詩：「すべてを胸に秘めて」 （ギディ・アバメガル作 『傾いた鳥かご』より）

ひしゃげた檻(おり)のような
ビニールシートの家の前で
孤独におそわれないように
私は遠く果てしない旅をした
すべてを胸に秘めて

私は遠い昔にもどっていった
家族が住む家とふるさと
おばあさんが聞かせてくれた
曾(ひい)おじいさんの話
先祖の屈強な勇士たち
その血が私のなかに流れ
一途(いちず)な心とプライドを受け継いだ
私は遠く果てしない旅をした
すべてを胸に秘めて

私は遠い未来にさまよい出た
夢と希望の奥深くへ
そこにあったものを見つめるため
このどこまでも続く時の流れが
この踵(かかと)のたゆみなき蹴り返しが
いつの日かそこへ導いてくれるかもしれない
私は遠く果てしない旅をした
すべてを胸に秘めて

私は永遠のかなたへも旅をした
この混沌の果て、自分の魂を見るために
私は遠く果てしない旅をした
すべてを胸に秘めて

考えただけで悲しい
あらゆる思考が
金持ちと政治家に支配される日のことを
考えるだけで苦しい
その日から
逃げる場所は失われ
旅路は消え去るだろう
胸に秘めた意思もろとも

警察も、国境も
市民権も、貧困も
政治も、信条も
私のよき旅をはばむことはなかった
私は遠く果てしない旅をした
すべてを胸に秘めて

（日本語訳は『ママ・カクマー自由へのはるかな旅』より）