涙活(るいかつ)なら、キャラメルボックス!
いきなり何事だ?!と思われそうですが(笑)今日のキャッチコピーです!
三連休の初日、「演劇集団キャラメルボックス」の舞台を観に行ってまいりました。
公演詳細はこちら
http://www.caramelbox.com/stage/acoustic2014/
私と(生)キャラメルボックス(以下CB)舞台との出会いはたった1ヶ月前。『ヒトミ』の六本木公演でした。
その時の感想→ http://blog.goo.ne.jp/sally_annex/e/3ffdffbd5ba1f75a0f398752a91c8922
この時の心躍る衝撃ですっかりCBのお芝居に魅入られてしまったワタクシ…
ようやく!ようやく!!東京に帰ってきた『ヒトミ』に再会することができました!!!
(2回目なので、あらすじ、設定その他は省略します)
今回CB公演はアコースティックシアター・ダブルフィーチャーと題して、2作品を交互に上演しています。本日マチネの『ヒトミ』は、20年来CBファンという友人との参戦です。そしてCBのホーム、サンシャイン劇場にも初参戦。個人的にはあの2月の印象からどう舞台が変わったのか?公演期間の最終盤、それが一番楽しみでした!
で、どうだったか?
インパクトが全然違う!!!
2014年再々演の『ヒトミ』は、あれから約1か月の公演期間を経て全然違うお芝居に。
受け止める側も違うマインドセットで臨んだせいでしょうか。それにしても私の全神経と感情は初回観たときとはまるで違う反応を示しました。もちろん物語の筋は知っていますが、後半の、とある場面あたりから瞬きすら忘れて見入っているうちに、目に涙が浮かんできました。それでも「零れる」までには至らなかったのですが、あるシーンで「ボロッ」と一筋、涙が私の頬を伝いました。
それからです。
涙があふれて、止まらない。
泣く、とか嗚咽、とかではなく、ただ涙だけが果てしなくポロポロと頬を伝い落ちていく。
そのまま舞台に魅入っていて、涙をぬぐうとかハンカチ出すとか考え付かないほど、ラストまで涙が次々に溢れていくのに任せていました。
そして笑えるシーンでは「泣き笑い」のような顔で、アハハハと声を上げて笑っている自分がいました。
ちなみに、私は舞台を観て毎度感動して泣く、などと言うことはない人間です。どうしても分析と記憶のために感覚を総動員しているようで、先日の『9dQ』はもちろん、『渇いた太陽』も、『真田十勇士』も『ヴォイツェク』も『ROM』も含め、およそ2013年に見た50本を越える全ての舞台の記憶をひっくり返しても「涙を流した」覚えがないのです。(じわっと感動して胸が熱くなることは多々あるのですけどね、それでも流れるほどの涙は出ません!)ひと筋、ふた筋の涙が伝ったのは『蛮幽鬼』と『SHIROH』。しかしこれは映像作品です。
客電がついた後のカーテンコールでの拍手でも、隣に座る友人が涙をぬぐうこちらを見て見ぬふりをしていてくれたのが幸いでした。
あれは何だったんだ?と。
六本木の『ヒトミ』では感動もしたし、胸打たれるシーンや台詞もいっぱいあったけれども、涙を流すことはなかったのです。むしろ晴れやかな気持ちにすらなっていたのに。油断していた?いやいや、そうではないと思います。(笑)
理由として思い当たることはいくつかありました。この1ヶ月ほど、特にこの2週間ほどの「一人何役」という激務や、物理的な休養不足。実際今日は2週間の連勤明けで、ドリンク剤飲んでまで劇場に向かうという「限界に挑戦!」なコンディションでもあり、いろいろと弱っていたのは確かです。そしてもうひとつは、この1か月間、私自身が毎日「自分のすべきこと」「あるべき立場上の役目」「他から期待される役割」「自分の仕事より周囲(チームや部内)のこと優先」そういった理想の値に忠実であろうとするあまり、無理に無理を重ねていた、「引っ張られて限界寸前のゴムバンド」のような張り詰めた精神状態だったこともあったかと思います。
実川さんの演じるスケールアップしたヒトミの姿が、声が、所作が、そんな私のスイッチを押してしまった!(笑)もともと彼女の演じるヒトミの、小動物のような愛らしさ(女性から見ても「守ってあげたい!」)可憐さ、頼りなさ、意地っ張りなところも健気なところも、優しさも、がんばり屋なところも、弱さも、全部全部!「あれを『今』見たら、私がこれまで抑えてきたものが全部堰を切ってしまう!」と危惧していたのが見事に的中!多田さんの小沢くんも「自分の感情を押しつけ過ぎずにヒトミを見守る」あの立ち位置のさじ加減。前回よりもさらに「そばにいるよ」の台詞の重みがガツーンとパワーアップ。そして坂口さんのお母さん(郁代さん)…あの姿、背中!泣きますよ、あれは!!!
クライマックスでヒトミが吐きだす「ほんとうの声」、半年間誰にも言えなかった、彼女の本当の心の声。彼女に向けられる愛情や期待、それが分かっていたからこそ、声を上げられなかった彼女の、血を吐くような叫び。
今でもあの声を、あの表情を思い出すとまた涙が出そうなほどです。
そして「私の身体は事故の前と同じようには二度と戻らない!もう死んでいるのも同じなの!」と衝撃的な台詞を紡ぐヒトミ。(※ハーネスは、運動能力は再生できても麻痺した身体の感覚までは取り戻してくれないのでした)
立つってどういうこと?足の裏に地面を感じ、身体を支えること。それができない。
打ち寄せる波に触れてみて、それが冷たいのか、どうなのかすら分からない。
抱きしめられても、首から下の感覚がない彼女には目を閉じて視覚を断ってしまえば、相手どころか自分さえ「その場から消滅する」。
生きているということは、何という大きな感覚の集合体なんだろう、と。
そして、それらの大部分を失ったヒトミの慟哭と叫びがホールに谺します。
ひとつひとつの台詞が、「生きる」と言うたった一つの動詞にこめられた深い意味を、シンプルな価値を、観る側に伝えてきます。「私にはまだこれがある、あれもある」ヘドロ並みに最低レベルまで荒み凝り固まっていた気持ちが、一つ一つの台詞がヒットする度にピキッと皹が入り、そこから涙が溢れ、こびりついていた何かは一緒にゆっくり剥がれ落ちていくような。
そして毎日「1日が48時間あればいいのに」とまで切羽詰って、ミッションやタスクをあれもこれも山積みし、自分のことは後回し、いつも他を考えなくてはならない、いや「そうあるべきだ」と思い詰めていた自分の「欲張りさ」に気づき、頭を殴られるような衝撃を受けたのも事実です。
ただシンプルに、命あることの価値を、私は忘れていました。
生きているからこそ、より多くを得て生きたいと思っていたある種の傲慢さ(それは決して自分の為だけではないにしても)…自分の1日、24時間に余りにも多くのことを盛り込み過ぎて、疲れ果てて、それでも引き返せなくて、ボロボロに荒んでいた心に突き刺さるヒトミの叫び。
どうしようもなく涙が止まらない私に救いの手を伸ばしてくれたのは、やはりこの人。小沢くんでした。
小沢「何も感じない?でも、お前は潮風の冷たさを感じたんだろ?」
ヒトミ「それは…風は、こっちから寄って行かなくても勝手に来るものだから…」
小沢「だったら!」(ヒトミの頬に手を伸ばして)「俺の手は冷たいか?」
ヒトミ「……あったかい(泣きだす)」
小沢「俺はいつもここにいる。お前が瞳を閉じない限り!」
ちょっとあまりにも涙しすぎてこの場面の台詞をよく覚えていないのですが、この「掌で触れて、存在を確かめる」こと――私はまさしく「大きな何か」を追うあまり、この小さな、でも確かな「感覚」を忘れてしまっていました。小沢君のここ一番のこの台詞が、もう、もう、涙がますます止まらない。そして「私もこの半年、彼女とともにいたんだ」と医師として覚悟とプライドだけでなく「情」も見せる岩城先生。このあたりでもう、座席周囲がみな号泣!(すすり泣きの声がすごかった…)
最後にピアノに触れるヒトミ、それを見て嗚咽するお母さん、慌てて呼びに行く大友先生、視線を交わして微笑みあう岩城先生と佐久間先生。これがまた、泣けました。初回からとんでもなくパワーアップしたあつこさんに最後まで笑いネタをぶっこまれながら(笑)カーテンコールまで、泣き笑いの拍手をしながら何度も涙を指で拭いました。
人前で涙したのは、いつぶりでしょうか。
終演後、すっかり落ちてしまったアイメイクを直して、ロビーのソファでアンケートを書きながら思いました。「涙を流して、くすんでいた心の曇りが一度ゼロクリアになった」またきっと週明けからいろいろ起こって、その度に怒ったり荒んだりするのでしょうが、今日は少なくとも「涙を流す」ことの凄まじいデトックス効果がありました。
友人が「毎回観る側も違う心持ちで臨むから、違う台詞、違うシーンで心の別の部分が揺さぶられて、そこがひとつひとつキレイに浄化されていく舞台なんだよ」と。だから何度か見ると、そのたびに心の表面をみっしり覆っていた黒いヘドロがどんどん浄化されていくんだろうな、と思います。
最近、メンタルヘルスのために「涙活」(涙を流すような内容の映画などを見て感情を開放して、メンタルストレスを軽減する)なんて催しがあるそうですが、どうせなら私的には『ヒトミ』、そして今日のもう一本の上演『あなたがここにいればよかったのに』の、どちらかをオススメしたいと思います。
自分の人生にいろいろ盛り込みすぎて押し潰されて、生きることに疲れてる方には『ヒトミ』を、
他人を思う気持ちの純粋さや、周囲の人間そのものを信じられなくなってる方には『あなたが〜』を処方してさしあげたい♪
きっと、救いのひとかけらが心に舞い降りることでしょう。
☆ ★ ☆
本日夜公演のCB新作『あなたがここにいればよかったのに』については、また後日!
『ヒトミ』についても、また思い出したことは書き足して行こうと思います。
≪追記1≫
上に書いた「あるシーンで『ボロッ』と一筋、涙が私の頬を伝った」場面はどこだと思いますか?実は、岩城先生と佐久間先生がヒトミを追ってホテルにやってくるシーンで「何ムキになってるんですか」「ムキになってなどいない!!!(怒」のところで、その剣幕が可笑しくて笑ってしまった瞬間です!←ずっと堪えていたんですが、何故か爆笑したシーンで涙腺決壊してしまったという。何たる不覚!(笑)
≪追記2≫
シンプルに生きることの価値を再発見する物語、と書きました。付け加えるなら「必死で生きている人にこそ観て欲しい舞台」でもあります。「苦しくても辛くても、今生きているだけで素晴らしい」というメッセージを本当に感じてほしいのは、頑張りすぎて疲れてしまった人。この2時間はきっと忘れられない体験になるはず!
(いったんおしまい)