チューリップス・シスター第13話 事件捜査の迷走
当時、美咲が大学病院へ入院した事は、誰も真理には知らせる事はなかった。
叔父夫婦は真理に知られると真理の生活観や価値観など人生のあり方が変わってしまうと考えていた。
神父は、伝える必要はないと考えていた、何故かと言えば真理は海で真理は湖、海と湖は地下の水脈で繋がるのと同じで真理と美咲は繋がっていると考え、真理は自らの能力で美咲が入院している事を知るだろうと思っていた。
セラピストは、美咲の事だけを考えていた。
フリーランスの精神科医は、ある能力の持つ人物であり、聞く事だけで人に話をする人物ではなかった。
この人物は美咲だけではなく施設にいる子供達からも信頼のおける人物で名前はコナン・グレード、子供達からはコナンと呼ばれていた。
アメリカにいたインディアン民族の最後の男性は日本で日本女性と子供を授かったが、婚姻届を出す事はなく内縁関係であり、2人の間で産まれた子供がコナン・グレードである。日本女性には特別な能力があり、インディアン民族の最後の男性を日本に導いていたようだ。コナン・グレードには、日本女性の能力とインディアン民族の男性の霊能力が備わっていた。
彼の父母は、アメリカにインディアンの末裔がいる事、そしてカード・トランプから差別を受けている事を知り、インディアンの末裔を守る為に戦いの中で死んだ。
そして、彼は、アメリカではなくイギリスの大学で学び精神科医となり、大学付属病院で勤務していたのは半年、その後はコナン・グレードは自分自身の能力を日本人の母の最後の手紙で知った。
個人的な関係で精神治療が可能である事に気付き、病院の精神治療を受けたくないという富裕層の患者を診療するフリーランスの精神科医となっていた。
コナンが精神治療をしていた患者の中には、真理や美咲のような能力を持つ患者もいた。
そして稀にある特異的な能力を持つ多くの患者を専門の精神科医として、世界中を回りながら診療した体験があり、日本で神父と出会っていた。
美咲の絵画の保管庫の天井には角と天使の羽を持つフェニックスの2頭が彫刻されていた。
飛ぶ事が出来ない伝説の女神を乗せてフェニックスは空を自由に飛びまわるような彫刻だった。
彫刻を施したのは、この頃には誰なのかはわからなかった。
美咲の絵画の保管庫の壁から保管棚は離されていて、全ての壁の彫刻が観れる様になっていた。
神父とセラピストだけが扉を開け観る事が出来る保管庫であったが、特異的な能力を持つ事がわかり、フリーランスの精神科医で霊能力を持つコナン・グレードにも観てもらう事になる。
刑事や警察官は、家宅捜査の令状を見せ、保管庫へも土足で一方的に強引に先入観で踏み入れた。
神父とセラピストとコナンは、美咲の真実を伝える事はなく、令状もあり刑事や警察官の思うとおりに黙って従うしかなかった。
保管庫は美咲にとっては聖域の場所であった、その為、入院している美咲は離れた場所で刑事や警察官の行動や考えている事を眼をつぶり黙り、目を開けると怒り憎悪復讐の感情で刑事や警察官達の姿を絵画に残す。
唯一、1年に1回の誕生日に、美咲がいない事を聞く事もなかった。
警察は、美咲の様子を伺う様に、週に1回、病院へ足を運んでいた。
美咲の絵は、精神心理学によって分析をされていたが、どうしても、答えは出てこない。
心理学者や分析官は、様々な症例や事例を調べてみるが、どの症例や事例にも当てはめて考える事が出来なかった。
警察は、過去の美咲を見た精神科医にも先入観で強引な事情聴取をおこなっていた。
精神科医は、過去の美咲の事や、美咲と会った時の出来事を話していた。
「目の瞳に引き込まれる感じ?馬鹿な、そんな事があるわけはない」
「そうですよ、過去の調書の記録も本当かどうか不明ですから」
「そうだ、その通りだ、丸裸にして真実を突き止めよう、必ず、犯人はいるはずだ」
刑事や警察官達は、精神科医の言葉を信じる事はなかったが、一応、事情聴取した事は調書には記載されていた。
捜査線上には、何人かの容疑者として浮かんでいた。
何度も調査をするが、決定的な裏ずける証拠すらなく、事情聴取では何度も同じ内容が話され何も出ては来ない。
警察が唯一、決定的な証拠は、ナイフについた幾つかの指紋だけであった。
その指紋でさえ、前科者リストの中には、一致するものはなかった。
美咲の描いた横たわる男の上に乗しかかり、ナイフで刺している人物の姿の影は誰なのか、男性か女性か。
この3年の間、何度も美咲のもとへ足を運ぶ刑事や警察官の強引な姿があった。
また、何度も叔父の診療所にも訪問し、先入観で強引な事情聴取をしていた。
叔父夫婦が、美咲が病院へ移ったのを真理に知らせたのは、事件から3年後であった。
真理は驚く事もなく冷静でまるで知っていたかのようだ、そして18歳になった真理は大学へ入学し医大生となった。
当時、15歳の時には、叔父を尊敬していて内科医になる事を目標としていたが、美咲が病院で治療を受けていると伝えられると精神科医を専攻した。
それは、美咲が求める事で真理に囁きながら精神科医になるよう導いていた。
叔父は、最初は反対したのだが、もしかしたら美咲を真理は自分で治療する事を考えての事かもしれないと思っていた。
「神の言葉において、この時間の扉を開けよ」と、神父の心の中に、目に見えない姿なき声が、囁き始めた。
神父は、教会で祈りを奉げ続けていた。
入院している美咲の症状は落ち着いているものの、以前同様、言葉で表現する事はなかった。
大学生の真理は、夢を見る事が多くなってきた、この夢は真理と美咲に変化をもたらし始める、この世のものとは思えないものである。
「神の言葉において、この時間の扉を開けよ」
この言葉によって、ある能力が真理と美咲の心の扉が開きはじめた。
真理のみる夢は「炎の夢」 「太陽の夢」 「水が流れる夢」
美咲は入院してからは農園に咲いている花の絵を描いていたが、真理が夢をみると、その絵を描くようになる。
真理の夢を描く美咲の絵は、精神科医や看護師に恐怖感や不快感を持たせ、その絵は動いているかのように見えた。
その絵を見つめていると、頭痛や吐き気、無気力といった症状を持たせるのだ。
病院内では、それらの絵は、美咲の病室の棚の引き出しの中ではなく、神父が預かり美咲の保管庫に置く。
真理と美咲は、どんなに離れていても同じ風景や人物を見る事が出来るようになり、真理は眠れぬ日々を過ごす。
その夢は、真理を苦しめるものとなっていた。
夢をみる真理と、夢を現実のものにする美咲であり、真理は幼き時から本当の自分を隠して生きていた。
その反対に、美咲は自分に正直に生きてきた、自分自身の感情のままに、怒り、憎悪、復讐の感情である。。
神イエスは、真理には、苦しみと苦痛を与え試練を乗り越えるよう導いていた。
美咲は、真理に素直で正直に生きられるよう、真理の心の中に囁き始めるが、真理は、美咲の囁きの意味がわからずにいた。
何度も何度も、美咲は真理に伝え続ける。
美咲は、花の絵を描きながら小さな声で囁いていたが、真理の心の中の夢が現実となる様、真理の中にある能力を与えはじめる。
真理は、その能力を持つ事を心の中で拒み続け苦しんでいたのだ。
この変化は、誰も気づく事はなく、真理と美咲が共有する能力がある事を、誰も知る事はなかった。
神イエスや聖母マリアに、神父の祈りは真理の苦しみを軽減するためのものであった。
真理と美咲の周辺にいる人達は、普通の生活を送り笑顔が絶えなかったが、刑事と警察官によって変わってしまうが病院にいる美咲はその光景を思い浮かべていた。捜査の進展はなく捜査の方向性に間違いあり、八方塞がりとなっていた為、最初に戻る殺人事件の捜査となった。
美咲への気遣いはいらない事、決して関わってはならない事を伝えた約束は、私服の刑事達と制服の警察官達は考えた末、神父達との約束を放棄した。私服の刑事達と制服の警察官達は、過去の奇妙で不思議な未解決事件があった事を知りながら、真理と美咲の容疑ははれたが、疑惑という先入観から離れる事が出来なかった。
「俺達は犠牲者になる事はない、疑惑がある限り、捜査は続けなければならない、真実を追求するのは俺達だ、過去の未解決事件も含めてだ」
真理と美咲の周辺で事件は起きていると疑い深く先入観のある刑事達と警察官達であった。
何度か約束をした事をもう一度考えてもらいたい思いを伝えたが無理だった為、今後この刑事達と警察官達が、どのようになるのか見極める事を考えていた。
神父の祈りは届く事はなく、フリーランスの精神科医が伝えた事への疑問もあり思いは届く事はなかった。
施設の外へ出る事のない美咲がどうして絵を描き続けるのか、1つの疑問があり警察の方では、フリーランスの精神科医ではなく日本で大学病院の専門の精神科医とも相談していた。
美咲の状態について相談を受けた専門の精神科医は警察へ美咲の入院治療の必要性を話し、措置入院をすすめたのだが、なかなか対応が出来ずにいた。
「少しだけいいです、協力してもらえませんか」
神父達に協力求める刑事達の中には数人の刑事や警察官はいた。
それは何故か、過去の未解決事件の調書を読んで、不審な死で自殺なのか殺人なのかと考えると不安感と恐怖感があった為である。
今後どうなるのか全く解らない事である為、良く考え相談をして神父とセラピストやフリーランスの精神科医は協力する事は出来ないと数人の刑事や警察官に話す。
「私の邪魔をしないで、悪の邪気は消えてしまえ!」病院に入院中の美咲の怒り・憎悪・復讐心から感情の囁きである。
美咲に声をかけた刑事達や警察官達は、美咲の心の囁きによって耳鳴りや頭痛、眩暈、立ちくらみ、頭への強い圧迫感を持つようになり説得は不可能となった。
それでも先入観から離れられない警察は、捜査の進展はなく捜査の方向性に間違いありと決めつけ八方塞がりとなっていた為、最初に戻り殺人事件の再捜査を開始する。
刑事達に異変はあるが、ただの体調不良と考える私服の刑事達と制服の警察官達であった。
神父や叔父夫婦、セラピスト、フリーランスの精神科医へ真理と美咲への疑惑を解く鍵を見つける事を互いに確認し合いをして、強引になっても事情聴取を取る事を決めた。
美咲からの信頼関係のあるセラピストとコナン・グレードは、疑惑という先入観から離れられない警察からの事情聴取は断っていた。
先入観のある警察官達は、強引でしつこく神父や叔父夫婦、美咲にも同じであり、過去の事件に関係する人物全て、真理や修道僧、施設の職員に事情聴取をする。
警察は、一時的なものではなく強引で執拗に、神父や叔父夫婦へ何度も同じ質問をし、過去の聴取内容を変え、現実的な内容にしようと事情聴取をしていたのかもしれない。
しかし、どんなに質問内容を変えても、過去当時の聴取内容は決して変わる事はなかった。
美咲の3つの感情は、警察官達に向けられる。
先入観を持つ警察官達らは、辞表を出すよう脳内で何かしらの音声誘導され、事件の記憶を消され、ホームレスの人生を歩む事になる。
ホームレスになったもと警察官は、常に罪悪感の中、耳鳴りと音声送信で苦しみながら生きていく運命となった。
過去のように現実の世界で全てを消された犠牲者を増やさない為にも、神父は心の中の神に祈り、コナン・グレードは願っていた事で、死や現実の世界から消える犠牲者はいなかった。
ただ、生きながら罪悪感に苦しみの中で生きていく運命にされたというのは報われず、日々何度も生と死を考え残酷な運命に違いない。
先入観から見る視点が変えられなかった警察官達らはホームレスになったが、世捨て人のようになりホームレス同士の交流はなくなり、孤独感にさいなまれ神イエスによって真理と美咲の父母と同じ苦しみを与えられ、棘のある茨(いばら)の道へと導かれたのだろう。
思い込みが激しく先入観を持たなければ、普通の人生を送り幸せな人生を送れたのかもしれない。
捜査の迷走は時が流れると未解決事件となった。
ホームレスになり世捨て人のようになった元警察官達は、他人と関わりを持つ事はない。
組織の中で人生を歩いたはずだが、孤独の中での人生を送る事になる。
美咲の3つの感情の予兆の能力で元警察官達は動かされていた。
怒り、憎悪、復讐の感情が元警察家の心の中に植えつけられ、警察官の正義ではなくそれぞれ一人で動き、強盗や強盗殺人を犯すよう導く事になる。
ホームレスは、公園や河川敷などで住まいを作り住みかになるが、世捨て人となると人間関係は全くなくなり、事件犯行後に住まいは常に違う場所へと移動し生きていく。
そして、世捨て人になった元警察官達の犯した事件は未解決事件や先入観から誤認逮捕となる。
未解決事件や誤認逮捕は美咲だけの予兆の能力だけではない、神イエスと聖霊と天使が導き、死神が元警察官の心の中に宿ってしまったのだ。
元警察官達の世捨て人達は罪の意識もなく強盗殺人を犯し事件は次々と起きる、そして未解決事件や誤認逮捕は増えていく。
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