以前にも書きましたが、1918年のスペイン風邪パンデミックの際にサンフランシスコ市では、保健委員会委員長のウイリアム・ハスラー博士によって「マスク着用条例」が制定され、その結果インフルエンザ感染者のみならずジフテリア、麻疹、百日咳の報告数も急激に減ったことが報告されています(アルフレッド・W・クロスビー著「史上最悪のインフルエンザー忘れられたパンデミック」より)。 しかしながら欧米人のマスク嫌いは肝いりで、誰が何といおうとマスクをしない某国大統領をはじめとして、この期に及んでもマスクを着用しない人は大勢います。これは目は口ほどに物をいう日本人と異なり、口元で表情を読み取るという欧米人の特徴も理由のようです。
さて最近のPNASとScienceにマスクの有用性についての論文やコラムが掲載されていました。特にPNAS論文は、新型コロナウイルス感染において、マスク着用義務(mandated facial covering)のないsocial distancingのみでは感染拡大防止は難しいということを、武漢やイタリアの事例、そしてマスク着用を義務化したニューヨーク市と義務化していない他のアメリカの都市との感染者数推移の比較などを用いて示しています。これはsocial distancingのみでは接触感染は防げても、小さな飛沫(エアロゾル)を介した空気感染(airborne infection)が防げないからだろうとしています。空気感染がどの程度感染拡大に重要かについては私も半信半疑なところはあるのですが、無症状感染者からの感染拡大が起こりうることや吸入するウイルス量に比例して感染リスクが高まることは確かであり、このような感染ルートを防ぐためには、やはり症状の如何にかかわらずマスク着用というuniversal maskingが古くて新しい予防法なのだろうと思います。
Prather KA et al., airborne infection "Reducing transmission of SARS-CoV-2" Science 27 May 2020: DOI: 10.1126/science.abc6197
Zhang R et al., "Identifying airborne transmission as the dominant route for the spread of COVID-19". Proc Natl Acad Sci U S A. 2020;202009637. doi:10.1073/pnas.2009637117
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