リングから降りた直也が見つめる先にいるのは前回優勝選手で今回の試合で1番の期待された有力者の姿があり直也の戦い方を分析をしてる様で何か話し合いをしているようにも見えていた。
「直也、お前、優勝狙ってるのか?相手を見てみろ心理戦で来るぞ」
「俺は、勝つ為に、リングに立ってるんで、心理戦なら負けない」と直也は会長の声掛けに答えた。直也はボクシングを始めてから、まだ3ヵ月という直也のボクサーとしての成長は直也の心の成長となるよう会長は願っていた。直也が何故ボクシングジムに通う事になったのかを良く知っていたからだ。そして工藤康志は直也の目を真剣に見つめていた。
「なら絶対に勝て直也、優勝は目の前だからな」「はい」
直也はボクシングトーナメントで言葉では表せない何か見つけていた。次は3回戦目だが直也は集中力と緊張感で息を荒くしていた。直也の頭の中にあるのは、もう優勝しか考える事はなかったが、それが直也の緊張の元になる。優子は直也が久美子や春樹や真一との別れから怒りと憎しみを持ち囚われた身の思いから「逃れたい」と思っている事も知っている。そしてそっと直也の傍に寄り添い水とタオルを渡した。そんな優子の顔を見て直也は頭をかきながら笑っていた。優子も直也と同じように笑うと、まるで恋人同士のようだ。直也の通うジムの会長やコーチや他の通う学生達、きっと周囲で2人を見ていた人達は「彼氏と彼女」恋人同士と思っていただろう。近くで見ていた観客の中で優子に声を掛けてくる人達がいたが優子は悲しそうな顔をしながら「話しかけないでください!」と優子は何故か涙目で言葉を返した。
「お前、そんな事言うな」「ごめんなさい、でもね直也の為に言ったの」
「どうして?」「優勝するんでしょ邪魔な言葉は私が許さない」直也は優子の思いも気持ちも知っていた。
「まるで久美子みたいだな」「え?、今なんて言った?」
「なんでもないよ、お前は馬鹿だ、昔から大馬鹿だよ」
「馬鹿でけっこう直也の為になるなら、どんな事でもするから」
2人の関係は優子の片思いかもしれないが直也の心は優子の思いに揺れ動いていたように感じるが今は心が動くとは思う事もなかった直也はリング上のボクシングだけに目を向けた。3回戦目となると更なる強い選手同士の戦いだった。「強いなー、それでも俺は勝つしかないんだな優子」と直也は優子に声を掛ける。、
「絶対に勝ってよね、直也がどんな人間なのか思い知らせてよね」
まるで優子は自分がボクシングをしているような気持ちで直也に答えて2人で笑っていると会長やコーチや工藤康志や他のジムの仲間達も笑顔になっていた。「余裕だな!集中、集中だ!」と康志は直也に声をかけていた。
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