朝食はコーヒーとトースト。それだけあればいい。
それにベーコンやエッグがあれば言うことなしだ。
食後にはやはりコーヒーを。
香ばしいトーストのバターの余韻に浸りながら、彼はコーヒーを啜った。
ブラインド越に休日の朝日が差し込む部屋の中、液晶画面に映っているのは、とあるクエスト。
期間限定航路、番号は1005。
彼が選んだ、その日最初の仕事。
朝食後のコーヒーをテーブルに、その代わりにコントローラをその手に。
彼はつかの間、ハンターになる。
呆気ない結末だった。
期間限定航路、それもG級クラスのものとなると、この1005航路僅か一本のみ。
しかも討伐対象も3体のみと、非常に簡単なものだった。
そう、簡単過ぎる。
広場に帰還した彼の手には期間限定航路クリアの報酬が握られていた。
危険の香りがする。それもとびきりのトラブルの香りが・・・
手にした菊箱、そして英知の数は30。
これを何に使うか?
今回のパローネ大航祭で作れる菊箱の技巧武器は三種類のみ。
その中で彼の手に馴染む武器は一つだけ。
行く先は決まっていた。
氷の武器を手に、ラージャンのイベントクエストへ向かう。
”出来る女”は嫌いじゃない。
酒場のカウンタ-で気負うでもなく、さらりとグラスを干す、そんな女性とは、翌朝に食する美味しい朝食メニューを出す店の話題で愉しんでみたい。
だか”出来過ぎる女”は鼻に付く。
そんな女とはベッドの隅に別れのキスを置いてさよならだ。
報酬は一度に全種類が出るわけではないらしい。
彼は少し安堵した。報酬はこれくらいでいい。
一度に全部出てもつまらないし、報酬が悪すぎるのもまた困る。
そう、”ほどほど”だ。
この業界で、欲望や絶望の闇に飲み込まれて去っていった者達のことを、彼は覚えている。記憶している。
だから彼はいつも”ほどほど”であろうとした。
ほどほどでいいのだ、と。
それは過去からの贈り物だった。
かつて、まだこの業界が今よりも幾らか健全で、活気があった頃の。
去っていった者達の、かつて共に狩り場を駆け抜けた者達の顔が浮かぶ。
そうか、私も昔は、駆け抜けていた時代があったんだな・・・。
でももう今は、何かを追って、または追われるようにして走るのは止めた。
ゆっくりでいいのだ。
この業界はそれを許さない時代になりつつあるけど、最後に決めるのは自分自身なのだから。
そのハンマーの強化は2種類あった。
親方強化の方はサブA達成報酬で。
HC強化の方はラージャンの頭部破壊アナザー報酬で。
どの道、強化は最後のG級技巧化、菊箱を使った強化に辿り着く。
どう作るか、強化するか、それともしないかは、人それぞれだろう。
その人形は時々、目が動くらしい。
殲!金獅子インパクト。
どこを見ているのか分からない、いや、人形にそもそも”視る”という概念があるのか?
全体的にはデフォルメされてはいるものの、その瞳にだけは闇が宿る。去っていった者達が消えた闇に似た・・・
その闇が液晶画面越しに彼を見つめる。
まだそっちには行かないさ・・・
彼はもうすっかり冷めたコーヒーを啜りながら、液晶画面に向かってそう呟くのであった。
<終>
注:この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
それにベーコンやエッグがあれば言うことなしだ。
食後にはやはりコーヒーを。
香ばしいトーストのバターの余韻に浸りながら、彼はコーヒーを啜った。
ブラインド越に休日の朝日が差し込む部屋の中、液晶画面に映っているのは、とあるクエスト。
期間限定航路、番号は1005。
彼が選んだ、その日最初の仕事。
朝食後のコーヒーをテーブルに、その代わりにコントローラをその手に。
彼はつかの間、ハンターになる。
呆気ない結末だった。
期間限定航路、それもG級クラスのものとなると、この1005航路僅か一本のみ。
しかも討伐対象も3体のみと、非常に簡単なものだった。
そう、簡単過ぎる。
広場に帰還した彼の手には期間限定航路クリアの報酬が握られていた。
危険の香りがする。それもとびきりのトラブルの香りが・・・
手にした菊箱、そして英知の数は30。
これを何に使うか?
今回のパローネ大航祭で作れる菊箱の技巧武器は三種類のみ。
その中で彼の手に馴染む武器は一つだけ。
行く先は決まっていた。
氷の武器を手に、ラージャンのイベントクエストへ向かう。
”出来る女”は嫌いじゃない。
酒場のカウンタ-で気負うでもなく、さらりとグラスを干す、そんな女性とは、翌朝に食する美味しい朝食メニューを出す店の話題で愉しんでみたい。
だか”出来過ぎる女”は鼻に付く。
そんな女とはベッドの隅に別れのキスを置いてさよならだ。
報酬は一度に全種類が出るわけではないらしい。
彼は少し安堵した。報酬はこれくらいでいい。
一度に全部出てもつまらないし、報酬が悪すぎるのもまた困る。
そう、”ほどほど”だ。
この業界で、欲望や絶望の闇に飲み込まれて去っていった者達のことを、彼は覚えている。記憶している。
だから彼はいつも”ほどほど”であろうとした。
ほどほどでいいのだ、と。
それは過去からの贈り物だった。
かつて、まだこの業界が今よりも幾らか健全で、活気があった頃の。
去っていった者達の、かつて共に狩り場を駆け抜けた者達の顔が浮かぶ。
そうか、私も昔は、駆け抜けていた時代があったんだな・・・。
でももう今は、何かを追って、または追われるようにして走るのは止めた。
ゆっくりでいいのだ。
この業界はそれを許さない時代になりつつあるけど、最後に決めるのは自分自身なのだから。
そのハンマーの強化は2種類あった。
親方強化の方はサブA達成報酬で。
HC強化の方はラージャンの頭部破壊アナザー報酬で。
どの道、強化は最後のG級技巧化、菊箱を使った強化に辿り着く。
どう作るか、強化するか、それともしないかは、人それぞれだろう。
その人形は時々、目が動くらしい。
殲!金獅子インパクト。
どこを見ているのか分からない、いや、人形にそもそも”視る”という概念があるのか?
全体的にはデフォルメされてはいるものの、その瞳にだけは闇が宿る。去っていった者達が消えた闇に似た・・・
その闇が液晶画面越しに彼を見つめる。
まだそっちには行かないさ・・・
彼はもうすっかり冷めたコーヒーを啜りながら、液晶画面に向かってそう呟くのであった。
<終>
注:この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。