1992年(平成4年)に奥村遊機(モナコ)から登場した一般電役「クレイジーホース」
★新要件機
★賞球…7&15
★デジタル確率…1/225
★図柄…A、2~9、0、J、Q、K、¥、$の3つ揃い(15通り)
★デジタルが揃ったら右打ち。3つの電チューと2回開きチューリップの連動で、出玉を稼ぐ
★出玉…釘調整、電チュー空振り等で変動したが、平均すれば4000発~4300発(出玉は多め)
★大当り中のBGM=「静かな湖畔」(スイス民謡、一発台のスーパーコンビと同じ)
★大当り中、出玉を増やす「小技」があった(後述)
★当時の実戦店…都内の活動エリアでは、割とよく見かけた記憶あり。
特に、新宿・西口大ガード前の「ニューミヤコセンター」と、はす向かいの「ジャンボ」双方に入っており、交差点を挟んで本機の「ハシゴ」に励んだ事もある。ジャンボの本機のシマは無制限で釘はシブく、一回交換のニューミヤコの方が当然ながら釘も甘かった(但し、先に撤去したのもニューミヤコ)。
因みに、当時のスロットシマは、ニューミヤコがムサシIIで、ジャンボ(地下)がスーバニ、コンチIII、コンチIIだった。
(在りし日の新宿ニューミヤコセンター) (新宿ジャンボは現存)
※跡地は「カレイド」
名機「ドリームX」や、新要件初期の確変機「ドリームEX」(後継機は「ドリームZ」)、3回権利物「スーパースター」等を彷彿とさせる、奥村お馴染みの、赤い小さなドットマトリクスが特徴。なんで、あんなに控え目で小さなデジタルなのに、ビシッと揃うと液晶機よりも「感動」が強かったのだろうか…(遠い目)。
機種名の「クレイジーホース」は、パリの老舗ナイトクラブの名前とか、インディアンの酋長の名前とか、「暴れ馬」とか、色んな意味がある。盤面デザインも、何気にアバンギャルドな雰囲気が漂って香ばしかった。「Monako」の筆記体ロゴも、シンプルだがカッコ良かったな…。
本機のゲーム性は、大一の大ヒット一般電役「フルーツパンチ」と同様、メインデジタルが揃ったら右打ちして、電チュー等の連動で出玉を稼ぐタイプ。しかも、出玉は2回権利物並み(4000発オーバー)というボリューム感があった(もちろん、釘にもよるが)。
さらに、大当り確率は「1/225」とデジパチ並みで、出玉が多い割には良心的な数値だった。
まぁ、スペック的には「甘い」ように思えたが、その分、ヘソをガッツリ締める店も多かった(ただ、ストロークを強めにして右サイドから狙うと、妙に回りが良くなる台もあった)。
また、ヘソが通過式(スルー)で戻しがなく、玉持ちは非常に悪かった。一応、ヘソ下に「7個」戻しの入賞口があったが、ここもキッチリ締められるケースが目立った。
上記「ニューミヤコ」では、ヘソ下の入賞率が良い台に遭遇することも稀にあったが、ライバルの「ジャンボ」はハッキリと戻しの命釘をシメていた。
(リーチアクション)
当時、奥村のデジタル台といえば、シンプルなリーチが多く(それがウリでもあった)、明確なロングリーチ(SPリーチ)と類別できるものは、まだ存在しなかった(結果として、移行コマ数が多いのはあったが…)。
本機は、奥村初となる「ロングリーチ」を搭載した、記念すべき機種である。後に出た「ギャラクシー」(1994年、3回権利)やスーパーカブキ3(1995年、3回権利)といったアツいロングリーチの礎は、まさに本機だった訳だ。
デジタル停止順は、「左⇒中⇒右」。左・中テンパイでリーチとなり、右デジは速度を落としてスクロール。
この時、右が2周以内で止まる「ノーマルリーチ」と、3周目に突入する「ロングリーチ」があった。ノーマルのまま当る事もあったが、ロング発展時は期待度も高かった。
ロングに入ると、大当り若しくは前後1コマでしか停止しない。また、当る時は、右デジが直接大当り図柄で停止するパターン以外に、大当り数コマ手前(最大4コマ手前だったか…)で一旦ハズれて、スルッと再始動して当るケースがあった。この再始動は「鉄板」アクションで、本機で最もアツい瞬間といえた。
(大当り中)
メインデジタルが揃ったら、「右打ち」に切り替える。
盤面右サイドには、上から「電チューA」、「2回開きチューリップX」、「電チューB」、「電チューC」と、計4つのチューリップがある(下図を参照)。
大当り中は、右打ちでこの4つを連動させて、出玉を増やしていく訳だ。
(盤面右サイドの概要)
デジタルが揃うと、まず右上(上段)の電チューAが、1.8秒×3回の開放を行う。デジタルが揃った後、Aが開くまで少々タイムラグがある為、止打ちで節玉できた。同時に、玉切れ「パンク」も要注意だった。
実際、デジタルが当って玉切れに気付く客もおり、慌てて隣の人の上皿に手を伸ばし、半ば強引に玉を借りる(奪う)光景も、しばしば目撃した。まぁ、自分の場合、必ず100円玉1枚を手元に残していたので、そんな事はなかったが…。隣のオヤジが玉切れで慌てていれば、無言で上皿に補給する事に、何の抵抗もなかった(玉を返すそぶりすら見せない、図々しいヤツもいたけどね…)。
電チューAに1個入ると、下の2回開きチューリップX(電チューではない)がAと連動して開放。右打ち全開なら、Aが一旦閉鎖した時、Xに2個入る。2個入賞で、Xはいったん閉じる。
上記の要領で、「A開放→A入賞(1.8秒で閉鎖)→X開放⇒X2個入賞(即閉鎖)→A開放…」の連動を、計3回繰り返す。結果、2回開きチューリップXに計6個入賞する(このうち、5個入賞分が下の電チューBにメモリーされる。Xの入賞総数が4個以下だと、出玉は大きく減る。詳細は後述)。これが、大当り序盤のチューリップの動きである。
さて、2回開きチューリップXに1個入ると、下の電チューBに内蔵された2ケタ小デジタルが変動を開始。小デジに「00」以外が出れば当選で、Bは2.8秒×2回の開放を行う。なお、「00」の出現率(空振り)は1/225と低い。224/225の高確率で電チューBは開くが、稀に外れると出玉は減る。また、Bの小デジにはXへの入賞を記憶する保留ランプが4つあり、Xが計5個拾った時点で保留は満タンとなる。
電チューBに1個玉が入ると、最下部の電チューCの2ケタ小デジタルが変動を開始。やはり、「00」以外なら当選で、Cは5.8秒×1回の開放を行う。Cの小デジにも、B入賞を記憶する保留ランプが4つある。Bは「2.8秒×2回」開放だから楽に5個入賞するので、Cの保留も満タンになり易い。以下、全保留を消化し終わるまで、Cは最大5回の開放を行う。
Cの開放が終わると、Bの保留が1つ消えて、2回目の開放が始まる(2.8秒×2回)。同様に、Cも計5回の開放を再び行う(5.8秒×1回×5回)。
こうして、Bの保留が全て消化し終わるまで、BとCは延々と連動を行う仕組みだ。
保留の全灯に失敗せず、小デジも「空振り」しなかった場合、電チューBは合計で「10回」開く。
(2回(×2.8秒)×Xへの入賞5個(現在回転中+保留4個=5個))。
よって、2.8秒×2回の開放で、1回の開放当たり平均4個入賞の場合、Bのみで稼ぐ出玉は、
10(回開放)×4(個入賞)×15(賞球)=600発となる。
同様に、電チューCは合計で「25回」開放する※。
(1回(×5.8秒)×Bへの入賞5個×Bのメモリー5つ)
※但し、Bの2回目開放のタイミング(正確な時間を失念…)によっては、25回以上の開放だった可能性もある。この点、文末の「追記の追記」を参照。
よって、5.8秒開放で平均9個入賞の場合、Cのみで稼ぐ出玉は
25(回開放)×9(個入賞)×15(賞球)=3375発となる。
すなわち、BとCの連動で、600+3375=3975個の大量出玉となる訳だ。
これに、電チューA及び2回開きチューリップX(共に7個戻し)への入賞分を加えれば、容易に4000発を越える。この出玉の多さも、本機のウリの1つであった。
もちろん、電チューの拾いは良し悪しがあって、電チュー周辺の釘次第で出玉は大きく増減した。
(4500発の時もあるし、4000発を切る事もあった)
また、運悪く小デジが1回空振りすると(小デジ停止時の1/225で発生)、当然に出玉はロスとなる。
電チューCの空振りは大して痛くもないが、Bが空振りすると大幅な出玉減となって痛かった。
(大当り中に出玉を増やす「小技」)
上記の通り、大当り中、電チューAが玉を1個拾うと、連動して2回開きチューリップXが開く。
Aは合計3回開くので、Xには「6個」(2個×3)の入賞が可能となっていた。
(Xへの入賞が4個以下だと、Bの連動が減って出玉減となる)
一方、Xの下にある電チューBはメモリーが「4個」しかなく、現在回転中と保留を合わせても、Xへの入賞個数は「最大5個」までしか反映されない。
(Xに6個目が入賞しても、Bは既に保留満タンなので「無効」となる)
そこで、Aが2回目の開放を行い、Xが2個目(累計で4個目)の玉を拾って閉鎖したら、すかさずストロークを「右打ち全開」から「やや弱め」に切り替え、盤面右上の「風車」付近(盤面上部「Monako」の大きな筆記体ロゴの「ko」の辺り)を狙う。
うまくいけば、Aの開放3回目に、Xに5~6個目の玉を入れずに(Xは開放したまま)、電チューB、Cの連動が始まる(この時、Bのメモリー点灯は3個)。そして、連動が進んでBのメモリーが1つ消えた瞬間(メモリー点灯数は2個になる)、再び右打ち全開に戻して、開いたままのXに2個入れれば、Bのメモリーは2個追加されて満タンになる。
結果、普通に打ち続けるよりも、Bの開放回数が1セット分(2.8秒×2)増えるのだ
(Xへの6個目入賞を有効にする手法)。当然に、Bが1回多く開放すれば、下のCも多く開くので出玉は増える。電チュー周りの釘によっては「5000発越え」も可能な、大変オイシイ「小技」であった。
但し、ストロークを弱めにして右風車を狙っても、必ずしもXへの入賞を回避できた訳ではない。
(釘によっては、弱めに打ってもチューリップの左サイドからXに飛びこむケースもあったから)
それでも、リスクは少なく「やった方が得」だった事は確かで、ダメ元チャレンジの価値は、大いにあった。
(ダブル狙い)
本機については、「大当り中、デジタル確率がアップする」との説が、まことしやかに流れた事がある。
そこで、電チューB、Cの連動が終盤に来たら、通常のストロークに戻してメインデジタルを回し、大当りさせてから再び右打ちに戻す…という「終盤のダブル狙い」が注目された。
なお、本機のメインデジタルにはメモリーが4つあるが、連動が始まるとすぐにデジタルは消化される為、保留玉でダブっても、ほとんど恩恵はなかった)。
このダブル狙い、残念ながら、解析によって明確に「大当り中の確率アップ」が立証された訳ではない。むしろ、大当り中に通常ストロークに戻すと、出玉を大幅に減らしてしまうリスクが高かった。
私自身、この方法を試したのは2、3度程度だが、ハッキリ言って明確な効果は体感できなかった。
(数珠連チャンの謎)
上記「ダブル狙い」とは別に、大当り終了後の早い回転数(50回転程度)で再び当りがくる「数珠連チャン」のケースが、実戦でまま見られた。
その為、本機を「仕込み連チャン機(数珠連機)」と評価する向きも、少なからずあった。
確かに、好調時は50回転以内で2回、3回と数珠り、、4000発越え連発でウハウハな時もあった。
しかし、元々の確率が1/225と甘めだったから、単なる「自力連チャン」ではないかと疑われた。
解析上、本機の大当り判定は「一発抽選方式」で、判定用カウンターは「0~224」の計225コマ。新規に拾った乱数と前回乱数の合計が「7」なら、大当りと判定される。
また、合計値が特定の15個の乱数だった場合、ハズレリーチが掛かる(ハズレリーチ確率は15/225=1/15)。
一方、数珠連チャンを誘発するようなプログラム上の怪しい部分は、解析データからは見て取れない。
ただ、実戦との兼ね合いや当時の「流行り」からいっても、「数珠連チャン機」と捉える事に、何の不思議もなかった。大当り後に即ヤメした客がいれば、すかさずハイエナして50回転くらい回してみるのも、一つの選択肢になっていたのだ。実際、そのパターンでカマ堀りに成功した事も何度かあった。ひょっとして、当時の解析では見抜けなかった、巧妙な「カラクリ」が存在したのかも…。
※なお、本機の後継機「クレイジーホース2」が、1993年(平成5年)に登場している。
(メーカー公式HPの情報による)
★追記★(2015.3.6、GSEさん)
コメント、有難うございます。ご指摘の通り、入賞個数の記載がダブルカウントで間違っていました(滝汗)。脳内で電チューをパカパカやっているうちに、完全に錯覚したようです。大変失礼しました。仰る通り、10回開放の場合、1回当たりの平均入賞は「6個」ではなく、半分の「3個」ですよね(大汗)。
同時に、あの電チュー連動で4000発以上出すには、当初想定したB、Cへの平均入賞個数では、全く足りない事も判りました。そこで、4000発に届く入賞数を考え直したところ、B(2.8秒)は1回当り「4個」(2回で「8個」)、C(5.8秒)は「9個」だと、丁度いい感じになりました。0.6秒間隔の打ち出しであれば、いずれも入賞可能と思います。そんな訳で、当初の数値と差し替えたものを再度掲載しましたので、よろしければご確認下さい(数値を変えた部分は、青で表示しています)。
また、(2回(×2.8秒)×Bへの入賞5個(現在回転中+保留4個=5個))の記載についても、Bの開放回数を決定するのは「Bへの入賞」ではなく、2回開きチューリップ「Xへの入賞」ですので、やはり記載が誤りだった事に気付きました。正しくは、(2回(×2.8秒)×Xへの入賞5個(現在回転中+保留4個=5個))となります。これに関しても、修正させて頂きました。
なお、電チューの「閉鎖時間」については、私も明記しておきたかったのですが、残念ながら正確な数値を把握する資料がなかった為、お知らせする事ができません。「鋭意捜索中」という事でご容赦下さい。
今後、YOUTUBE等の実機映像アップも、期待したいと思います(当ブログで記事作成後に実機動画が後を追って出るパターンも、過去に少なからずありましたので…)。
(追記、ここまで)
★追記の追記(2015.3.6) GSEさん
電チューB、Cの連動について検討し直すうちに、Bの「2.8秒×2回」の開放が、「立て続けに2回開く」のか、或いは「長めの閉鎖(閉止)時間を経て、2回目が開く」のか、少々自信がなくなってきました(汗)。
そもそも、「2.8秒でBに平均4個入賞」とか、「5.8秒でCに平均9個入賞」というのは、決して容易ではありませんよね。よくよく思い返すと、もっと楽に4000発オーバーしていた記憶があります。
とすると、Bは「立て続けに2回開放」ではなく、「1回目の開放後、ある程度長い閉鎖時間を経て、2回目が開いた」のかもしれません。
例えば、Bの最初の開放(2.8秒)でBに「3個」入賞して、その分がCにメモリーされる。そして、Cのメモリー全消化後に、Bがタイミングよく2回目の開放(2.8秒)を行って、再びCにメモリーされる…こんな動きだった可能性もあります。
この場合、Cの総開放回数は「25回」よりも確実に多くなります。例えば、Bへの平均入賞個数が「3個」だった場合、Cの総開放回数は「3(Bの平均入賞3個)×2(計2回の開放)×5(Bのメモリー5個※)」=「30回」。これで、Cに平均「8個」入るとすれば、Cのみが稼ぐ出玉は30×8×15=3600発となります。もしかすると、コチラが正解かもしれません(滝汗)。
※「現在回転中+保留4つ=計5個」
ただ、先程も書いたように、電チューの「閉鎖時間」については、資料もなく、記憶もすでに曖昧です。
あの香ばしい電チューの連動を、何とか文章で正確に「再現」しようと努めましたが、残念ながら限界があったようですね。こうなると、実機による「検証」が不可欠かもしれません。もちろん、当方も出来る限り「真相」を追及したいと思います。
(追記の追記、終り)