人もなき空しき家は草枕旅にまさりて苦しかりけり と、万葉人は詠んでいる。 草の戸も住み替わる代ぞ雛の家 と芭蕉は吟じた。 ・・・・・ 今日、無人となった福江の実家の最後の片付けを終えて、まったくの「空しき家」にして帰ってきた。 笑っておくれ、 家を出る際に、一部屋一部屋に、 「ありがとうございました」 と、うやうやしく頭を下げて出てきたセンチメンタルな男のことを。