佇む猫 (2) Dr.ロミと助手のアオの物語

気位の高いロシアンブルー(Dr.ロミ)と、野良出身で粗野な茶白(助手のアオ)の日常。主に擬人化日記。

依存症と3メートルの男(2)

2019年10月07日 | 猫・擬人化日記
「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」
=ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』=

 
 

お客様は太古から「地球」で暮らしており、いわば人類の「もう一つの種」だそうじゃ。
これまで、のり丸は3メートルもある人間なんて見たこともなかったしの。
 
スピリチュアルな世界では「周波数が違う存在」「高次元の存在」というような表現がよく使われておる。
 
「周波数や次元」が違うということは、つまり「認知できない存在で、理解不可能な存在」ということじゃ。
 
それは、そうなのじゃ、ただのぅ…人間は未知のものを探求したいじゃろ?

海の向こうから来る舟はマストの頂点が最初に見える→なぜ?→[地球は丸い]
リンゴが木から落ちた→なぜ?→[万有引力の法則]
なぜ?から発展してきた世界に住んどる人間。
 
つまり、のり丸に見えているものは、のり丸に理解できるものでなければ、のり丸のモヤモヤ感はいつまでも晴れないじゃろう。


例えば、 
3メートルの人間はどういう進化の過程をたどってきたのか?
彼らが「古代から地球にいた」ということを証明するものはどこにあるのか?
なぜ「人類」に見つからずに生息することができたのか?
何をエネルギーにしているのか?
何千年もの長い睡眠はなんの為に必要なのか?
 
…形而下の質問ばかりじゃが、ふつふつと湧いてくる疑問を解明したくなるのは人間として当然のことじゃの。
 
 
「お客様のような…3メートルぐらいの身長の人間を…私の時代では見かけないのはなぜでしょうか?」
つい、のり丸は不毛な質問をした。
「あなた方に見つからないように隠れていたからですよ」
お客様の答えも不毛だった。
 
(どこに?どうやって隠れていたのか?…インナーアースと呼ばれている場所か?)
などと疑問をぶつけても不可知論に陥るだけだと悟り、のり丸は質問を変えた。
 
「現代の人間は、なぜ全員が『依存症』なんでしょうか?つまり私も何かの依存症なのでしょうか?」
 
のり丸には自分は「依存症」ではないという自負があったのじゃ。
自分には普段の生活を脅かすようなアディクション(嗜癖)があるだろうか?
いや、何もない、全く思いつかない…と、のり丸は自分で結論づけておったようじゃ。
 
 
「のり丸さんは『お金を捨てる癖がある』と自覚されていませんか?
言い方を変えますが、過去に商品券で買い物をしたことはありますか?」
お客様はいきなり豪速球を投げてきて、受け止めたのり丸は少しのけぞった。
 
「…商品券で買い物をしたことは…思い出す限り…ありません」
のり丸は、かなりうろたえながら答えた。
「それはなぜでしょうか?」
「商品券を無意識に捨ててしまう癖があるからです」
 
「子供の頃にもらった『おとし玉』も中身が入ったまま袋ごと捨てたことがありましたね?」
「…あったと思います」
 
「最近も、ある人からお礼として商品券をもらいましたね、それはどうされましたか?」
「…おそらく無意識のうちに『燃えるゴミ』に出してしまいました」
(ウチをはじめ、ほとんどの人がドン引きする答えじゃ)
 
のり丸は「商品券」=「お金と同じ価値」ということを(もらった時は)理解しているのだが、気を抜くと商品券と広告紙(紙全般)の区別がつかなくなる(失認症がある)そうじゃが…
(とても人に信じてもらえない話なので、一部の寛容な友人にしか話しとらんそうじゃ)
 
 
 
人間界における「依存症」については以下の図のような感じである。
 

大石クリニックのHPより (図を作るのがめんどくさくなり、お借りしました)
 
 
 
 「確かに私はついうっかり商品券などを捨ててしまうことはあります。
けれども、そのことは依存症とは異なる問題だと思いますが…」
 
 
お客様は話しはじめた。
 
ある日ベーシックインカムが導入されて、例えば毎月12万円が個人の口座に振り込まれるようになったと仮定します。
(仕事がなくなる、給料が下がる、物価が上がる、などの事態は起こらず【生活は今まで通り】とにかく20歳以上の国民が、+12万円貰えると無理やり仮定)
 
それでも、大抵の人には新たな悩みが出てきます。
借金が多すぎて12万支給されたぐらいでは足りないからもっと上げて欲しいとか、誰々は自分よりも12万を有効的に使っているから羨ましい、などです。
 
 
人間は「真理」から目を逸らすことによって、常に悩みを生み出しています。
まるで「真理」の方が、自分の(作りだした)条件に合せるべきだと思っているようです。
真理を求めながら、真理を突きつけられるのを嫌っているのです。
 
悩む人々は、火事(=真実)が起こっている建物の「近所に住んでいる人々」に例えることができます。
 
ある人は言いました。
「我が家が火事になることはないさ。消防車も来ているし、消防隊に任せておけば何も心配することはない」

 またある人はこう言いました。
「わたしは『正しいもの』を信仰をしているから必ず守ってもらえる。信仰していない人の家は燃えるかもしれないけど、わたしの家が燃えることはないわ」
 
こういう人もいました。
「私は動物虐待に対して問題意識を持っている。こうしている間も、虐待されている動物のために一刻も早く戦う準備をしなくてはならない。火事の心配をしている余裕などない」
 
そして、こういう雰囲気の人もいました。
「僕はラグビーの観戦中だ。は?火事?話しかけないでくれよ。…おぉ、行けーッ!…チッ!クソッ!…あ、ああ!よーしいいぞ!」
 
 
近所にいる人達は皆、自分の家が火事になる可能性があることは知っているのです。
しかし火の手がすぐそこまで迫っているのに、誰かが火を消してくれると楽観したり、火事を無視したり、バカ騒ぎしたりしているのです。
 
火事の時は、まずは火の近くから離れなければならないのです。
その場を離れない限り、何をやっても心が落ち着くことはありません。
 
極端な例え方をしましたが、このような逃避方法で人間は「不安に対する対処」をしてきました。
 
毎月あと12万円あれば助かるな、と思っていた人達が実際に12万支給されたとしても、また新たな不安が襲ってくるのはこういうことです。
もちろん12万で満足して幸福感を感じる人たちもいますけどね。
 
 
「わかるような、わからないような…。
つまり人間は分裂した自己を持っているんですね。
右を見ながら左に進んでいるような行動をしているから、常に不安が尽きないということでしょうか?
不安の本当の原因、真理を知ろうとしない故に、何かに依存して不安を紛らわしているということでしょうか?」
 
お客様は微笑しながら聞いていた。
 
「のり丸さんはお金を捨てることで『過去』とのバランスを取ろうとしていますね。
本当は自覚されていますね」
 
私はお金を捨てたりなどしません、
そんなことする理由がどこにあるというのでしょうか、

…のり丸の口調から丁寧語が消えていく…

なんで俺がわざわざ金を捨てるんや、
過去とのバランスってなんや、
金を捨ててバランスをとる必要がある過去なんて覚えとらんわ、

そもそも金を捨てるなんてないわ〜、
ないわ〜、
ないわ~、
(ないわ~、とでかい声で寝言を言って、自分の声で目を覚ます、のり丸)
 
 
 
のり丸の夢はいつもクリアすぎて、夢か現実かわからないぐらいなので、目覚めたらいつも混乱しとるようじゃ。
「そういうタイプの脳は認知症になりやすい」と、のり丸の知り合いの医師が言うとったらしいが…。
その話はいったん脇に置いて、と。
 
……のり丸は金を捨てる癖があるんかの?
のり丸が真理から目を逸らしているうちは「商品券を捨てる原因」が見つからんのかの?
 
商品券って売ることもできるはずじゃな。
ウチのフードだって買えるじゃろ。

その前に、のり丸にわざわざ「商品券」を贈ってくださった方に非常に失礼じゃろが。
 
 
 
 
ウチの大好きな「純缶」がどれだけ買えたか?(怒)
バカなのか?(怒)
 
 
…じゃあ、またの。
 
 
※話のつじつまのあわない部分は、のり丸のしょーもない「夢の話」ということで、ご了承ください。