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戦争を経験された、90代の女性、お二人のお話を聞く機会があった。
お二人は従姉妹同士で、片方の女性のお兄様が全員戦死されている。
末のお兄様は、学徒出陣し、特攻で亡くなった。
まだ二十歳そこそこの年齢にもかかわらず。
このときのお話は、正式にまとめられるはずで、
著作権の問題などもあろうかと思うので、
どなたかを特定できそうな部分は、できるだけ避け、
今、ここでは、ざっくりと書き留めておきたい。
仮名・有子さん、仮名・明子さん。
有子さんが少し年上ながら、お二人とも90代で、
お耳が少し遠いものの、とても明瞭にお話をなさる。
まずは明子さんのお話から。
戦争中の庶民の暮らしとして、愛犬を喪った悲しみを語った。
明子さんの出征中のお父様は、
犬がいないと生きていけないと言うくらいの犬好きで、
たいそう可愛がっていたそう。
しかし、人間だって食べるもののない時代、
犬に与える食べ物などあるはずもなく・・・
しかも、犬は火が嫌いなので、
これから空襲が予想される中、吠えたり、かみついたりすると
危険視される。
明子さんいわく、法律で殺処分が決まり、
何月何日に犬を取りに行くから出すよう、通達がきて・・・
安楽死させられたそうだ。
お母様は、愛犬を想い出す度に、泣いて謝っていらしたとか。
土家由岐雄 の絵本「かわいそうなぞう」でも知られるが、
動物園でも動物が殺処分をされるなか、
象だけは察知し、必死で芸を続けたという・・・
当時小学生の明子さん。
80年も前を振り返り、声を震わせられた。
「戦争は隅から隅まで辛いことばかりです。」と。
お兄様が皆、戦死された有子さんは、当時女学生。
愛国少女で、戦時色ばかりの暮らしに、
当時は、何の疑問も持たなかったという。
戦争中にお兄様が亡くなったときも、
「ああ、やっぱり死んじゃったのか」と、仕方が無いというか
何やら冷静だったそうだ。
けれども、玉音放送の後、つまり敗戦後、
戦死を知らされた、別のお兄様のときは辛かったと、おっしゃる。
戦争が終わるまで生きていらしたことは確か。
それゆえ、明子さんは、連日、ラジオのニュースで流れる「帰還兵」の
名前を必死で聞いていたのに・・・
ある日、たった一人遺っていた、兄君の戦死を知らされる。
家族の中のどなたも、結果として全員戦死なさった男兄弟のことを
その後、口にすることはなかったそう。
「私も、兄のことを決して言うことはなかったけれど・・・
みんな、それぞれに心の中では思っていたはずです。
(従妹の明子さんは、
「伯父様は人が変わられたと、父が申しておりました。
思い出さないように努めていらしたのだろう、と。」と証言)
そして、努力家で、夢のために志し半ばだった
お姉様の人生も変わってしまったそうだ。
(当時の地方の御家庭ゆえ、男兄弟が皆、戦死したため
お姉様が跡を継ぐことになったのではなかろうか)
「普通の家庭だった我が家はメチャクチャでした」
そうおっしゃった。
実の兄上を亡くされた有子さん、
従兄だけれども親しく行き来していたので
本当のお兄様のように慕っていたという明子さん・・・・
80年の時が流れても、
お二方は、思い出すと涙が出てくると、おっしゃり、
実際に、何度も何度も声を詰まらされた。
最後に、こう結ばれている。
有子さん。
「聞いて下さって、ありがとうございます。
今日、伺って良かったです。
今、キナ臭い話ばかりの世界ですが、
日本も80年前に、こういうことがあったんだと、
心の片隅にでも残っておいて下されば・・・
みんなが戦争はイヤだと思っていても、
変な方向に進んでしまうこともあるんです。
若い皆さん、頑張っていって下さい」
明子さん。
「こんなおばあさんの話を聞いて下さってありがとうございます。
皆さま、どうぞ頑張って下さい。
頼もしく嬉しく感じています」
ちなみに、お二方は、事前の打ち合わせをしたわけではないそうで、
「無防備」のままに、主催者のたっての願いで、いらしたのだとか・・・
それだけに、心打たれ、会場からも洟をすすり上げる音が・・・
わたしも何度も涙がこぼれた。
戦争を知る世代が、どんどん減っていく時代。
一方で、世の中の不安は、どんどん増していく。
いつか、今を振り返り、「戦前」と呼ばれるのではないかとすら思う。
今週から広島サミットが始まる。
各国首脳には、本気で広島を見てもらいたい。
そして、想像力を目一杯働かせ、考えて欲しい。
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おつきあいいただき、どうもありがとうございます。
有子さん、明子さんのお二方のお話をメモ書きしたものを
もとにまとめています。
勘違いや間違いもあるかもしれませんが、素人のこととお許し下さい。
「戦争は隅から隅まで辛い事ばかりです」
この言葉を世界中に伝えたいです。経験した方の一番分かり易い言葉で、胸に沁みいります。
自分なりに、改めて考えたいと思いました。
有り難うございました。 なおとも
どうもありがとうございました。
何の打ち合わせもなく、素直に語ってくださる言葉なだけに
胸に迫ってまいりました。
歴史は素人ですが、サバイバーとして生き長らえている以上、
命の尊さを歴史の中から考えたいと始めたブログです。
どうぞ、またお立ち寄りいただければ嬉しいです。
どうもありがとうございました。
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