耶須良衣が薄暗い船倉に降りていく。
飛と龍二がそれに続き、美美長比古も従い狭い梯子を伝わって下へ降りた。船倉といっても部屋は小さい。
「まずは見てもらいたい。爾田の族長からの預かり物も一緒に持参した」そう言って耶須良衣が覆いを取り除いた。
「オー!」飛と龍二が声を上げた。
「真砂土はまれにみる良質であった。鍛えた剣は軽くて強靭なものに仕上がった。吾れらには必要な物だ。ここもきっと無くてはならぬ物となる」耶須良衣の言葉に美美長がうなずいている。
食糧増産の農具とは別に、生きてゆくためにはもう一つの場面で力を発揮する必要不可欠な物があった。
飛と龍二は黒金への執着を理解した。
船底には、黒光りする剣、鉾、槍、楯、弓矢が整然とならんでした。
「この二振りは、海人の猛、和邇の猛に爾田の族長からだ」
「承知した。久地の尊から渡してもらおう。それにしても絶妙なバランスだ。短期間で習得する技はさすが於呂知だ」
飛は短めの剣を受け取り、感嘆していた。
「次は、吾れの方も見てもらいたい」と美美長比古が言った。
四人は甲板に出て美美長の舟に乗り移った。
美美長の船は戦闘用を兼ねているのだろう、以前に見たものより一層精悍さを増していた。
船足はかなり速そうだ。背は前のものより低くなってると感じた。交易船というよりレース艇を彷彿とさせると二人は思った。
この二隻が現れたとき、海人と和爾はきっと興奮したに違いない。
あんのじょう、二人がこの渡来の民の造船の技に感嘆したと、後に聞いた。また、比衣豆の浜での出来事が武器などの改良に、このようにして現れると美美長が説明したそうだった。
耶須良衣の船より少し狭い船倉に降りると、美美長が覆いを取り除いた。
飛や龍二にはそれほど違和感のない物だったが、なるほど美美長の言うとおりだと思った。
厳寒の中でも騎馬で疾走するので耳当てで凍傷から耳を守るなど、その姿がリアルに想像できる物だった。
都賀里や於爾たちには初めて手に取る物だろう。しかし、美美長族がすでに交易で遊牧民から手に入れているとは思いもよらなかった。
そこには膝丈ぐらいの長さの半襟の付いた打ち合わせの衣服が積まれてあった。ところが手に取ってみて、その素材に驚かされた。一つはガーゼの寝巻のようだ。しかし、ガーゼといってもあんなに薄くはない。厚みがあって柔らかく温かそうだ。龍二が驚いたのはもう一つの方だ。目がつんでいて厚みがある。これは間違いなくウール、羊毛だ。フェルトではない、織物だった。昔、おしゃれな家の爺さんが着ていたっけ、そうだ、ホームスパンとか言ってた・・。
「これなら温かい。しかもこの組み合わせなら恰好が良さそうだ。なぁ飛、俺は気に入ったぞ」
「初めて耶須良衣にあったとき、絹をまとった洒落たキザな奴だと思ったが、交易は新しい文化をもたらすことが此処ではよく解る」
「一組持って行き尊たちに見てもらおう」
四人で手分けして見本分を運び出し、台に戻った。
つづく
飛と龍二がそれに続き、美美長比古も従い狭い梯子を伝わって下へ降りた。船倉といっても部屋は小さい。
「まずは見てもらいたい。爾田の族長からの預かり物も一緒に持参した」そう言って耶須良衣が覆いを取り除いた。
「オー!」飛と龍二が声を上げた。
「真砂土はまれにみる良質であった。鍛えた剣は軽くて強靭なものに仕上がった。吾れらには必要な物だ。ここもきっと無くてはならぬ物となる」耶須良衣の言葉に美美長がうなずいている。
食糧増産の農具とは別に、生きてゆくためにはもう一つの場面で力を発揮する必要不可欠な物があった。
飛と龍二は黒金への執着を理解した。
船底には、黒光りする剣、鉾、槍、楯、弓矢が整然とならんでした。
「この二振りは、海人の猛、和邇の猛に爾田の族長からだ」
「承知した。久地の尊から渡してもらおう。それにしても絶妙なバランスだ。短期間で習得する技はさすが於呂知だ」
飛は短めの剣を受け取り、感嘆していた。
「次は、吾れの方も見てもらいたい」と美美長比古が言った。
四人は甲板に出て美美長の舟に乗り移った。
美美長の船は戦闘用を兼ねているのだろう、以前に見たものより一層精悍さを増していた。
船足はかなり速そうだ。背は前のものより低くなってると感じた。交易船というよりレース艇を彷彿とさせると二人は思った。
この二隻が現れたとき、海人と和爾はきっと興奮したに違いない。
あんのじょう、二人がこの渡来の民の造船の技に感嘆したと、後に聞いた。また、比衣豆の浜での出来事が武器などの改良に、このようにして現れると美美長が説明したそうだった。
耶須良衣の船より少し狭い船倉に降りると、美美長が覆いを取り除いた。
飛や龍二にはそれほど違和感のない物だったが、なるほど美美長の言うとおりだと思った。
厳寒の中でも騎馬で疾走するので耳当てで凍傷から耳を守るなど、その姿がリアルに想像できる物だった。
都賀里や於爾たちには初めて手に取る物だろう。しかし、美美長族がすでに交易で遊牧民から手に入れているとは思いもよらなかった。
そこには膝丈ぐらいの長さの半襟の付いた打ち合わせの衣服が積まれてあった。ところが手に取ってみて、その素材に驚かされた。一つはガーゼの寝巻のようだ。しかし、ガーゼといってもあんなに薄くはない。厚みがあって柔らかく温かそうだ。龍二が驚いたのはもう一つの方だ。目がつんでいて厚みがある。これは間違いなくウール、羊毛だ。フェルトではない、織物だった。昔、おしゃれな家の爺さんが着ていたっけ、そうだ、ホームスパンとか言ってた・・。
「これなら温かい。しかもこの組み合わせなら恰好が良さそうだ。なぁ飛、俺は気に入ったぞ」
「初めて耶須良衣にあったとき、絹をまとった洒落たキザな奴だと思ったが、交易は新しい文化をもたらすことが此処ではよく解る」
「一組持って行き尊たちに見てもらおう」
四人で手分けして見本分を運び出し、台に戻った。
つづく