8月も終わろうとしているのに、35度を超える猛暑が続く。
会場となった高校の駐車場は満車となり、係りの生徒が父兄の車を田んぼの沿道に誘導する。
戦いは既に繰り広げられていた。
土と汗にまみれ、背番号も見えないユニフォーム。
テントの中では、じっとボールを追う瞳がある。
試合を見つめる赤いビブスを着た控えの選手たち。
彼らは、どんな想いでいるのか。
入学以来、2年半。「青春のすべてを賭けた」といえば、大げさだろうか。
高校サッカー選手権 埼玉県予選。この試合に勝てば二次予選に進める。
だが、負ければ3年生にとっては最後の試合となる。
サクリファイス「sacrifice」(近藤史恵:著)という小説を読んでいる。
「sacrifice」は「犠牲」。
エースに勝利をもたらすため、アシストに徹するロードレーサーが主人公。
ロードレースと言えば、「ツール・ド・フランス」が有名だが、この小説を
読めば、そのスポーツが如何にチームスポーツであるかがわかる。しかも、
勝利に徹したスポーツであることが。
エースのために「働く」アシストたちは決して、総合優勝を目指さない。
しかし、それ故、エースはアシストに責任を負う、そして叫ぶ、
「非情にアシストを使い捨て、彼らの思いや勝利への夢を喰らいながら、俺たちは走っているんだ。
・・・自らの足下に累々と積み重ねられたアシストたちの犠牲を、わずかにでも無駄にしないために。」
道を挟んだ向かいのグランドでは野球の試合が行われている。そこでも、熱いまなざしでボールを追う
控えの選手たちがいるはずだ。みんなサクリファイスなのか。
試合のあと、ブログを検索していると、今日の試合の3年生と思われるエントリーがあった。
彼の言葉は、決して「サクリファイス」でないことを証明した。
そのエントリーには、仲間たちへの感謝とシード校と戦う決意があった。
何より、「2年生の力を借りて」という言葉が、彼ら3年生の一体感を物語る。
戦う主体が3年生であることを意識させる。
試合に出る、出ないではなく彼らの「代」が主役であって、足りない力を下級生に借りて戦っているという意識。
彼らすべてが、これで終わるかもしれないという不安を抱え、共に戦っていたのだ。
そうであれば、チームスポーツに「サクリファイス」は存在しないのではないか。
小説的には「sacrifice」がよいのであろうが、「役割、参加、貢献」という意味がある「share」の方がしっくりくる。
彼らは、役割を果たし、参加し、そして貢献しているのだ。
彼らの熱い夏は、いつまでも続いている。
サクリファイス (新潮文庫)
会場となった高校の駐車場は満車となり、係りの生徒が父兄の車を田んぼの沿道に誘導する。
戦いは既に繰り広げられていた。
土と汗にまみれ、背番号も見えないユニフォーム。
テントの中では、じっとボールを追う瞳がある。
試合を見つめる赤いビブスを着た控えの選手たち。
彼らは、どんな想いでいるのか。
入学以来、2年半。「青春のすべてを賭けた」といえば、大げさだろうか。
高校サッカー選手権 埼玉県予選。この試合に勝てば二次予選に進める。
だが、負ければ3年生にとっては最後の試合となる。
サクリファイス「sacrifice」(近藤史恵:著)という小説を読んでいる。
「sacrifice」は「犠牲」。
エースに勝利をもたらすため、アシストに徹するロードレーサーが主人公。
ロードレースと言えば、「ツール・ド・フランス」が有名だが、この小説を
読めば、そのスポーツが如何にチームスポーツであるかがわかる。しかも、
勝利に徹したスポーツであることが。
エースのために「働く」アシストたちは決して、総合優勝を目指さない。
しかし、それ故、エースはアシストに責任を負う、そして叫ぶ、
「非情にアシストを使い捨て、彼らの思いや勝利への夢を喰らいながら、俺たちは走っているんだ。
・・・自らの足下に累々と積み重ねられたアシストたちの犠牲を、わずかにでも無駄にしないために。」
道を挟んだ向かいのグランドでは野球の試合が行われている。そこでも、熱いまなざしでボールを追う
控えの選手たちがいるはずだ。みんなサクリファイスなのか。
試合のあと、ブログを検索していると、今日の試合の3年生と思われるエントリーがあった。
彼の言葉は、決して「サクリファイス」でないことを証明した。
そのエントリーには、仲間たちへの感謝とシード校と戦う決意があった。
何より、「2年生の力を借りて」という言葉が、彼ら3年生の一体感を物語る。
戦う主体が3年生であることを意識させる。
試合に出る、出ないではなく彼らの「代」が主役であって、足りない力を下級生に借りて戦っているという意識。
彼らすべてが、これで終わるかもしれないという不安を抱え、共に戦っていたのだ。
そうであれば、チームスポーツに「サクリファイス」は存在しないのではないか。
小説的には「sacrifice」がよいのであろうが、「役割、参加、貢献」という意味がある「share」の方がしっくりくる。
彼らは、役割を果たし、参加し、そして貢献しているのだ。
彼らの熱い夏は、いつまでも続いている。
サクリファイス (新潮文庫)