「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」「男たちの旅路」など数多くのヒューマンドラマで知られる脚本家の山田太一さんが11月に老衰のため亡くなりました。
12月18日クローズアップ現代で取り上げていたので録画しておいたのを観ました。
皆さんも山田太一さん作品のドラマを何本か観ていると思います。
ホームドラマとかトレンディードラマとは違い、さまざまな社会問題を浮き彫りにした作品が多く、一つ一つが大きな反響を呼びました。
多くの作品を観てきましたが、40歳代の頃に観た「冬構え」(1985年)は、ドラマの主人公の年齢と同じになって、当時は思い至らなかったこの作品のもつ意味を、今になって理解できる、そんな作品であることに気づかされた。
山田太一さんの先を見据えた作品創りの凄さなのでしょう。
そのドラマ「冬構え」のあらすじとは、
6年前に妻に先立たれ一人暮らしの主人公が、80歳を前にして心身共に衰えを感じ、全財産を持って帰るつもりの無い死に場所を求めて東北へと旅に出るドラマです。
だが、一人で始末をつけようとすることには限界があることに・・・。
ガンで入院中の昔の同僚を20数年ぶりに見舞ったり、同じ一人旅の老女と知り合って同じ宿に泊まったり、若い板前のカップルの夢を叶えるためにお金を出したりする。
死に場所を探して旅に出たが、思いがけない他者によって別の道が拓けてくる。
恐山を背景に、子供たちへの「遺書」を主人公役の笠智衆が朗読する場面があります。
「私はこの旅先で、どのようなことになろうと、娘や息子達に何の責任もないことをしかと書き残します。子供たち、孫たちは本当にようしてくれました。そして、いかなる意味でも、誰かをも恨んだり悲しんだりして、死を危ぶむものでないことを書き置きます。私は、こうした書き置きを残せる幸せを感じております。この折を逃せば・・・省略・・・
贅沢かもしれませんが、良い爺さんのままこの世を去りたいという願いを消すことができません。これは私のわがままであります。」
何ともわびしく身につまされますが、主人公と同じ年齢になり、どれもこれも凄く理解できてしまう。
そんなドラマです。
山田太一さんの作品をNHKが再放送します。
12月30日(土) 午前0:44 〜 午前2:17「今朝の秋」をご覧になって観てください。
昔のドラマでも山田太一さんのドラマは色あせていません。