公私の多忙さもあって途絶えがちであるが、神社詣でや遠出の参詣もなるべく欠かさないようにしている。特に日課の神仏崇拝の際に霊示を頂いたときは、その時に行けなくても何かそちらの方面に用事が発生したりして詣でる機会ができる。不思議と引き寄せられるのである。
その時も神気がそうさせるのか、ご面談の依頼があり車で出かけた。その帰路、気持ちの良い田園地帯の一本道、市道か町道だろうかに出た。初めての道であったがナビもあることからと、しばしドライブ気分で車を走らせいた。すると前方の農道の出口に人がしゃがみこんでいるのが見えた。この辺は徒歩で移動するような人はいなさそうだ。ほかに車も通っていないのでその人の手前で車を止めた。
降りて近づいて見れば、白装束に菅の笠、小さな厨子を背負った行者姿。聞けばこの先のお宮で待ち合わせをしたのだが、寄り道をしたばかりに次のバスに乗り遅れてしまいしゃがみ込んでいたらしかった。
お宮に着くと信者と思しき人たち十数人が待っていた。
行者を先頭に、拝殿前に整列して拝詞を合唱し丁寧に参拝すると、行者さんがひとしきりこの神社と拝所についての説明をした後「皆さん、竜神さんの拝所に順に御祈願ください」と講者を促した。一行は右手の拝所へ移った。
このお宮さんの拝所をお借りして講者に施法神事を享受するとのとのことだった。私の見学も許された。
講者の方たちはそれぞれ拝所の周りに集まった。私は邪魔にならないよう少し離れたところへ移動した。少し背伸びをしつつ拝所を眺めた時、私は思わず、「オーッ!」と心の中で叫んだ。初めて見る形の拝所である。御阿礼所として岩や樹木などを神霊の座と見立てるのは知っているが、明らかに拝所として作られているのが素晴らしい。崇敬の念が熱い氏子・崇敬者の方に応えるべく神社の方で設立したのだろう。ひっそりと訪れ一心に拝する場所という心遣いが感じられる。四隅に柱を立てしめ縄で囲い、結界として中心に太い柱が立ち神籬としている。そしてその根元には八角形の方位盤が拝してある。
後方で見学していると、講者の方たちはそれぞれのスタイルで柱に向かって念じている。
ある人は絵馬を奉じている。何かお姿のような神札を四隅の柱に貼った人。以前の方だろう用意してきた付箋に願い事が書いてある人、中には名刺を貼っている人もいた。それぞれが自分の願い、思いの丈を四隅の柱に託していた。
休憩しているとき行者さんの許しを得て、講者の方たちに二・三伺っても答えは皆同じだった。ここへ立つと気持ちが明るくなり、自然とやる気が湧く。周りがすっきりしているので心を打ち込めて、ここの気が自分のエネルギーに替わる。と言っていた。お仲間ではなかったが、お礼参りに来ていた方は、三度詣でた後に道が開いたと言ってお礼文を書いたお姿を絵馬に貼っていた。開運に効験があるらしい。霊験あらたかなのだろう。
後で、特別な祈祷とか唱え言葉、作法とかがあるのか行者さんに聴いたが、特別なものはないということだった。ここに立つことが一番重要なことであると言っていた。神社参拝の礼法でよいそうだ。そして、付け加えると重要なのはこの拝所はゴールだということである・・。その言葉は後日解った。
さて、後日調べたことを付け加えると、此処の拝所はその道の人たちには有名なのだそうだ。ことにはお水取りのグループの人達の間で広まったらしい。それが実は此処のゴールに対するスタート、他所のお水取り神社だった。スタートはこの南にあると・・。
この場で行われる神事、竜待ち祭。降臨が願われ、再び昇神が願われる降神・昇神の儀。また、星の宮三光大明神の名の通りかつては農事暦と関係が深い農耕神の神格を持つ月読尊と月齢の月待祭などの講も盛んだったらしい。
講者さん達の参拝が一通り済んだ後、わずかな時間だったが、再び幾つか行者さんに尋ねたことがある。まとめておいた。
まず拝所の御柱の下、根元の八角形の方位盤には二つの矢印が乗っていた。一つは明きの方(恵方)もう一つは竜玉(その年の竜神の坐す方位)を意味するということだった。
ここは飛竜大明神の拝所で、神社本殿の竜の彫刻が珍しかった。本殿の四隅は竜が支えている。神門線を雄の竜が、鬼門線を雌の竜が支えている。また東西の軒下に今にも飛び出さんばかりの竜がいた。飛竜だ。飛竜の彫刻は珍しい。この竜神の彫刻はこの地が豊かな五穀が実る地を表している。人々がそれに感謝してこの竜の彫刻を奉納したのだろう。それゆえこの竜神の効験を疑う者はいない。今でも開運を祈願する人の後が絶えない所以であろう。ご自分の目で確かめていただきたい。
はからずも、行者さんを車に乗せた縁で開運招福の施法を見る機会を得た。見学を許されたので他に話してもよかろうと思うが、活字にする許可はもらってないので直ぐには場所の特定はしない。日ごろ神社歩きや御朱印集めなど御神気浴をされている皆さんの事であるから造作もないはずだ。
次の号で、ご面談の依頼の帰りの所から始めて、場所を特定しこの神事施法を次の号で皆さんに報告できるものと信じている。是非開運招福のご神気浴をしてもらいたい。
つづく
http://blog.goo.ne.jp/seiguh
(神気浴記と冒険譚の初期のバックナンバーは、こちらのブログー1にあります。ただし、こちらは現在稼働しておりません)
http://www.hoshi-net.org/(関連ホームページ 一部工事中)