Archaic Smile

私的な備忘録です。

ポスト冷戦(非対称な競争、ゲーム)

2018-09-30 18:31:23 | 時事ネタ


最近の米国議会の報告書で、特定国に対してかもしれないが経済が発展すれば民主化するという考えは誤りだと公式発表されていた。実際そうだと思っていてもはっきり書かれていることが驚きであり、報告書の内容も非常に衝撃的なものだと思う。


冷戦期においては、共産主義に対して資本主義の正当性の根拠として経済的な発展は、重要なファクターだったと思うが、冷戦が終わって相当な月日が流れているが、ここにきてやっとこの考え方に修正がなされたようだ。


自由や民主主義を支持する国家において、やっとポスト冷戦という状況が明確に認識され始めたということなのかもしれない。こういった考え方の修正は、歴史的に見ても非常に大きな転換点だと思う。


レポートにある知財の問題については、被害を受けているのは米国だけではなく、日本でも最近はイチゴやマスカットの新品種が違法に海外に持ち出され、日本も数百億円の損害を被ったと報道されていた。液晶テレビの技術を幹部が海外企業に懇切丁寧に教えて会社が傾いたり、新幹線や電磁鋼板の技術が不本意にも流出してしまったことは記憶に新しい。自由競争のルールを無視した違法な方法で諸外国に技術がわたり、国家の支援を受けてグローバル市場に向けて大量生産が行われ、日本企業は多くの製品で市場から退場を余儀なくされ続けている。競争法の違反どころではない、グローバルマーケットにおいては、一企業では手に負えないレベル(法律の外側?)で公平な競争環境が、ごく普通に毀損されている。


開発費や、さかのぼっては開発に携わる人材の教育のコストを一切かけないで、際どい方法で外国の技術を奪取し、国家の支援のもと、製品単価に開発費が一切かからずに非常に廉価に、また寡占状態のもとでグローバルマーケットに製品を大量に供給する仕組みを、世界は許容している。


日本企業は、国内は人口減少で市場が縮小するので、グローバル市場への進出は当然のように推奨されているが、海外進出で失った損失はめったに報じられず、公平な競争環境などは全く整備されていないネガティブな側面やリスクは、あまり意識されていないように思う。最近ではトランプさんのアメリカファーストにも対応しなくてはいけなくなっている。(話がそれまくりだが、日本やその同盟国にとって損失の程度の低い競争法遵守の優先や、クールジャパンや、つぶれかけの企業が追い込まれてから同業他社を合弁させるような支援をしてる場合ではなく、流出した技術で外国大手に滅ぼされる前に、日本も国家主導でジェネリック手前の技術を、国内同業他社を合従連衡させて廉価で大量生産させてグローバルマーケットに投入しやすくするスキームを、諸外国に先んじてやれないだろうかと思ったりする。国内企業は、グローバルマーケットで敗退する前の成長期は散々競争法で締め上げられ、官需には近づきづらくなるので外国企業に塩を送り、技術も盗られてメタメタにされてから、ガチンコ勝負のビジネスがあまり得意でない政府が支援するのは、非常に非効率な流れのように思う。日本政府が競争法で国内業界を分断せずに特定アジア国が儲けるスキームをジャパンファーストで実現するような仕組みはできないだろうか?)


知財の海外への移転はその違法性が強く意識されるようになっているものの、例えば造船技術や製鉄技術など、過去にも技術を諸外国に移転して国内産業が廃業や縮小に追い込まれたケースは、多々あったように思う。その時代はきっと冷戦の真っ最中で、さきほどの経済の発展が民主化、資本主義陣営への取り込みに寄与するので許容、黙認、むしろ推奨されていたのかもしれない。


経済の発展が民主化につながらないという理由として、現代においてはスマホの存在も大きい気がする。非民主主義国家では、テクノロジーの進歩で個人が簡単に監視され体制に批判的な思想の持ち主は、物理的に排除されてしまう。経済的な発展は新たな富裕層(起業家)やインテリ層をはぐくみ民主化のさきがけとなるのがセオリーと思うが、彼らはスマホを手放すことはなさそうだし、生存を優先するために自由な発言はためらうだろう。大多数の庶民への幸福の最大化みたいな、現既得権益層の体制に批判的な思想の普及は、スマホのAI監視システムによってシャットアウトできてしまう。技術の進歩で簡単に個人が特定されるようになってしまった。失政や大不況など体制に対する責任や批判を多くの人々に伝播させることが、コミュニケーション技術を有した非民主主義的な国家の下では、実質的に不可能になったのかもしれない。


一方、民主主義国家の国民は、言論が自由であるが故に、国民に偽装した競争関係にある諸外国の思想的な誘導を、甘んじて許容せざるを得ない状況になっている。AIの進歩も加速しており(思想への偽装工作を手軽に行える)、民主主義国家の脆弱性として対策を取らないといけないところまで来ているのだろう。ユーチューブで聞いたことのない外国のスターがプロモーションやルールを逸脱した方法で一位になる程度の話どころではない。 


あと実際に大国間で戦争が始まったら、国交がなくなるのだから、貿易も止まるのだろう。米中貿易戦争がエスカレートしているというより、戦争が両国の間でおこったときに、どの程度自国の経済が混乱、問題が発生するのか、いまから予行演習をしているのかもしれない。

コメント
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