耶須良衣と美美長が運んできてくれた物資をひと通り点検し、都賀里に着装させてみた。
それを見ていたクエビの神が・・「吾れの想像を超えるモノだ。見るからにアラタエより丈夫で温かそうだ!」
「それでは神たちをはじめて、天橋立がいつ現れても良いように直ちに出航準備に入る。先ほど気吹きの流れの様子を観ていたスクナビの神が、これは近いと言っていた。科戸の強い風が吹くのだろう・・。飛、龍二君。於爾と都賀里で編成の伝達は済ませたか?」
「はい、終わっております久地先生。於爾と都賀里、吾れらと一緒に船へ行ってくれ。最後のチェックだ」
左の船長 海人猛、左の司 於爾、於爾加美毘売、衛士
右の船長 和邇猛、右の司 都賀里、衛士
美美長
耶須良衣
七重雲 久地、飛 スクナビの神、クエビの神
九重雲 本宮、龍二、タニグの神
この編成で出発することになっている。
その夜、スクナビの神の予測通り科戸の風が吹き始めた。
やがて、陽の落ちた西の空に渦雲が現れ、その雲と雲がどんどん重なり合ってあちこちで渦を巻いている。
「よし、これなら明朝に出立できるだろう。今の内に身体を休めておき、明日に備えておくがよかろう」
スクナビの神が言った。
「では、全員支度が出来次第、早めに休め。於爾と都賀里、海衆・衛士たち全員に知らしめよ」
久地がそう言うと、海人と和邇を呼んだ。
「スクナビの神から操船についてマガヒ無きよう教わったか」
「荒ぶる海のごとくと承りました」
「よし、頼んだぞ。早く休んでくれ」
「わかりました。点検してから休みます」
ピュウー、ピュウー、ピッピ、ピッピ、ピッピ・・。ピュウー、ピュウー、ピッピ、ピッピ、ピッピ・・。
久地は鋭い笛の音で目が覚めた。
同じくして、ボー、ボゥ、ボゥ、ボー、ボゥ、ボゥ、ボーボー。ほら貝が鳴った。
台に出ると、眼の前の海上に巨大な雲の橋が現れていた。
-これかぁ、デカイな~-
眼下では海人衆と和邇衆たちがスクナビとクエビの指図で忙しく出航の準備を整えていた。
笛は美美長の船から、ほら貝は海人の船からの出航準備完了の合図らしい。
久地と本宮は直ちに下へ降りた。その後ろから七重と九重がゆっくりと移動してきた。
「それではスクナビの神、お願いします」
「では、直ちに出立する。海人、和邇、美美長、耶須良衣の順に進む」
スクナビの神が手を挙げて出航の合図を送った。
スクナビの神が七重雲に戻ると「吾らは先頭です。九重にはしんがりをお願いしてあります。では飛の猛、耶須良衣の船が雲に入ったのを見届けてから出発してください」
「承知しました」飛が勢いよく応えた。
海人の船が雲の橋に向かって動き出した。
巨大な帯状の雲が天空から海に向かって斜めに降りて来ていて、坂を造っていた。
船は、この巨大な雲の坂に近づくにつれ速度が速くなっている。
雲の橋の手前で、船が帆を全部張り終えた。
と同時に、天に昇る気吹き放ちてむ、船は一気に雲の中に吸い込まれた。
「すごいな~、これが天橋立か!」久地が感嘆して言った。
「そうだ、気吹きが放たれたら、その流れにまかせる事だ。海人の猛の船を操る技は真秀の技だ、他の船もきっと見習うだろう」
「吾れらは海人の船の先を行く。飛の猛、一気に雲の橋の上を飛んでくれ。気吹きの流れの速さでたのむ」
「わかりました」
しばらくは雲の道をたどって進んだ。
そうこうする内に、眼下の雲の橋の上に海人の船が勢いよく飛び出してきた。やがて、次々と船が飛び出して来て、4隻が縦に連なって船団を組み、雲の海道を航行した。
その後方の上空には九重雲が浮かんでいる。
つづく
それを見ていたクエビの神が・・「吾れの想像を超えるモノだ。見るからにアラタエより丈夫で温かそうだ!」
「それでは神たちをはじめて、天橋立がいつ現れても良いように直ちに出航準備に入る。先ほど気吹きの流れの様子を観ていたスクナビの神が、これは近いと言っていた。科戸の強い風が吹くのだろう・・。飛、龍二君。於爾と都賀里で編成の伝達は済ませたか?」
「はい、終わっております久地先生。於爾と都賀里、吾れらと一緒に船へ行ってくれ。最後のチェックだ」
左の船長 海人猛、左の司 於爾、於爾加美毘売、衛士
右の船長 和邇猛、右の司 都賀里、衛士
美美長
耶須良衣
七重雲 久地、飛 スクナビの神、クエビの神
九重雲 本宮、龍二、タニグの神
この編成で出発することになっている。
その夜、スクナビの神の予測通り科戸の風が吹き始めた。
やがて、陽の落ちた西の空に渦雲が現れ、その雲と雲がどんどん重なり合ってあちこちで渦を巻いている。
「よし、これなら明朝に出立できるだろう。今の内に身体を休めておき、明日に備えておくがよかろう」
スクナビの神が言った。
「では、全員支度が出来次第、早めに休め。於爾と都賀里、海衆・衛士たち全員に知らしめよ」
久地がそう言うと、海人と和邇を呼んだ。
「スクナビの神から操船についてマガヒ無きよう教わったか」
「荒ぶる海のごとくと承りました」
「よし、頼んだぞ。早く休んでくれ」
「わかりました。点検してから休みます」
ピュウー、ピュウー、ピッピ、ピッピ、ピッピ・・。ピュウー、ピュウー、ピッピ、ピッピ、ピッピ・・。
久地は鋭い笛の音で目が覚めた。
同じくして、ボー、ボゥ、ボゥ、ボー、ボゥ、ボゥ、ボーボー。ほら貝が鳴った。
台に出ると、眼の前の海上に巨大な雲の橋が現れていた。
-これかぁ、デカイな~-
眼下では海人衆と和邇衆たちがスクナビとクエビの指図で忙しく出航の準備を整えていた。
笛は美美長の船から、ほら貝は海人の船からの出航準備完了の合図らしい。
久地と本宮は直ちに下へ降りた。その後ろから七重と九重がゆっくりと移動してきた。
「それではスクナビの神、お願いします」
「では、直ちに出立する。海人、和邇、美美長、耶須良衣の順に進む」
スクナビの神が手を挙げて出航の合図を送った。
スクナビの神が七重雲に戻ると「吾らは先頭です。九重にはしんがりをお願いしてあります。では飛の猛、耶須良衣の船が雲に入ったのを見届けてから出発してください」
「承知しました」飛が勢いよく応えた。
海人の船が雲の橋に向かって動き出した。
巨大な帯状の雲が天空から海に向かって斜めに降りて来ていて、坂を造っていた。
船は、この巨大な雲の坂に近づくにつれ速度が速くなっている。
雲の橋の手前で、船が帆を全部張り終えた。
と同時に、天に昇る気吹き放ちてむ、船は一気に雲の中に吸い込まれた。
「すごいな~、これが天橋立か!」久地が感嘆して言った。
「そうだ、気吹きが放たれたら、その流れにまかせる事だ。海人の猛の船を操る技は真秀の技だ、他の船もきっと見習うだろう」
「吾れらは海人の船の先を行く。飛の猛、一気に雲の橋の上を飛んでくれ。気吹きの流れの速さでたのむ」
「わかりました」
しばらくは雲の道をたどって進んだ。
そうこうする内に、眼下の雲の橋の上に海人の船が勢いよく飛び出してきた。やがて、次々と船が飛び出して来て、4隻が縦に連なって船団を組み、雲の海道を航行した。
その後方の上空には九重雲が浮かんでいる。
つづく