とはずがたり

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大腿骨近位部骨折患者の予後に対するCOVID-19の影響(スコットランドの場合)

2020-07-17 19:07:35 | 新型コロナウイルス(治療)
同じような論文ばかりで恐縮ですが、スコットランドからの大腿骨近位部骨折の術後転帰に対するCOVID-19の影響についての論文です。International Multicentre Project Auditing COVID-19 in Trauma & Orthopaedics(IMPACT)の一環として行われたものです。スコットランドの外傷センターを含む6病院で2020年3月1日から4月15日までに入院した大腿骨転子下骨折も含む大腿骨近位部骨折患者317人が対象です。うち27人にSARS-CoV-2感染が認められましたが、入院時に有症状だったのは7人だけで、うち1名は1回目のswabでは陰性で2回目検査で陽性になりました。残りの20人は入院時には無症状で、11人は入院後14日以内、9人は14日目以降(!)に陽性になりました。
入院後30日以内に33人が亡くなりましたが、COVID-19と関連する死亡は9人でした。陽性患者では30日生存率が有意に低値でした(陽性患者64.5% vs 陰性患者91.5%; p < 0.001, Log-rank test)。単変量解析で30日以内の死亡に関与するリスク因子は、老齢、男性(OR 2.67)、介護施設在住(OR 2.4)、Nottingham Hip Fracture Score高値、ASA grade増加、保存的治療(OR 9.75)、そしてCOVID-19陽性(difference 5.54; 95% CI 2.25 to 13.67; p < 0.001)で、COVID-19陽性は独立したリスク因子でした。
ロックダウン前に入院したのが160人、ロックダウン後が157人で、患者背景に差はありませんでしたが、ロックダウン後は有意に全身麻酔の症例が減少し、在院日数が短く、また保存的治療を行う患者が多くなる傾向がありました(OR 2.74, 95% CI 0.83 to 9.09; p=0.102)。
このようにCOVID-19の症状以外にも様々な点で影響を受けており、予後を悪くしている可能性がありそうです。


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