「ピンポーン、ピンポーン、ワイン
の宴、宅急便でーす」「勝手知った
る他人の家、てなことで、勝手に
おじゃましまーす」と、
はなうた歌うように、そんな言葉
を口にしながら、私はブーツを脱
いだ。すでに、弾んでいる。
肉を冷蔵庫に入れ、サラダの準備
をしていると、バスタオルを肩に
かけた正人が近づいてきた。
そして背後から私を、両腕で包
んでくれる。強すぎず、弱すぎ
ず。その力加減を味わっている
と、とても満ち足りた気持ちに
なる。
“アポガドの固さをそっと
確かめるように
抱きしめられるキッチン"