のほほん書斎(日高茂和)

お下がり

前回、自転車の練習をした幼いころのことを書いたら、

  「お下がり」

について書きたくなった。

私が補助車の力を借りて練習した自転車は、菩提寺の大乗寺の現住職のものの「お下がり」だった。

現住職には、もうサイズが合わなくなった、まだ新しい自転車を、父か母が譲り受けてきたものだった。

欲しかった自転車が手に入ったことが嬉しかったのと、体験じたいがスリリングであることからだろう、今では作り直されてなくなっている観音寺の庭の植え込みの廻りをくるくるくる何回も回ったことが鮮やかに思い出される。

「お下がり」には、もうひとつ思い出がある。

誰のお下がりかは忘れたが、従兄か誰かのだったのだろう。

黄緑色の、襟に三角形のアクセントの飾りのついたTシャツが、大のお気に入りだった。

10月10日の体育の日にもそれを着ていたところ、母から

「頼むからもう半袖は着ないでくれ」

と叱られるように命じられたことが強烈に印象に残っている。

どうも、衣替えもさせてないだらしない母親と世間から思われるのを懸念してのことだったのだろうが、確かに半袖の季節でもないので無理もない。

そのころの私には、「お下がり」は、ちょっと大人になった気分の、とてもありがたいプレゼントだった。

近頃は、あまり流行らないという。





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