肥満は、メタボリックシンドロームの危険因子で、かつ、2型糖
尿病、高脂血症、高血圧、ガンなどの生活習慣病を誘発します。食
べ過ぎが長期間にわたると肥満になるため、肥満解消に摂取カロリ
ーを減らすことが推奨されています。しかし、無理なカロリー制限
は、空腹感に悩まされ長続きしません。最近の研究から、人が食事
を止めるのは満腹感が得られたときだと分かりました。満腹感を感
じるのは、摂取した総カロリー量に比例するのではなく、摂取した
食品のボリューム(体積)と関係することが分かりました。そのた
め、ダイエットには、カロリーが少なくて、重さに比べてボリュー
ムが大きく、水分や食物繊維を多く含むリンゴなど果物が優れてい
ることが分かりました。
ボリュームを増やす最も効果的な成分は食品に含まれている水と
食物繊維です。水はカロリーを増やすことなくボリュームを増やせ
ます。また、立体的な三次元構造を持つ食物繊維は、水を吸収する
とゲル化しボリュームが非常に大きくなります。例えば、リンゴの
食物繊維は水を吸収すると体積が12~38倍にも大きくなります。こ
のように食物繊維は、ボリュームを大きくする力が強いため、相対
的に摂取カロリー量を減らす働きがあります。
果物には食物繊維が豊富に含まれています。例えば、リンゴには
水溶性食物繊維が0.6g/200g、不溶性食物繊維が2.4g/200g、合計で
3.0g/200g含まれています。カロリー当たりで比較すると、食物繊
維が多いと考えられているサツマイモやジネンジョよりも豊富です
(表)。
表.カロリー当たりの食物繊維含量の比較
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食物繊維(g/100kcal)
水溶性 不溶性 総 量
--------------------
リンゴ 0.6 2.2 2.8
サツマイモ 0.4 1.4 1.7
ジネンジョ 0.5 1.2 1.7
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リンゴ丸ごと、リンゴのピューレ、リンゴジュースを用いた比較
試験から食品中の水分・食物繊維と満腹感との関係が明らかになり
ました(文献1)。食物繊維を2.9%含むリンゴを丸ごと食べたと
きの満腹感は、食物繊維の三次元構造が崩れたピューレや食物繊維
をほとんど含まないジュースよりも高いことが分かりました。
また、アメリカで行われたUSDAの疫学調査によると、肥満の男性、
女性は、ともに果物の摂取量が少なく、標準体重の人は果物を多く
摂取していました(文献2)。さらに、南カリフォルニア大学など
の研究チームが行った研究では、標準体重の人は太った人より果物
の摂取量が多いことが分かりました(文献3)。また、果物の摂取
量と体脂肪とは逆相関があることも明らかになりました。一方、肉
類の摂取量が多い人は男女とも太っていました。また、野菜の摂取
量は標準体重の人と肥満の人の間に有意な差は認められませんでし
た。こうした研究の結果は、肥満予防には果物の摂取が有効である
ことを示しています。
このように果物の摂取量を多くして満腹感を得ながら食事バラン
スを保つとダイエット効果が高いことが分かります。ダイエットは
長く続けることが大切です。食前にリンゴなどを食べると効果的な
のは、満腹感が得られ、主食の摂取量が意識せず自然と少なくなる
ためです。
こうした研究から、満腹感は、食物繊維の含有量、水分含量、摂
取した食事のボリュームと明確に関係することが分かりました。こ
のことは、食事のメニューに果物を加えると満腹感が高められるこ
とと、結果として摂取カロリーが減ることを示しています。
健康的にダイエットするためには、無理をしないことが重要なポ
イントです。みずみずしくて美味しいリンゴなど果物をたくさん食
べると、肥満も解消できるので一挙両得です。
【文献】
1) Haber, G.B. et al.: Depletion and disruption of dietary fibre.
Effects on satiety, plasma-glucose, and serum insulin.
Lancet 2: 679-682. (1977)
2) Lin, B.H. et al.: Higher fruit consumption linked with lower
body mass index. Food Rev. 25: 28-32. (2002)
3) Davis, J. N. et al.: Normal-weight adults consume more fiber
and fruit than their age- and height-matched overweight/obese
counterparts. J. Am. Diet. Assoc. 106: 833-840. (2006)