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のほほん書斎(日高茂和)

(五島弁・お遊び編・五島弁珍訳古文)伊勢物語より 芥川

◇伊勢物語より 芥川
【五島弁珍訳】(原文は珍訳の下にあります)
昔色男んおったっよな。高嶺の花の女ば、何年もラブコールしちょったとば、ようやっとヌヒトしてざまに暗かとこに来てしもたっちたな。芥川ちいう川んにきば連れっさるいたら草に置いた露ば見て「あら何かな?」ち男に聞いたっちたな。行き先は遠して日なぐれになってきたもんじゃてん鬼んおっところちも知らんでかんなっどんのあっぱかごて鳴って雨もざあまに降ってきたもんじゃてん、ぼされくれたやっべ家に女ば奥んほうさん入ってもろっ、男は弓胡簶ばかろっ戸口におって、「はよ夜の明けんかねぇ」ち思うちょったところが、鬼んワン口開けっ女ば一口に食うてしもたっちたな。「あらよー」ち女はおろだっじゃばって、かんなっどんの音で耳に入らんじゃったっちたな。ようやく夜が明けて、さがしてみたけれども連れっ来た女ん姿はなかじゃんな。じりくりもっ悲しがったばって後の祭りじやったっちたな。

白玉か何ぞと人の問ひしとき露と答へて消えなましものを


【伊勢物語より 芥川】
昔、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ川を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ。」となむ男に問ひける。
ゆく先多く、夜も更けにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる倉に、女をば奥に押し入れて、男、弓・胡簶を負ひて戸口にをり、「はや夜も明けなむ。」と思ひつつゐたりけるに、鬼はや一口に食ひてけり。「あなや。」と言ひけれど、神鳴る騒ぎに、え聞かざりけり。やうやう夜も明けゆくに、見れば率て来し女もなし。足ずりをして泣けどもかひなし。

白玉か何ぞと人の問ひしとき露と答へて消えなましものを



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