リウマチ性疾患および筋骨格系疾患を有しているCOVID-19患者について、その予後が時期によって変化しているかを米国データベースを用いて検討した論文です。Early cohortを2020年1月20日から4月19日までの90日間、late cohortを4月20日から7月19日までの90日間と設定し、それぞれの期間にICD-10でCOVID-19と診断された患者が対象です。Early cohortには2811人、late cohortには5729人が含まれ、PCR検査で診断された患者の割合はearly cohortで43.3%、late cohortで39.5%です。解析に含まれる疾患としては関節リウマチ、脊椎関節炎、SLE、全身性強皮症、皮膚筋炎、多発筋炎、Sjögren症候群、その他の全身性結合織疾患、全身性の血管炎(含ANCA関連血管炎、Behçet病、結節性多発動脈炎、巨細胞性血管炎)、リウマチ性多発筋痛症、痛風ということで、変形性関節症などの整形外科疾患は含まれません。主たる疾患としては痛風38.6%、脊椎関節炎30.2%、関節リウマチ28.7%、その他の全身性結合織疾患17.2%、SLE9.5%、全身性血管炎3.7%などとなっており、early, late cohortで大きな差はありませんでした。平均年齢はそれぞれ62歳(SD16)、60歳(SD17)です。
(結果)重症化の指標であるexposure scoreをmatchさせた状態で、late cohort(2701人) vs early cohort(2701人)を比較したところ、入院率は32.4% vs 45.4%(relative risk [RR] 0.71)であり、late cohortで有意に低率でした。またICU入室リスク 7.9% vs 14.3%(RR 0.56)、人工呼吸器装着 3.6% vs 9.1%(RR 0.39)、死亡 4.5% vs 9.3%(RR 0.48)、これら3つを組み合わせた重症患者 11.4% vs 22.4%(RR 0.51)、さらに血液透析などの腎代替療法が必要となった急性腎障害 も0.6% vs 1.2%(RR 0.53)でいずれもlate cohortで低率でした。またexposure scoreをmatchさせた入院患者(late cohort, early cohortいずれも1089人)のみを対象にした場合もlate cohortで低い重症患者率(30.7% vs 41.3%, RR 0.74)を示しました。Late, early cohortでは使用された治療薬は異なっており、remdesivir(11.0% vs 2.5%)、dexamethasone(24.8% vs 7.3%)とlate cohortで多く、tocilizumabは2.9% vs 3.9%とあまり変わらず、hydroxychloroquineは10.4% vs 43.4%でlate cohortで少数でしたが、このような薬物の使用の差に加えて、恐らく検査能力やsupportive careの改善が予後の改善と関連していたと考えられます。いずれにしてもまだまだ予後良好な疾患とは言えず、引き続きリウマチ性疾患を有するCOVID-19患者には十分な注意が必要そうです。
Jorge et al., Temporal trends in severe COVID-19 outcomes in patients with rheumatic disease: a cohort study. Lancet DOI:https://doi.org/10.1016/S2665-9913(20)30422-7
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