今夜は二期会オペラ・ベルク「ルル」初日で新宿文化センター。
今朝、METの録画をウチで観て物足らないのはベルクの音楽の迫力が伝わってこないことだと書いたが。
今夜150分全編に流れた演奏、マエストロパスカルはすごい指揮でオケを引っ張っていた。これがベルクの音楽だと酔いしれた。
プロローグが終わるとすぐにルルもシェーン博士も登場したが、先ずは加耒さんに驚いた。こんな芝居が、こんな歌い方が、この渋い中年男のビジュアル。そして3週間でこんな難曲をどうやって。これでオペラのオファー激増するでしょう。
画家の高野さんがなかなかよかったし、アルヴァの前川さんは特に後半、最終場面のあたりがとっても。
森谷さんはすごい。個々の演技とか歌っていうことじゃなく。
性的虐待を受けて育った美少女が、シェーン博士に救い出されたのに。性的な目的で男たちから求められ、結婚と破綻を繰り返し。やっと博士と結ばれて落ち着けると思いきや破綻、しかも殺してしまう。
性的虐待と貧困から歪み、惨たらしい人生を送った美少女、ルル。
その悲しい美少女の心の動きを、中村さんがみごとに演じていた。ラストシーンの2人の絡みに、淫らなルル、その中にある純粋なルルの心、をぼくは見た。
森谷さんはそういうルルを体現した。
グローバーの演出の力もすごいのだろう。上田さんの映像も良かった。
でも今日のオペラはルルのもの、森谷さんのものだ。素晴らしい。
好みの問題だろうが、あしたMETとこの公演があるなら、ぼくはこのチケットを買う。