今夜はイタリア・オペラ・アカデミー in 東京 ・リッカルド・ムーティ指揮《マクベス》(演奏会形式)で東京文化会館。
スタンディングでの長いカーテンコールに、最後にまたムーティが出てきて、チャオ、もう寝るよ、って仕草。
それでやっと終わった。
いま10時すぎの車中で書いている。
感激で胸いっぱいって感じ。
なんと素晴らしいマクベスだったろう。
これがヴェルディのマクベス。
これがムーティのマクベス。
第一幕、ミケレッティとザネッラートはいきなり本公演モードで歌い出した。
2人はただ衣装をつけていなかっただけ。
ただステージに動き回れるスペースがなかっただけ。
2人は本公演のつもりで歌っていた。表情で演技していた。
それからアナスタシアが立ち上がって歌い始め、ぼくらの心に火をつけた。
もうマクベスのドラマにどっぷりはまっていた。
アナスタシアの突き抜ける高音だけでなく、低音部も美しく歌える声。高い技術。響き渡る豊かな声量。表情や仕草やちょっとした手や身体の動きでの演技(芝居)力。キリッとした美しいマスク。何もかも素晴らしかった。
ネトレプコが鬼のような悪魔だとすれば、アナスタシアは恐ろしくも美しい悪魔とでも言えばいいか。
ミケレッティは2幕の気がおかしくなる辺りから凄みがましていった。3幕ではまさにマクベスが乗り移っていた。素晴らしかった。
これらイタリア勢に比べると芹澤さんは少し硬かった。もっと思い切って表現・演技してほしかった。
出番は少なかったが城さんは見ごとな快唱。やはり力がある。
北原さんも表情豊かだった。要所で存在感があった。
オケは若い人たちが多かったがムーティの指揮によく応えていた。技術のある人たちが集まっていたのだろう。
ダイナミックにドラマを盛り上げた。
合唱は良かった。藤原や二期会の知った顔が何人もいたから当然か。
3幕の合唱の場面は本当に美しかった。ムーティは合唱をとても重視したんだ。スカラ座の合唱団はすごいもんね。
さてマエストロ・ムーティ。
何を書けばいいか。
自分が一番のスターなのに、ソリストやオケの若い音楽家たちを気遣い、励まし、或いはたぶん褒めていた、ように思える場面があった。
そういう人だから毎年、日本人の音楽家を育てようときてくれるんだろう。
そして本公演ならピットに隠れて見えないマエストロ・ムーティの指揮ぶりを、今夜はこうして間近で見れたこと。
忘れることはないだろう。
素晴らしい夜だった。
明日は青山貴さんや谷原めぐみさんたちの「リッカルド・ムーティ introduces 若い音楽家による《マクベス》(抜粋/演奏会形式/字幕付)」を川崎ミューザで観る。
青山貴さんを見かけたので、明日行きますから、と伝えた。谷原さんもいたはず。明日はプレッシャーがかかるだろうけど、期待してる。