「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

小説「傾国のラヴァーズ」その37・聖名の悲鳴?

2023-04-22 20:31:24 | 傾国のラヴァーズその31~40
 そして、画面の中では、丑三つ時、廃村の中にあるという廃校に二人が入っていき…

ーリュウ君、何かねえ、すぐの教室の前に女の人が見えるの…

ー女の子?

ーううん、違うの。大人の女の人。

ー大人?



 隣の聖名を見ると、いつしかクッションは捨てていて、怯えた表情でもう腰が引けている。

 

 すると動画の中では、霊の声が…音とテロップで…


〈…あそんでいって…〉


「!!!」
 聖名が俺の腕にしがみついてきた。
 霊よりも、聖名がしがみついてきたことの方に俺はびっくりした。



ー音声アプリ使ってみようか…こんばんは。リュウといいます。今日はみなさんとお話し出来ないかと…


〈死ね〉〈帰れ〉〈やめてください〉


アプリの音声が暗い画面の中で赤い文字でも表示される。



「アプリ使ってるけど、機械の声だけど、霊の言葉なの! 怖い~」
 聖名はしがみついたまま、俺の胸に顔を埋めてくる。
 俺も画面にはびっくりで凝視してしまったが…


〈私は殺されました〉〈痛い〉〈憎い〉


「凄いけど、怖い~!」
と聖名の力はますます強くなる。
「怖いなら別の動画にしろよ~」
 そう言いながらも、無意識のうちに俺の右腕は彼を包み込むようにまわり、手は彼をなだめるように動いていた。
「でも好きなんだもん」
と言ってから、今度は聖名がびっくりしたようにあわてて体を離した。
「ごめん」
 俺も我に返ったが、言葉が出ない…

 そしてまた画面を見てわーだのぎゃーだの…
 おかげで20分くらいの内容が全く頭に入らなかった。





小説「傾国のラヴァーズ」その36・聖名は両方好き?

2023-04-22 10:24:10 | 傾国のラヴァーズその31~40
 すると今度は聖名が笑ってしまい、

「いや これは 前座。 大人のメインはこれからだよ。さあセンパイ、ここに座って」

 言われるがままに俺は彼の横に座った。「大人のメイン」という言葉が少し気になったが…

 彼は無言のまま、猫の動画を途中で終わらせ、手慣れた様子で、テレビで検索画面からお目当ての動画を見つけ出した。

 すぐに動画は表示されたが…

 黒い画面に赤い文字で、

〈警告〉
〈閲覧注意〉
〈不思議な現象が起こります〉

…とか書いてある…つまり、心霊動画のチャンネルだったのだ。俺には選択権がなかった。
「センパイ、ほんとに面白いんです。おすすめです。センパイは怖いの苦手?」
「見たことがないからわからないけど…そんなに苦手ではないと思う」
「よかったあ」
…ってことは、彼は実は怖がりなのか?

「これは〈ホラージャパンTV〉っていうチャンネルで、リュウ君と真弓ちゃんの男女ペアでやってるんだけど、真弓ちゃんの声がもう可愛くって、癒やしボイスなのぉ~」

と、クッションを抱いて身悶えする聖名の姿に、なぜか俺はモヤっとした。

「そしてリュウ君も俳優ばりのイケメンなの~」

 またもや俺はモヤっとした。

 しかし聖名はもちろんそれには気づかないようで、

「霊感体質の真弓ちゃんが動けなくなっても、1人でも霊の声がする深夜の廃墟の中を突き進んでいくリュウ君が、もうカッコ良くって…」

 もうこれ以上そんな言葉を続けないで欲しい…と思う自分にも戸惑っていると、動画の方では今日訪れた廃校や、これから検証する心霊に関するリュウ君の説明が始まり、


ーでは早速、中に入ってみたいと思います。

と、キリっとした表情でその場は締められる。