のほほん書斎(日高茂和)

えーっ、人間というものは・・・

「えーっ、人間というものはぁ・・・」

ご存知、古今亭志ん生が、高座で真っ先に口にする一言である。

奔放な人生を送ったことで有名な昭和の名人だが、戦中から戦後、軍の慰問の芸人として外地(満州)に出ていたころのことは、本人も語らなかったし、どういう経験をしたのか、謎めいているのだという。
終戦の後に、帰国するまでに約一年半ほど、外地をさまよっていたらしい。

自宅の前に現れた志ん生は、汚れて真っ黒けだったという。
生きて、帰ってきたことが不思議なくらいの地獄絵巻からの生還だったのだろう。
その間、人間のあらゆる側面を見ることになり、「人間というもの」について、さまざまに考えることがあったに違いない。

帰国してからは、志ん生の芸が明るい芸風にかわり、終戦前にあまり売れなかった芸人の人気がどんどん上がっていったという。

「昭和の名人」としての栄光は皆様ご存知の通りである。

録音記録を通して、志ん生の多くの高座を聞くことが出来るのは、後の時代を生きる者にとって幸せなことである。

極限の人間の姿を見たであろう志ん生。
落語の高座だから、軽く、面白おかしく「えーっ、人間というものは・・・」と語りはじめる志ん生の落語のなかに、世の中と言うもの、人生というもの、人間と言うものをちょっと垣間見てしまうのも、ひとつの落語の楽しみ方だし、「人間というもの」との出会い方のひとつでもある。

余談
志ん生については、拙ブログ2006年8月2日にも触れております。
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