◇認知機能障害のリスク低下
果物や野菜の摂取量が多い地中海式の食事は、軽度の認知機能障
害や、アルツハイマー病へ移行するリスクを下げると、アメリカ、
コロンビア大学などの研究チームが「神経学アーカイヴス」に発表
しました。
地中海式食事とは、果物、野菜、豆類、穀類、魚、不飽和脂肪酸
を多く含む食事のことです。研究では、認知障害がない人約1,393
人と軽度の認知機能障害を持つ482人を対象に平均4.5年間、追跡調
査が行われました。
調査は、被験者の食事内容と地中海式食事内容を比較し、その違
いの程度をスコア化しました。調査の結果、地中海式食事スコアが
最も低いグループ(下位3分の1)の人に比べて、スコアが最も高い
グループ(上位3分の1)の人は、軽度の認知機能障害になるリスク
が28%低く、中程度のスコアのグループの人は、17%低下することが
分かりました。また、軽度の認知機能障害からアルツハイマー病へ
移行するリスクは、地中海式食事スコアの高いグループの人ではリ
スクが48%低いことが分かりました。また、中程度のスコアのグル
ープの人でも45%減少していました。
以上の結果から、地中海式食事内容に近いほど認知機能障害のリ
スクが低下すると結論づけています。その理由として、地中海式食
事は、コレステロール値や血糖値を下げるだけでなく全体的に血管
など循環器が健康に保たれていることや、炎症が減少することなど
が関係していると研究者らは考えています。
【文献】】
Scarmeas, N. et al.: Mediterranean Diet and Mild Cognitive
Impairment. Arch. Neurol., 66: 216-225. (2009)
◇地中海式食事法で二分脊椎予防
葉酸は胎児の神経発達に欠かせないビタミンですが、この栄養素
が不足すると、胎児に重度の脊髄欠損(二分脊椎)を引き起こす原
因となります。そこで、オランダの研究チームが食事と脊髄欠損と
の関係を調査した結果、果物や野菜の摂取量が多い地中海式食事は
二分脊椎の予防に有効であると「国際産婦人科学雑誌」に発表しま
した。
研究では、二分脊椎の子供を持つ母親50人と、そうでない母親81
人を対象に食事の摂取状況を比較したところ、地中海式食事のスコ
アが低い人は、地中海式食事スコアが高い人と比べて、二分脊椎の
子供を持つ確立が約3倍高いことが分かりました。地中海式食事法
は、果物、野菜、植物油、魚、豆類や穀物類を多く含み、イモ類や
甘いものの摂取が少ない食事のことです。また、地中海式食事のス
コアが高ければ高いほど、血液中の葉酸とビタミンB12の濃度が高
いことも分かりました。
【文献】
Vujkovic, M . et al.: The maternal Mediterranean dietary pattern
is associated with a reduced risk of spina bifida in the
offspring. BJOG 116: 408-415. (2009)