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セイネンキレジェンド13話

2024-05-03 06:54:37 | 小説セイネンキレジェンド


直也が遮断機ない踏み切りの前に立ちドリームキャッチャーを握る姿を見ていた竹馬の友の宇地木大地がいた。
「直兄ちゃんを守ってね」と大地は久美子から頼まれていたようだ。
大地には久美子の言葉が忘れる事はなかった。そして大地は試合会場の体育館の壁に寄り掛かりボクシングの試合を見つめていた。ビジターの観客で直也を応援していた一人だろう。この時の直也は大地が遠くから見ている事に気付いてはいなかったが優子は気付いていたのかもしれない。
1組目終了、2組目終了、3組目終了、優勝者候補者は確実に勝ち進んでいた。
そして8組目の紹介が始まり直也はフードコートを脱ぎジム関係者に見送られリングに上がった。直也がリングに上がると一瞬だけ周囲は静まり返り、しばらくすると対戦相手の選手の名前だけが飛び交った。直也の噂は市町村では知られている方だったが、この時はまだ直也の顔を知る者はいなかった。優子は直也は絶対に負けまいと「直也ー直也ー」と大声を出していた。
「大島ー大島ー、直也ー直也ー」「えっ大島直也?って」「あの噂の直也って?」
優子が大きな声で叫んでいた事で観客達は直也を見つめながら、え?と口を開けっぱなしの状況になる。恐らく噂になっている大島直也がリング上にいる事が不思議だったに違いない。水泳大会で優勝に導き喧嘩っ早く強く仲間達から慕われる存在というのが大島直也の噂だった。それどころかリング上に立つ直也の身長の高さや筋肉のつき方が他の選手とは違うと思ったのか。直也は紹介されるとリング下の周囲を見回していた。まるで「俺が、大島直也だ!」と言わんばかりに笑う事なく冷静で冷めた目つき、いや睨みつけて観客を黙らせていた。直也は産まれつき鋭い目つきをしているのを観客達は全く知らない。試合開始のゴングまでリング下にいる優子を見つめる直也。優子は直也を見つめていると直也は優子に何かを伝えているかのようだった。
「タオルは投げるな」と優子は直也に言われたような気がしていた。
「直也は絶対に勝つよね」と優子は心の中で直也に沈黙して声を掛ける。
直也は優子の心の声を聴いたかのように優子だけには笑顔を見せた。直也が笑顔を見せた時「カーン!」ゴングが鳴った。
1回戦目の直也は動かず相手の姿をじっと見つめたままパンチを出そうとはしなかった。
「直也ー!行けー動けー!」「「ジャブ、ジャブ、ジャブ、ボディ、ボディ、ボディ」
「直也ー!行けー動けー!動けー!」
そのまま動かなければ身長差があるとはいえ相手の思うつぼだとコーチと思ったのだろう。観客達も応援するのではなく何が起きているのか解らなかったのかソワソワしながらざわめきだした。しかし相手はパンチを出そうとするが直也にパンチは全く当たらない。直也は対戦対手を静かに様子を見て全てのパンチを除けていた。 1ラウンド2分が過ぎた頃には相手は直也の懐へ入りボディーブローがはいった。しかし直也へのボディーブローは直也の必死の策であり相手にあえて撃たせたのだ。相手のボディーブローを直也は後ろに身を引きダメージ最小限に抑えていた。「懐へ入れば相手はボディーを狙うしかない」これが緊張の中で直也の出した答えだった。そして相手の癖などを見切っていたのかもしれない。その後すぐに直也は近づいてきた相手に軽い右フックから左ジャブ、ジャブ、ジャブ、右ストレートを打った。相手の選手はリングの中央あたりからロープまで飛ばされダウン!ダウンだ。前回3位の選手は体勢はバランスを崩しフラフラして立ち上がろうとするが立ち上がる事は出来なかった。予期せぬ事に観客達だけでなく体育館内の誰もが自分の目を疑ったであろう。直也は冷静に相手がどう動くのかを冷静に見極めていた。
「え?1ラウンドで?KOだなんて絶対ありえないよ」と思いながら小さな声で体育館では言葉を失っていたようだっだ。たったボクシングを始めて3ヵ月の直也は1ラウンド2分30秒でKO勝ちだ。ジムの会長やコーチ共にジムに通う学生達は直也の運動能力を知った時だった。サポーターの観客達は驚いたような感じで無言で静まり返り直也は静けさの中リングからフードをかぶり降りて行く。リングを降りると優子の前に立つ直也は冷静な目つきで「勝ったよ」と小さな声の優子にで呟き30分の休憩で控室へ戻った。そして優子の一瞬だけ宇地木大地を見つめた後に優子も控室へと歩いていた。


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