塙保己一について、群書類従の編纂の中心人物で盲人であったということしか知らなかったが、その事跡の偉大さを知ることができ、不勉強を恥じるとともに畏敬の念が湧いた。
花井泰子著の「塙保己一の生涯」は小説のかたちで生涯の事跡が語られ、巻末では温故学会や東京大学史料編纂所に至る現代への影響も紹介されていた。
当道という江戸幕府の障碍者行政についても知ることができ、国史大辞典にあたって概要を知るきっかけともなった。そのあと読んだ別の本に当道の文字があり、不思議な共時性を体験するおまけもついた。
歴史や古典文学に興味があるものの、それに触れるのは読みやすく編集された出版物の恩恵によるが、それのもととなるのは群書類従もその一部であることは意識することはほとんどない。
今年6月に東京国立博物館の資料室に初めて入室したときに群書類従の本の背中を見た。書棚を埋めるそれらはこの国の知的財産の貴重な保持の努力の結晶だったのだと再認識した。
・「塙保己一の生涯」
・花井泰子 著
・㈱柏プラーノ 発行
・㈱紀伊國屋書店 発売