2時半過ぎにジョアンの家に着いた。
ベルを鳴らすと、ジョアンが笑顔で迎えてくれた。
ジョアンも帰ってくるのが遅れたらしく、ちょうど、パスタを作っていた。ビールも買いに行く時間がなかったと笑いながら話した。
「それじゃ、5分でビールを買ってくるよ。ちょっと待ってて」
この暑さ、このジョアンとの最後の食事になるかもしれない場にビールがないことは寂しい。ちょうど、彼女の家から300メートル離れたところには酒屋があるので、急いで買いに行った。
もちろん、そんなに飲むことはしない予定だった。身体の疲れや夕食をみんなと食べる予定であったし、とりあえず、ビールを二本だけ買って帰ってきた。
カルカッタではなかなか時間通りに予定は進まない。何かのアクシデントがあれば、想像以上に遅れる。約束した場に相手がいないことなど良くあった。
だから、会えてよかったとほっとした。彼女にはTシャツをプレゼントした。二つの同じ柄で色違いIndiaのロゴの入ったものを見せた。
「どっちがいい?」
少し考えていた。
「一つだけだよ」笑いながら言うと、彼女も笑った。
「初めてのIndiaのロゴ入りのTシャツ」そう言って嬉しそうにしてくれた。
ビールをまず飲んだ。お腹が空いていた自分はパスタを勢い良く食べていた。ジョアンは自分に多くよそったはずだが、それをほんとうに自分に出したかどうか、分からなくなるほどだった。ジョアンのパスタはとても美味しかった。彼女の愛情も惜しみなく感じるがゆえ、なおさらだった。
かけがえのない時が流れていった。
{つづく}