悪性腫瘍の転移臓器は腫瘍の種類によって特異的なパターンがあることが知られています。例えば骨転移の頻度が高いものとしては前立腺癌、乳癌、腎癌、甲状腺癌、肺癌などが有名です(鉛のヤカン=PBKTL; P: prostate, B: breast, K: kidney, T: thyroid, L: lungと覚えました)。この論文で著者らは遺伝子バーコードでラベルした様々なヒト株細胞をNOD-SCID-gamman(NSG)マウスの心臓に投与するという転移モデルを用いて、500もの腫瘍株細胞の転移部位(脳、肺、肝、腎、骨)マップMetMap500を作成しました。また臨床データベースからこのMapが臨床的な観察とも合致することを示しています。様々な転移部位から脳転移に着目し、脂肪酸代謝が重要な役割を果たしており、脂肪酸代謝を制御するsterol regulatory element-binding protein(SREBP)-1の脳転移への関与を明らかにしました。普通骨転移に着目するやろ!という文句はさておき、今後このデータベースを用いて様々な部位の転移メカニズムが解明されることが期待されます。
Jin, X., Demere, Z., Nair, K. et al. A metastasis map of human cancer cell lines. Nature 588, 331–336 (2020). https://doi.org/10.1038/s41586-020-2969-2
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