今夜は宮本亜門演出「蝶々夫人」で東京文化会館。
東京二期会のシーズンチケットはもう買っていないが、宮本オペラだけは外せない。
実は2019年の公演をわたしは見損なっている。大村博美さんのタイトルだったというのに。だがプレミアムシアターがその後放映したものは観ていた。
が、2024年のプロダクションはさらに進化、現代化していて驚いた。
METなどは変わりばえのしない演出を繰り返しているというのに。
なんという着想だろう。宮本亜門さんは天才だ。
もう医師から無理だと宣告された老ピンカートンが息子を呼び寄せて、実はおまえのホントの母親は、と語るところからドラマが始まる。
劇中劇のようにその息子はずっとステージ場で母親の生涯をみつめるのだ。
それから時代設定を戦前くらいに設定し、ピンカートンは大戦参加のために日本を離れる。そして蝶々さんはほとんどが洋装だ。改宗までしてアメリカ人の奥さんになろうとしたのだから洋装はしっくりくる。髪に結ってない。
ヤマドリは帝国軍人だし、わたしたちから見たら奇妙なキャラの親戚やボンゾなどはいない。
そんなふうに現代化したことで、このドラマが現代人のわたしたちにも、すごくリアルなものとして、ずっしりと胸に迫ってきた。
そして自害のシーンを省き、息を引き取ったピンカートンと手を携えて天国に向かっていくフィナーレ。
すごい。素晴らしい。こんな感動的なバタフライ観たことない。
世界中で蝶々夫人を演じている大村さんも、このような現代化した蝶々さんを演じたには始めてだろう。
いやぁ素晴らしかった、最高だ。
2019年に見損なって落胆していた。4年かかったけど最高の大村蝶々さんを見ることができた。幸せだ。
城さん今井さんは文句なく最高のキャストだったが、スズキの花房恵里子さん、まだ若いんだろうによかった。
指揮はイスラエル出身のダン・エッティンガー。東フィルは切なく美しくドラマティックだった。
宮本亜門オペラは、「午後の曳航」(2023年)、「パルジファル」(2022年)、「フィガロの結婚」(2022年)、「魔笛」(2021年)、と観てきたが、ホントに素晴らしい。
この蝶々夫人は世界最高だ。