労働法の散歩道

yahoo知恵袋で回答していて、繰り返し同じ投稿するロスを減らすために資料室としてもうけました。

1カ月単位の変形労働時間制における労使協定の意義

2018-01-14 10:30:02 | 変形労働時間制

1か月単位の変形労働時間制(もとは4週単位)の後からできた各種変形労働時間制(要労使協定)との整合性?をとるために、1カ月単位の変形労働時間制にも、労使協定締結届け出(こちらは締結は任意、締結したなら届け出は義務)を付けたした制定経緯があるために、なんとも不思議な制度になっています。

正しくは、10人以上の事業場において

・就業規則
・労使協定

10人未満の事業場は上に加えて、

・就業規則にかわる書面

のいずれかにより導入可となります。それぞれ概観すると、

就業規則による場合、変形労働のルールを就業規則に規定し制定(あるいは変更)する手続き(※後述)で導入完結します。就業規則制定もしくは変更につき届け出手続き義務発生しますが、他の変形労働時間制と違い、労使協定は必須ではないのです。

労使協定による場合、締結届け出手続きのほか、上、就業規則の整備が必要です。どうしてかというと、労基法の労使協定は労働条件の定めではなく、使用者触法行為の免罰書面の位置づけであり、労働者を協定内容に従わせるには変形労働時間制による場合の労働条件を就業規則に盛らないといけないからです。変形で働いてもらう始業終業時刻、休憩時間、休日のありかたは、就業規則絶対記載事項でもあるからです。なお、労使協定による場合は、有効期限の定めが必要ですので、期限切れ前に再度協定締結するか、就業規則のみでも存続可能な様態にする必要があります。以上を見るに、一番柔軟なのは、協定によらない就業規則だけによる運用です。

就業規則にかわる書面による場合は、制定書面の周知で完結します。

※補足として、就業規則の制定(変更)は、形式要件としては周知意見書徴取、労基署届け出(10人以上事業所)ですが、労働者不利益変更にあたるので、実質要件である労働契約法に定めた変更手続きをとらないと有効になりません。

就業規則単独で一か月単位を導入できるのに、後付けで労使協定可としたために、それによる場合はなんとも蛇足的な手続きとなります。ただ他の変形労働時間制(ただし清算期間1カ月以内フレックス協定は締結だけで協定届け出不要)も協定と就業規則のペアであるのは同様なのですが、協定締結は必須であり、導入(有効期限のあるものは存続させるの)に協定手続きにおいて常に労働者をかませるのです。そこが1カ月単位のと違うところです。

逆に先に述べた「労使協定とは何か」という視点からみるに、協定せず就業規則で導入できる1か月単位の変形労働時間制はきわだって異色だといえるでしょう(労使協定:法違反行為の免罰書面)。

(2018年1月14日投稿、2025年1月12日編集)

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変形労働時間制とは

1カ月単位と1年単位の変形労働時間制の異同

1年単位の変形労働時間制について

変形労働における時間外労働の把握2

変形労働時間制の時間外労働の把握

変形労働時間制と休日の関係

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変形労働時間制の時間外労働の把握

2017-10-15 09:57:40 | 変形労働時間制

変形労働時間制における時間外労働は、日、週、変形期間の3段階で把握します。

その日の所定労働時間を超えて働いた時間、ただしその日の所定労働時間が8時間以下の日は法定労働時間の8時間を超えて働いた時間 法定休日労働を除く(以下同じ)
その週の所定労働時間を超えて働いた時間、ただしその週の所定労働時間が40時間以下の週は法定労働時間の週40時間を超えて働いた時間 日においてすでに時間外労働とした時間を除く
変形期間 変形期間※における法定労働時間の総枠 ( = 暦日数※ × 40 ÷ 7))を超えて労働した時間 日、週においてすでに時間外労働とした時間を除く

この各段階ではみ出した時間が、時間外労働となります。

注意・(変形)週休制における法定休日労働は、このカウントにいれず、135%割増計算の時間に算入します。一方、法定外休日労働は上の労働時間に算入します。法定休日はいつかについては、別記事に記載したので、ご参照ください。

※変形期間(暦日数):就業規則(労使協定)でさだめた期間
・1か月単位なら、2日~28日、月(28日~31日)

・1年単位なら、月を超え(29日~)、年(平年365日、閏年366日)以内の一定期間を変形期間とする。なお、1年単位における時間外労働は、日・週・年(変形期間)の3段階で把握するのであって、月ごとに把握することはありません。

週の起算については、次に述べるような特定をしていなければ、暦週の日曜にはじまり、土曜に終わる1週間です。ただし変形期間の第1週は1日(起算日)の曜日から土曜日まで、最終週は日曜日から末日(変形期間の最終日)まで、その週の端数日数でもとまる40時間を換算した総枠でもって、上の週40時間を読み替えたうえで、比較します(例:その最終週2日なら2日×40÷7=11.428時間を上の「週40時間」のところに置き換えて比較)。

これとは別に就業規則で次のように規定して週を把握することも可能です。すなわち毎月(変形期間)起算日から7日ごと、たとえば毎月1日起算なら1日~7日、8日~14日、15日~21日、22日~28日、そして29日から始まるそれぞれ1週間とする。この場合は、29日から末日までが、先に述べた端数週となります。この端数週が月末だけしかないため、曜日週でカウントする時間外労働時数と微妙に異なることがあります。なおこの場合でも、(変形)週休制の週の設定は動くことはありません。

このように、変形期間ごとに時間外労働を確定、清算します。

一方、変形労働時間制をとらない通常の法定労働時間における週において、賃金計算期間をまたいでも、第1週は前月の最終週の就労時数データ、たとえば法定休日を満たしたか、日の時間外としていない週累計労働時間といった、週間就労データをひきずってくることになります。同一週だからです。これに対し、変形労働時間制は、変形期間の末日で時間外労働を清算してしまうため、同一週でも次の変形期間の第1週は別週の扱いとし、7日ない週は端数週として扱います。

・変形労働時間制の時間外労働の把握2において、具体的に数字をあげて変形労働時間制における時間外労働の把握を説明しました。

(2017年10月15日投稿、2024年12月30日編集)

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変形労働時間制と休日の関係

2017-10-15 08:01:54 | 変形労働時間制

変形労働時間制と法定休日(週休制・変形週休制)とは別個の制度であって、次に述べる以外、両者の関連は無いです。前者は労働時間の、後者は休日の制度です。後者は

・週休制 1週最低1日の休日(法35条1項)付与を義務付け、こちらが原則。
・変形週休制 4週の起算日を就業規則等に特定することにより、特定4週ごとに最低4休日をもけることで法を満たし、原則である週休制の例外となる(法35条(2)、規12条の2(2))。変形休日制ともいう。

の2つに分けられます。

変形労働時間制と週休制の両者がわずかにかかわるのは、1年単位の変形労働時間制において、週休制をさらに制約した休日設定を求めているところにあります。通常は6連勤を最長とし休日をはさまなければなりません。さらに繁忙期として特定期間を協定にもりこめば、週1日の休日をあたえればよいというのであって、これは週休制そのものです。よって、1年単位の変形労働時間制においては、変形週休制は組めない。(なお、1年単位の変形労働時間制の6連勤における週の刻みは、週休制の起算曜日とは別に、変形期間の初日の曜日とすることに注意。)

また、1か月単位の変形労働時間制を組めば、自動的に変形週休制が適用される、ということもありません。変形期間を4週にしているならともかく、暦月を単位にすれば、4週の区切りとずれていくのが自明であり、労働時間制とは別に、4週ごとに法定休日4日を要求される。月4日と言い換えるのは誤りである。さらに就業規則では4週の起算日の明記を要求されている(労基法規則12の2(2))。任意に区切った4週ではない。起算日の記載がない就業規則の元では、原則の週休制でしかない。

1年単位にしろ、1か月単位の変形労働時間制にしろ、週の起算日は変形期間初日の曜日起算となり、これは労働時間のカウントに用いられる(*)。しかし休日の週は変形労働時間制の初日が何曜日はじまりとなっても、かわることなく同一曜日不変である。よって労働時間をカウントする週と、休日がいつあるのか判別する週区切りとはずれても支障はない。

注意

*週の起算曜日固定で、変形期間の第1週を7日未満で労働時間をカウントすることも可能。この場合の週法定労働時間は、7日未満日数で求まる時間に置き換える。 暦日数×40÷7

以上みてきたとおり、変形労働時間制は労働時間の制度、週休制とは別物です。

(2017年10月15日投稿 2021年4月30日編集)

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