするなど、取り組みを進めていきたい」
としているというのですが、いまだに原爆症認定訴訟が全国各地で行われていることをご存知でしょうか。
原爆症訴訟は2015年1月現在、全国6地裁、2高裁で約100人が係争中です。
下から、被爆者健康手帳を持っている方が18、4万人で医療費が無料に。そのうち一定の疾病にかかった方が15.5万人で健康管理手当が出る。さらに原爆症と認定されると医療特別手当が支給されるのだが、その人数は9000人を切っており、手帳を持っている被爆者の4・7%に過ぎない。
さらに、被爆者であることを生涯隠すため、被爆者手帳を申請しない方々も多数いらっしゃり、また被爆者であることを証明できない方々もいらっしゃることを銘記しなければならない。
6月30日には、長崎地裁で78歳の男性が厚労省に認定申請を却下された胃粘膜下腫瘍について、放射能が原因で(起因性)、医療が必要である(要医療性)という2つの要件が満たされているとして、原爆症認定却下処分が取り消されたばかりです。
5月20日には白内障の被爆者女性2人についても同様の認定却下取り消し判決が出ています。
1月30日には大阪地裁で4人の甲状腺機能低下症の被爆者が同様に勝訴しました。
このように、原爆症認定訴訟とは、放射線被曝のために病気になった被爆者が厚労省に原爆症の認定をするように申請し、これに対して厚生労働省が下した認定申請却下処分の取り消しを求めて訴える行政訴訟が中心となります。
これに付随して、認定すべき原爆症を認定しなかった国の行為で精神的損害を受けたという国家賠償請求がなされます。
また、原爆症申請からあまりにも認定までが長いので、これに対する認定促進を求める訴訟が大阪地裁などで提訴されています。
ところで、この原爆症認定訴訟では、行政訴訟では極めて珍しいことなのですが、上の写真のように国・厚労省が圧倒的に負けているのをご存知だったでしょうか。
2009年には、あまりの負けっぷりに当時の麻生内閣が被団協らと原爆症認定の基準・運用を改善するという合意書を交わし、同年6月22日に、原爆症認定基準が「緩和」されました。
原爆症認定集団訴訟の集結に関する確認書に署名し交換する、左から田中煕巳(てるみ)日本被団協事務局長、坪井直代表委員、麻生太郎内閣総理大臣。
しかし、原爆症認定問題はこれでは終わらなかった。
ところがこの新基準も不当に厳しいということでさらに厚労省の負けが込み、2013年には12月16日には、原爆症認定基準が再々改訂されました。
それが下の画像です。
ところがその基準でもまだ厳しすぎるということで、被爆者らが勝訴しています。1月30日に勝訴した大阪地裁の4人の被爆者の方々は、すべて2013年の新々基準で認定申請を却下された方々です。
原爆症訴訟 近畿弁護団通信 国の「新しい審査方針」も真っ向否定、4人が勝訴! しかし事実認定で3人が敗訴、新たな闘いへ!
どうして厚労省が負け続けるかというと、
厚労省は内部被曝の影響を認めていない!
からなんです。
上のグラフを見てください。
放射線被曝を原因とする起因性の立証がいらない「積極認定」というのが入ったのが新基準、新々基準の改善点なのですが、真ん中の心筋梗塞・甲状腺機能低下症・慢性肝炎肝硬変なんて、
1 被ばく地点が爆心地より2キロ以内
か
2 原爆投下より翌日までに爆心地から1キロ以内に入市
しないと、起因性が認められないんですよ!
そんなに近くにおったら、死んでまうわ!
まさに外部被ばくしか認めないからこのありさま。この距離の部分に関しては、新々基準の方が新基準よりかえって悪くなってるんです!!
だから、大阪地裁ではそれより遠いところにいた被爆者でも、甲状腺機能低下症が原爆症だと判決で認められたわけです。
そもそも、大阪地裁などの判決では、心筋梗塞などは放射線被曝の閾値(しきい値)がない、つまり、どんなに少量の被ばくでも発症する可能性があると認定されているのです。
それなのに、近距離被ばくじゃないと放射線のせいで発症したと認めないなんて、ナンセンスでしょう?厚労省が司法の判断に従う気が全くないのがわかります。
原爆症訴訟 近畿弁護団通信 原爆症認定基準の「改悪」は許されない!!
![]() |
全員勝ったで!―原爆症近畿訴訟の全面勝訴を全国に (かもがわブックレット (160)) |
原爆症認定近畿訴訟弁護団 (著), 安斎 育郎 (監修) | |
かもがわ出版 |
このブックレット、私が編集長でした!
「全員を原爆症と認定すべき」という原爆症認定近畿訴訟判決までの道のりをたどり、同判決の画期的な意義を明らかにするとともに、全国の集団訴訟の全面勝訴への展望を示す。
![]() |
にんげんをかえせ―原爆症裁判傍聴日誌 |
長谷川 千秋 (著), 京都原爆訴訟支援ネット (編集) | |
かもがわ出版 |
近畿訴訟の6年半、全ての裁判を傍聴。首相との確認書、原爆症基金法を実現した力とは何か、核兵器廃絶へと動き出した時代に何をすべきかを伝える。
そもそも、今の原爆症認定制度は、被爆者の側が、自分の病気が原爆の放射線被曝によるものだということと(起因性)、医療の必要があるということ(要医療性)を立証しなければならないのですが、特に起因性の立証を被爆者に求めるこの制度は、ほとんど被爆者に不可能を強いるものです。
ですから、被団協はよほど確実な方にしか原爆症認定申請を勧めない、それでも半数以上の方が却下されてしまうのが現状です。
そもそもあるべき制度は厚労省による「認定」制度と言うよりも、裁判所が放射線被曝で発症しうると認定したすべての病気については、原爆症と認定するのを原則とし、厚労省がたとえば
「あなたはたばこの吸い過ぎで肺がんになったのです」「お酒の飲み過ぎで肝硬変になったのです」
と立証できない限り、原爆症としなければならないという制度にするのが本当です。
つまり、立証責任は国・厚労省に負わせるべきなのです。被爆者が厚労省の設定した狭き門をくぐるべく七転八倒しなければいけないという今の原爆症認定、いや原爆症却下制度がおかしいのです。
それが、戦争を開始し、かつ、いつまでもずるずると続け、とうとう原爆投下まで降伏しなかった国の取るべき責任の姿でもあります。
このように、他の多くの医療・福祉制度と違って、被爆者援護政策は国の戦後補償の性格を持っています。
また、やはり他の多くの制度と違って、哀しいことですが原爆症認定制度では受給者はどんどん減ることが確実で、原爆症認定の門戸を広げても、国の財政に対する負担は減り続けるという特殊性があります。
このまま、原爆で地獄の苦しみを味わった被爆者をみすみす死なせていいわけがありません。
また、原爆症認定以前に、国はまず自らの過ちを認め、被爆者を含む全戦災者に謝罪し、国家補償をすべきです。
原爆投下から70年の節目に、国の決断が求められています。
![]() |
原爆症認定集団訴訟たたかいの記録 |
原爆症認定集団訴訟刊行委員会 (編集) | |
日本評論社 |
広島、長崎に投下された原爆被害の補償から排除さた多くの被害者。集団訴訟の提訴から原爆症認定を勝ち取るまでの過程を克明に記録。
![]() |
原爆症認定訴訟が明らかにしたこと―被爆者とともに何を勝ち取ったか |
東京原爆症認定集団訴訟を記録する会 (編集) | |
あけび書房 |
ブックレビューより。
国がこれを原爆症と認めたがらないのを、本書の当事者達は米の核の傘に守られているから、加えて国策として原発を推進しているために原爆被害を小さく見せたいからだとしています。
本記事は私の個人的意見であり、原爆症弁護団・訴訟団とは無関係なものとして受け取ってください。
思いは一つだと思いますが!
よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!
厚労省が絶対認めようとしない内部被曝について。
![]() |
被爆者の思いを胸に―原爆症認定集団訴訟をともに闘った医師たちの勝利の軌跡 |
全日本民主医療機関連合会 (著, 編集), 民医連= (編集) | |
かもがわ出版 |
「内部被ばくは影響しない」「爆心地から遠いから大丈夫」という政府の認定基準により原爆症と認められなかった被爆者が起こした訴訟。本書は勝利を導いた医師たちの闘いの意義を明らかにする。福島につながる貴重な記録である。
![]() |
裁かれた内部被曝―熊本原爆症認定訴訟の記録 |
牟田 喜雄 (監修), 熊本県原爆被害者団体協議会原爆症認定訴訟熊本弁護団 (編集) | |
花伝社 |
内部被曝の健康影響を明らかにし勝利した熊本原爆症認定訴訟。福島原発事故による内部被曝の危険性を問う。
![]() |
被爆者はなぜ原爆症認定を求めるのか (岩波ブックレット) |
伊藤 直子 (著), 中川 重徳 (著), 田部 知江子 (著) | |
岩波書店 |
近年の研究によって,放射線は,がんに加え,心筋梗塞や脳卒中等の発症を促進することが明らかになっています。ところが,被爆者が病気になって自分の病気を「原爆症」と認定するように申請しても,ほとんど却下されてしまいます。
原爆被害を小さくみせる国の政策によって,残留放射線や内部被曝等,放射線による被害が否定され隠されてきたのです。
長崎新聞 2015年7月2日更新
厚生労働省は1日、2014年度末現在の全国の被爆者健康手帳所持者(被爆者)に関する統計データを公表した。被爆者数は18万3519人(前年同期比9200人減)で、減少幅は過去最大。平均年齢は80・13歳(同0・69歳上昇)で、初めて80歳を超えた。原爆投下から70年が経過しようとする中、被爆者の減少や高齢化が加速度的に進む現状が浮き彫りになった。
厚労省によると、被爆者数は、旧原爆医療法が施行された1957年度が20万984人。その後、手帳交付申請の増加とともに年々増え続けたが、80年度の37万2264人をピークに減少傾向に転じた。減少幅は07年度から8千人台、12年度からは9千人台と次第に大きくなっており、13年度は19万2719人と初めて20万人を割った。平均年齢は99年度に70歳台に乗り、07年度に75歳を超えた。
全国の男女別人数は、男7万1978人(平均年齢81・25歳)、女11万1541人(同80・38歳)。県内の被爆者は、4万7868人。内訳は、長崎市が3万4199人(平均年齢79・62歳)、同市外は1万3669人(同80・68歳)。
都道府県別で、最も多いのは広島県の8万3367人。一方、福島など9県では100人を下回り、最も少ないのは秋田県の27人。平均年齢は秋田、山形、島根3県で85歳を上回った。
核兵器の惨禍を経験した証言者が姿を消していく現実を踏まえ、被爆体験をどう継承していくのか-。語り部活動に取り組む被爆者でつくる長崎平和推進協会継承部会(末永浩部会長)でも模索が続く。4月の総会時点で会員43人の平均年齢は79・6歳。本年度、後継者育成を見据え、市民ボランティアらとの連携を図る「継承交流班」を新設した。
末永部会長(79)は「会員の高齢化で記憶の薄れなど、語ることがだんだんと難しい状況になってきている。継承の問題を本気で考えないといけない時期にきた」と話す。
高齢化進む被爆者 平均年齢80歳超える

また、被爆者の数は去年初めて20万人を下回りましたが、ことしは18万3519人と、さらに9200人少なくなりました。1年間に亡くなった被爆者の数としては、昭和30年代に統計を取り始めてから最も多くなり、被爆者の高齢化が一層進んでいることを示す結果となりました。厚生労働省は「こうした現状を踏まえ、引き続き、さまざまな援護の取り組みを進めていきたい」としています。
戦後70年になり、被爆者の高齢化が進むなかで、被爆の体験や記憶、それに核兵器の悲惨さを若い世代や世界の人たちにどう伝え続けていくかが、唯一の被爆国である日本にとってますます切実な課題となっています。
胃粘膜下腫瘍も原爆症 認定却下を取り消し
原爆症の認定申請を却下された長崎県内の被爆者3人が却下処分の取り消しを求めた訴訟の判決が30日、長崎地裁であった。松葉佐隆之裁判長は、このうち胃粘膜下腫瘍などを患う男性(78)について「医療が必要な状態にある」として原爆症と認め、却下処分を取り消した。ほかの2人の請求は棄却した。
判決によると、男性は爆心地から約2・8キロの自宅庭で被爆。2008年7月、肺がんと胃粘膜下腫瘍を患ったとして国に原爆症の認定を申請したが、10年4月に却下され、11年12月に提訴した。
松葉佐裁判長は、男性の胃の病状について「悪性腫瘍化する可能性が一定程度存在していた」などと指摘し、医療行為を受ける必要があると結論づけた。肺がんについては治癒しているとした。
広島、長崎に投下された原爆で被爆した7人が原爆症と認めない国に対し、認定申請を却下した処分の取り消しと1人あたり300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、大阪地裁であった。西田隆裕裁判長は4人の却下処分を取り消した。賠償請求は認めなかった。
7人は国が「救済範囲を広げる」として2013年12月に改めた認定基準で退けられた被爆者。この基準で認定されなかった被爆者をめぐり、司法が原爆症と認めたのは4例目になる。
7人は関西在住で、塚本郁男さん(当時82)=昨年死去、妻が訴訟を継承=ら3人は広島市で被爆。川上博夫さん(81)▽柴田幸枝さん(74)▽原野宣弘さん(70)ら4人は長崎市で被爆した。7人は原爆の放射線の影響で甲状腺機能低下症、心筋梗塞(こうそく)などを患ったとして10年12月までに認定申請したが、却下された。13年12月に改定された新基準でも認められず、訴訟では「爆心地から4キロ以内の屋外を歩き回り、放射性物質を含むすすやほこりを大量に吸い込んだ」などと主張していた。
国側は「原告の症状と原爆放射線との因果関係は科学的に認められず、喫煙などが原因になった可能性がある」として請求を棄却するよう求めていた。(阿部峻介)
2015年6月 8日 朝日新聞
広島市で7日、研究者ら約200人が参加した「原子爆弾後障害(こうしょうがい)研究会」が開かれた。広島大と長崎大のグループは、国が原爆症と積極認定する「爆心地から3.5キロ以内」の外にいた女性の肺がん組織から放射線の痕跡を確認したと報告した。
広島大の鎌田七男・名誉教授によると、広島への原爆投下当時、女性宅は爆心地から4.1キロにあり、女性は1998年以降に肺や胃、大腸にがんを患って数年前に亡くなった。投下後の約2週間、出産で自宅から出ずに地元の野菜などを食べていたといい、鎌田名誉教授は「食べ物や大気を通じて放射性物質が体内に取り込まれる内部被曝(ひばく)を証明した」と述べた。
島根大医学部の野宗(のそう)義博教授は、旧ソ連時代に核実験が繰り返されたセミパラチンスク(現・カザフスタン)の周辺住民について発表。カザフスタンのセメイ医科大の調査で、「周辺住民のがんの罹患(りかん)率は他の地域の約2倍」「消化器系のがんや肺がん、乳がんが多いと分かった」とした。野宗教授は核実験による内部被曝の可能性があると指摘し、「今後も健康調査を続けたい」と語った。
2015.1.30 11:44 産経新聞
新たに原爆症4人認定 新基準で救済 大阪地裁
原爆症の認定申請を却下された京都、兵庫両府県の被爆者ら7人が、国に却下処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が30日、大阪地裁であった。西田隆裕裁判長は4人の処分を取り消した。1人当たり300万円の国家賠償請求は棄却した。
原告側弁護団によると、原告らは平成25年12月に認定要件が緩和された新基準でも原爆症と認められなかった。新基準で認定されなかった被爆者を救済する司法判断は4例目という。
原告は、兵庫県加東市の川上博夫さん(81)ら70~81歳の男女6人と、提訴後に亡くなった同県姫路市の塚本郁男さん=当時(82)=の遺族。
0~14歳の時に広島、長崎の爆心地から約1・7~4キロ地点で被爆。放射線の影響で甲状腺機能低下症や狭心症、ケロイドなどを患ったとして19~21年に認定申請したが、いずれも却下された。
原爆症認定の集団訴訟で被爆者側の勝訴が続いたため、国は20年に認定要件を緩和した基準を導入。25年末に疾病の条件を一部緩める基準に見直した。
訴訟は現在、全国6地裁、2高裁で約100人が係争中。
よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!
もう他界された政治家の言葉。
「核兵器ができて、戦争はしてはいけないことになったんです。」
9条が、とか 憲法が、とかいうことではなく、戦争はもう、してはいけないんですよ。
それでも戦争するのは何のため?
ゼニでっか?