新訳、ガリア戦記(中倉玄喜訳)はPHPから、2008年2月に出版された。
始めにガリア戦記を読んだのは、國原吉之助・訳(講談社学術文庫)のもの
だった。 ガリア戦記の書かれた時代と私たちのあいだには、2000年という
海のような時が流れている。 國原訳のものを読むと、カエサルの淡々とした
描写が続き、膨大な時を経て伝えられる、当時の男たちの戦いを遠くからなが
めているような感じがする。 その遠さは戦記の中を、風のように流れている
二千年の時だろう。
読んでから、大昔のものなので、その時代のことやカエサルの戦闘法、戦術な
ど、もっと知りたいと思い、塩野七生の「ローマ人の物語」(新潮社)第4巻‐
「ルビコン以前」、第5巻‐「ルビコン以後」を、たいへん興味深く読んだ。
この新訳の、冒頭100ページほどの解説までは、訳者自身の文章は
歯切れがいい。 期待して続く本訳を読み始めたが、國原訳の雰囲気と
はまったく違い、正直がっかりした。 訳者自身の文章はいいのに、
訳に入ると全然違ってくるのだ。
いままでに一つの原本を違う訳で読んだことがなかった。 考えれば
当たり前のことかもしれないが、訳によってこれだけ違ってしまうもの
かと思う。
立花隆氏は、佐藤優氏との共著、『ぼくらの頭脳の鍛え方』で言っている。
「最近の訳はそれが訳として正しいか正しくないかということばかり気にしす
ぎて、言葉として力を失っている。 私はやっぱり言葉である以上、大切な
のは言葉の持つ力だと思う。」
形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/
[ 警告]当ブログ内に掲載されているすべての文章の無断転載、転用を禁止します。すべての文章は日本の著作権及び国際条約によって保護を受けています。Copyright shinso koisikawa. All rights reserved. Never reproduce or replicate without written permission.