「障害福祉が最優先でよい」という主張だけで選挙をおこなった時、どれだけの人を注目させることができるのか。それが今回の選挙のテーマだった。そのテーマにとってノイズとなることは極力排除したつもりだ。この試みは選挙としては敗北必至と分析していたから、敗北に耐えて生き残れる人材が必要だった。敗北からしか始められない現実があり、その積み重ねにしか未来はない。
それでも敗北で失うものはあまりに多い。ある現役議員が、僕の出馬を知りメッセージをくれた。
「区議選で負けて得られるものはありません。勝って志しを立てましょう!」
この選挙で、個人的に失うものは3年前から覚悟しているが、その後、僕たちの運動(権利に基づく障害福祉を確立するための)には、これまで、当初の想定よりも多くの議員さんたちの協力を得られるようになってきている。その関係性を失うことが怖くて、何度も引き返そうと思った。
だが、僕たちのこの選挙で、彼らとの関係性が失われるわけではないだろう、それを信じようという結論に至った。彼らとて、現在までの障害福祉への支持を本当に公然とはできない環境の中で、ある種のリスクを踏みながら動いてくれている。障害福祉への社会合意へ区民の意識を向けることは、彼らの自由度を増すためにも必要なのだ。
このプロジェクトが構想される前、僕らの想定は、障害当事者を複数、区議会選挙に立候補させることだった。
それだけではなく、今僕が携わっている、相談支援事業と相談支援専門員という仕事自体が、CILを中心とした障害当事者が作り上げたプランの中で、エンパワメントされた障害当事者と自立支援センターが担うはずだったものだ。
それらのことは、大田区の現状では、残念ながらかなわない。大田区で活動する障害当事者は、まだまだ厳しい状況の中で地を這うように活動している。僕らは彼らが力をつけて力強くステージに立てるまで、体を張って準備をしていこうと思う。
いつか、その日は来る。ひとつひとつ、積み上げていこう。