梗概小説/兄妹の秘密-夢幻- Vol.005

搭乗手続きの時間がくると、聖子と彼にパスポートとチケットを付き人は渡してくれた。

彼は重い腰を上げるように、ため息をつきながら立ち上がり、

彼は自分の手をカウンターの方へ差出し、聖子が先に手続きをするよう誘導をする。

彼からすれば「”レディファースト”」

の思いからであったが、聖子の気分は悪くなるくらい、彼が後ろに居られるだけでとても嫌な思いをしていた。

聖子からすれば”彼”との出逢いは「最悪」な出逢い方であった。

彼の搭乗手続きの際、彼の名前を見ようとした聖子であったが付き人が間に入られ、聖子は彼の名前を知る事はできなかった。

目的地行きの飛行機が着陸し付き人が荷物を持ち、聖子は最小限の荷物を持ち、彼は何も持たず通路を歩き飛行機に搭乗した。

飛行機の中では聖子と彼は隣に座り、彼は窓側で何の会話もなく窓の外を眺めていた。

午前早目、彼らと聖子が向かう目的地はイタリアのローマである。

空港から約十三時間、聖子は彼の隣りに座ることになり、聖子にとっては彼の隣りで十三時間の間、嫌な思いをする事になる。


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