チューリップス・シスター第14話 美咲のメッセージ
美咲の絵画の保管庫の天井には角と天使の羽を持つフェニックスの2頭が彫刻され、物心がついた時期に真理の部屋では、真理自身が壁の上部にフェニックスの2頭を壁画に描いていた。
真理が描いたものは、保管庫の天井にあるフェニックス2頭の彫刻と模写したように同じ構図だったが、真理の部屋の中の壁画の左右に1頭ずつ描かれていた。
物心を持つ事によって、真理と美咲は細い糸位の地下の水脈で繋がっていた時期でもある。
当時に神父が、病院へ訪問すると真理は待合室で患者達と、絵本をもって笑顔で接していた為、真理に声をかける事はなかった。
真理の部屋は、以前の部屋ではなく新しく広い部屋となっていた為、看護師の叔母に会い、真理の部屋を観たいと伝え、新しい真理の部屋へと歩き向かう。
幼い頃は叔父夫婦と共に暮らしていたが、考える事、思う事、心の成長等、プライバシー面を叔父夫婦は考えリフォームをして改築と増築していた。
「とても広くて、きれいなりましたね」
「空いている敷地があってもったいないと言われた神父さんのおかげですよ、真理も大きくなりました」
「壁画はどうなりました?少し気になりましたので」
「実は以前と同じではなく全く違うんです、真理が初めて趣味でステンドグラスで絵を描いたんですよ」
神父は、新しい真理の部屋に入ると、正面にはガラス張りだが3面に別れ中央部は日当りの良い窓、左右には聖母マリアと神イエスがステンドグラスで作られ描かれていた。
「この正面左右のステンドグラスは真理さんが作ったのですか?」
「はい、神父さん、たまたまカルチャークラブで興味を持ったみたいです」
神父は新しい部屋の生活環境で、真理は成長を続けていると思う、そして入院している美咲の事を思い浮かべると、真理は何らかの美咲からのメッセージがあったのかと心で感じていた。
左右の壁には窓が2つずつ、壁の上方には2頭のフェニックスの絵が左右に1頭ずつあり、フェニックスに乗る女神の姿があり、美咲の保管部屋の天井にあるフェニックスと同じ表現の仕方で、まるで彫刻されたものを壁画で模写したようだと思った。
フェニックスは自由と平等と平和の象徴である。
ステンドグラスと新しい壁画を観ると、離れていても真理と美咲は水脈で繋がり、真理の能力と美咲の能力も徐々に繋がりつつあった。
「まだ予兆ではある能力だが、誰にも聞こえない真理と美咲は、鐘の音を鳴らし強い繋がりになろうとしているのかもしれない」
神父は心で思うと心の神の言霊は響き、神父の心に今後の真理と美咲の運命の様なものの光景が、また脳裏に薄っすらと浮かび上がる。
世捨て人になった元警察官達の犯した罪は未解決事件や先入観から誤認逮捕となるが、未解決事件や誤認逮捕は美咲だけの予兆の能力だけではなく神イエスと聖霊と天使が導き、死神が元警察官の心の中に宿るが、神父は他からの言霊や伝令による導きがあったのではないかと考えていた。
それは、ビショップ的なセラピストとの信頼関係とコナンの父母から与えられた霊能力が関わっているのか、真理の「慈悲」という感情でも導かれ、他には神父の甥の能力も働いていたのではないかとも考える。
現実の世界に元警察官達の生命と魂があるという神父の感覚、神父の心の神の言霊が感じるもの、世界にいるエクソシストやシャーマン、日本では陰陽師等あらゆる者達が真理と美咲に関与したのではないかと、神父は思えるようになった。
真理の心の中では真理は幸せに生きていると神父が思うように、現実の真理の心は動いてはいなかった。
真理の見る夢の絵を描きながら美咲は花の絵を描き、真理にメッセージを送っていた。
美咲の心の神の囁きは、真理の心にある本当の能力という扉を開かせようとする。
真理の「魂」は常に能力の扉を開く事を拒み続ける事で、その代わりに神イエスと聖霊や天使によって苦しい思いを与えられてしまう。
神イエスと聖霊や天使は、真理にも美咲と同じように予兆の能力の段階を同じようにする導きがあったが、その導きを真理は美咲と生活環境の違いによって神よりも自分を信じてしまった。
真理は、神イエスと聖霊や天使からの導きに気付いてはいたが、叔父夫婦との生活を考えると心の中で葛藤がはじまる。
美咲は、絵を描くが、真理に夢をみさせているのは美咲であった。
美咲は、「神イエスと聖霊や天使からの声」を聞き、囁いている、そして、真理に何度もメッセージを送り続けていた。
真理が神イエスと聖霊や天使による苦しい思いからの解放の為に、美咲は自分自身で入院する事を選んだ要因の1つだった。
聖域を離れた場所の病院では美咲は自分自身の予兆がどれだけの能力かを試したい思いに、真理よりも先に自分自身の予兆の能力に気付いていた。
美咲は自分自身の心にある隠された感情である怒り、憎悪、復讐の能力で、聖域外の大学病院で自然の天候を操りながら暴風雨、雷、竜巻、地震、停電を起こしていた。
真理の心の中にある本当にある能力で、美咲との共通する能力を発揮できるか、美咲自身では3つの感情でしか試す事は出来なかった。
真理の精神症状と予兆の能力が限界に達すると、美咲は囁きをやめる。
美咲の心の囁きに耐えられる真理に戻ると、囁きをはじめる繰り返しだった。
幼き頃から自分の予兆の能力を隠し生きていた真理は、美咲の生き方を否定する気持ちを抱き思う事もあった。
そうしなければ今の自分を否定する事だという思い、美咲は妹だと思いながらも真理は、どちらを選択するか迷っていた時期だった。
しかし美咲は神イエスと聖霊や天使による導きに従い、真理に自分の能力を早く気付けるよう、真理の心の中にある「時間の扉」という予兆の能力が発揮できるように導いていた。
真理の「時間の扉」を開く事で、真理と美咲の心を強く結びつけるのだが、真理は気付いていても、気づく事が出来ない振りをしていた。
真理は現実の生活の中で、美咲への診療が出来るのではないかという思いがあったからだった。
年月が過ぎて美咲と現実の世界で互いに寄り添って生きて行きたいという、真理と美咲のすれ違いの思いがあった。
真理の感情とは憂い、歓喜、慈悲であり、美咲とは全く反対の感情で一部の人物達にしか解からず、双子である事は誰もが知っている事である。
真理は、大学にいても何処にいても、苦しみから逃れる事は出来なかった。
真理は、もしかすると表向きでは「哀れみ、楽しさ、喜び」を表現しているが、影の部分では「怒り、苦痛、憎悪」を美咲よりも強く持っているのではないか。
神父の心の神の言霊は、神イエスからの伝令により真理と美咲の本当の姿を神父に教えていた。
美咲の能力とは怒り、憎悪、復讐、感情とは苦しみも悲しみも喜びでの明暗とは自分自身の心を開きはっきりさせる事である。
真理の能力とは憂い、歓喜、慈悲、感情とは哀れみや楽しさや喜びでの陰陽とは自分自身を心の中で閉じ込めてしまう事である。
真理と美咲の喜びという感情だけが共有され、それは幼き頃の年1回の誕生日を思い出させる。
真理だけにある心に1つの隠された怒り、苦痛、憎悪の感情は、美咲よりも強く抱いてしまっている事を神父は心の神の言霊の囁きによって感じとっていた。
この世でも次元の違う別の世界で真理と美咲が共に苦痛を味わっている中、現実の世界にいる精神科医や臨床心理士は、美咲の気持ちは落ち着いてきていると考え判断をし、フリーランスの精神科医に任せる事になった。
その判断を警察官に伝えた為、美咲のもとへ警察官は足を運んでいた。
「私に任せてくれるなら、警察官には何も言わず、美咲さんの花の絵だけを見せて下さい」
大学病院の精神科医は、コナン・グレードから言われたとおりに、夢の絵を警察官に見せる事はせず花の絵だけを見せるだけだった。
コナン・グレードが花の絵だけを見せるだけと伝えたのは、その美咲の絵が捜査の終わりを物語り、捜査する事をやめさせる手段であった。
警察官達は先入観からの捜査ではなく、真実を明らかにする事だけが目的だった。
「神と聖霊の元に導かれているのでしょう」と、神父は話す。
「精神的には治療をする必要ありません、安静にし休息を取り見守る事が必要です」と、コナン・グレードは話す。
「さぁ、どうでしょう、私は治療は出来ません、ただ寄り添い不安を取り除くだけです」と、セラピストは言うだけである。
神父とフリーランスの精神科医やセラピストは、いつも同じ言葉で話をし、詳しい情報を得る事が出来ず、幾度となく警察官は様子を見るだけで真実を知る事はなかった。
たとえ真実を伝えたとしても、警察官達は信じる事は出来ないだろうというのが3人の考えや思いである。
あの農園跡地に咲いていた花ばかりを描き続ける理由は、真理が新たな彼との出会いによって知る事になる。
心の中で苦しみと葛藤をする真理は、病院へ行くが玄関前で帰っていき、美咲に合う必要がなかった。
真理は美咲の全てを感じ取っていたからこそ、病室に行く事もなく美咲の部屋の窓を外から見るだけで良かった。
大学病院の玄関前に行くだけで強い感情を抱く美咲の気持ちと描いてるものが何を指しているかを理解し、真理は本当の自分自身を知る事になる。
警察官は美咲に注目していた為、大学生の真理に会う事はなかった、真実を知ったとしても理解する事は出来ない、聴取し調書の記録を書いても消えてしまう。
真理は、修道院の施設に入っていた美咲の心の奥深くにある全ての予兆の能力と感情を理解し知っていた。
描き続けている絵は、全てメッセージである事も知っていた。
美咲の苦しみも、悲しみも、喜びも、怒り、憎悪、復讐の感情を全て真理の記憶に残されている。
しかし、美咲は怒り、憎悪、復讐の感情だけで自分自身を表現していた。
真理の予兆の能力は、美咲に復讐の感情へ慈悲の感情を重ねる事が精一杯だった。
この時の真理は、神イエスと聖霊や天使による導きに従う事はなかった為、自分の持つ能力のコントロールが出来ずにいた。
そして、大学病院内で罪なき苦しみの中で2人の犠牲者を出してしまう。
救命病棟にいた術後に酸素吸入をしている患者は窒息死、人工呼吸器を使用していた患者は人工呼吸器のスイッチが入らず窒息死で命を奪われた事で心に罪悪感という傷を負ってしまう。
入院するタイミングは偶然でなく、必然的で入院の時を美咲は待っていた。
本当の真理は憎しみが強く、その美咲が抱く憎悪で苦しんでいた。
美咲は、すでに真理が精神科医になる事を知っていたようだ。
真理を精神科医に導いたのは、姿なき声として、美咲の囁きによるものであった。
それは、花の絵の中に描かれていた、あの一枚の後ろ姿の絵である。
2本の花、一人の後ろ姿の絵は、真理へのメッセージでもあった。
真理はその都度、美咲からメッセージを受取っていたが、迷いの中にいる真理は行動に移す事が出来ず誰にも話す事は出来なかった。
迷いの中いる真理を神父は待っていたが、真理は神父に会う事に不安と恐怖を感じていた、それは自分自身に気付いていても真実を言葉で言われたくはなかったようだ。
「今の生活を壊されたくはない、私には将来があるから、その時がきたら、美咲に会いに行くね、ごめんね」
「真理、いつまでも待ってるね、謝まる事はないからね」
これまでの真理と美咲の関係、能力を、もし伝えたとしても誰も信じてもらえる事はないだろう。
真理は、早く精神科医にならなければならないと思っていた。
美咲を治療ができる、それだけではなく、真理は自分の持つ能力を隠し、現実的に精神科医として生きられると考えていた。
真理は美咲のように、この時は素直で正直に生きる事が出来なかった。
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