神主神気浴記

月待講、御神水による服気、除災招福の霊法、占などについて不定期でお話します。
神山の不思議な物語の伝えは継続します。

神占(かみうら)星宮之垣

2014年10月11日 | 伝え
神気と占いの神秘


 神社を参拝した後にお神籤を引きます。占うわけです。「お・み・くじ」御(お)御(み)崇敬の念が込められた呼称です。それは神様の尊い神意であるからです。もともと「占う」とは天意を問うことです。自然現象や天体の運行の中に天の意志を求めたのです。いつ種を蒔けばいいのかを知るために暦を作り、収穫の豊穣を祈りつつ、その期待に対する神意をうかがったのでした。

 やがて、この自然現象や天体の運行を文字で表せるようになり、自然の循環が配当されると、この文字の組み合わせから神意を汲み取ろうとするようになりました。また、現象・事象そのものからも汲み取るようになりました。煮たり沸かしたりした、お釜の鳴る音。放たれた矢が何処に当たったかなどなどいろいろです。
 このように時の吉凶を、また天の意志を神意として汲み取り、子々孫々に語り継いでいく内に、やがてそれは個人の占いとしても定着するようになりました。ご神気の中で得たご神意によって安心立命を願ったのです。

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津守の長アカタリ    53

2014年10月11日 | 幻想譚
 流れに沿って進むうちに岸辺の木々が少し低くなり、森の広がりが見渡せるようになった。しかし、かえって眩しさが増してきた。もうまともに目を開けているのが辛いと思った時、
飛から横長の板切れを手渡された。えっと思って飛を見ると、彼はすでにそれを顔に着けていた。
 「みなさん、これを掛けてください」飛が皆に木片を渡している。
 「なるほど、これなら眩しさ半減、いやそれ以上だ。お前が前を向いてて気が付かなかったが、それですいすいと進めたのか!」
 「先生、先ほど海人衆が渡してくれたんです。美美長からのプレゼントだそうです」
 それはエスキモーが用いたゴーグルで、木の板に薄い覗き穴が空いている。彼らが雪中行動する際に着用する遮光器のような形をしている。さすが美美長は北方民族、怠りはなかった
。久地をはじめ皆心の中で感心しきりだった。

 木立の中にまばらではあるが、建物らしきものの屋根が見え始めた。茅葺きの屋根だろうか丸い屋根は傘をさしているように見えた。
 岸辺に少し開けたところが見えてきた。津辺か?
 「先生、あそこを見てください。スクナビの神あれですか、津は?」飛が前方左を指さして言った。
 「そうだ、あれがウマシ国の津辺だ。確か右の津辺と呼んでいた。表門というところだ」
 「へぇー、ということは裏門もあるんですか?」
 「あるらしかった。隠れ津辺と呼ばれているものもあった」
 ーそれにしてもこの木片は良く見えるな~。あの時これがあれば眼を痛めずに済んだものを・・ースクナビがつぶやいた。

 津は一定の間口のある入り江になっている。正面へ来てから雲の向きを変えて眺めると、ある程度の奥行きがあり中央には桟橋が2本並んでいる。両側も船溜まりだ。ちょっとした大きめのマリーナという感じだった。
 スクナビの神が右手の人差し指で津辺を指し、左の掌を下に向けてゆっくりと降ろした。飛はその合図にしたがって、いったん雲を前に進めて入り江の中に入れ、それからゆっくりと降下させた。
 小振りな円筒形の小さな縞模様の建物から人が出て来て、こっちを見上げている。

 「津守の衛士、吾れはスクナビと申す。以前訪れた大神の岳に住むスサの神スクナビじゃ。また参ったと津守の長にお伝え願いたい」雲から下に向かって声をかけた。
 衛士は、ひっくり返らんばかりにのけぞって、手をかざして雲を見上げていたが、慌てて津の奥に走って行った。
 「飛の猛、吾れと久地の尊を降ろしてくれ。そしたら他の船を迎えに出てくれ」
 「大丈夫ですかスクナビの神?我らが同道しなくても」
 「大丈夫だ。吾れが先に津守の長と話をしておく。タニグ、汝は飛の猛を手伝ってくれ」
 「承知した」
雲は二人を降ろすと再び飛び立ってその場を離れ、津の外へ向かった。

 少し流れをさかのぼると、海人たちの四隻が隊列をなしてこちらに航行してきていた。
 「龍二、こちらの雲が見えるか? ここの真下の津辺に入って降りてくれ。俺たちは四隻を波止場に配船してから降りる。久地先生とスクナビの神がすでに降りている」
 「飛、了解した」
 「飛の猛、津の中には五色の亀はいなさそうだ」
 「わかりました、ではそのことも伝えましょう。タニグの神は元々カエルの姿をしておられたと言ってましたから水の中は詳しいですね。」
 「あの時は、正しくは変身させられてしまってたが・・」
 雲はゆっくりと先頭の海人の船の真上に浮かんだ。


 先ほどの見張りの衛士が数人の者と戻ってきた。
 「津守の長、アカタリ。その節は世話になった。吾れだ、スクナビだ!」
 「オー、あのときの~、覚えておるぞスクナビの神」
 「吾れが下都世界で乱気流に巻き込まれ、間違って天橋立に迷い込んでしまった。挙げ句に仙郷ハバの海に乗り入れてしまい、気が付いたときは津守の長である汝の前であった。見廻り船に助け上げられたと後から聞かされた」
 「そうだ、女王テルタヘに謁見が許され、その後下の世界に戻っていったのであったな」
 「その時、帰りの近道である秘密の水路を使って、ワダツミ神の使いの五色の亀の処へと案内してくれたのも汝であった」
 「よう覚えとるとも。これを肌身離さず持っておる」と言って、津守は腰に下げている渓流鉈こしらえの短剣を取り出した。
「それは、ここを離れるときにお礼に汝に渡したものだったな」
 「このようなマホラの業物はここには無い。吾れの宝じゃ。ところでスクナビの神、こ度はまた何用じゃ。しかも船団を組んでまいるとは?」
 「こちらは下都国大耶の大元神の使わせし神、久地の尊だ。この神たちの助力を得てアダシ国のワルサと妖怪どもを追ってまいった」
 「えっ、なんじゃと。アダシ国のワルサを・・」
 「そうだ、スサの大神と八人の天女、それに匠たちがアダシ国のワルサと妖怪どもに拉致されてしまったのだ」
 「そうか、そうであったか。あの件を話しておかなければなるまいて・・」


 飛の七重雲と龍二の九重雲がゆっくりと津辺に降り立ち浮かんでいる。
 中央の桟橋には、それぞれ海人と和邇の船が並んでいる。両側の船溜まりには、それぞれ耶須良衣と美美長比古の船が入った。 
 ひとまず主だった者が津守の長の官舎に案内された。
 津守の長の左へ、久地、本宮、飛、龍二、都賀里、於爾、於爾加美毘売が、右へスクナビの神、タニグの神、クエビの神、海人猛、和邇猛、左母里の耶須良衣と美美長族の美美長比古、それぞれが紹介されて着座した。

 タニグの神が、改めて経緯を話した。
 「あれで裏国のワルサ王は知ったのか?」
 「どういう事か? アカタリ」
 「あの時謁見の時だ、スクナビの神は女王テルタヘに詫びと礼を兼て一振りのミハカシを献上した」
 「そうだ、吾れが帯同していた剣を献上した。それがどうかしたか」
 「汝の話で分かった。ワルサは下都国の八岳の真砂土から採れるスサを用いると、マホラの剣をかたづくることが出来る事を知ったのだ」
 「なんとなく分かったが・・」
 「女王が、武部の長イトフに汝のミハカシを試させたのだ。イトフは一振りでツヌを切り落とした。汝のミカハシのようなマホラの業物はここには無い。一同皆、その鋭さに度肝を抜かれた」
 「何を切り落としたというのですか? スクナビの神」飛がスクナビに確かめた。
 「石のように硬い角だそうだ」
 「吾れらが太刀では、滑るか刃こぼれして切ることはできない。それで、女王テルタヘはツヌギリの剣と名付けたのじゃ」
 「そうであったか」
 「思うにこの一件が、この表国ウマシに潜む裏国アダシの密偵の口から向こうへ伝わったのだ。予てより、この表国ウマシ国の仙都アカルタヘの奪取を虎視眈々ともくろんでいたアダシ国の王ワルサが、仙都アラタヘで行動を起こしたのだ。それがこの天都国にはない業物を武器として手に入れることだったのだろう。確かにアラタヘの一行が薬を探しにと言って、下都国を訪れている。大きな長持ちをいくつも携えて戻ってきた。あれがこの事であったのか・・」
 「津守の長、テルタヘ女王にアラタヘへ行く通行許可を願い出たいのだが・・」
 「よし、女王にこの事を伝えねばなるまい。早速、武部の長イトフに報告しようぞ。武部の長には汝も会っておる」

つづく
 


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