わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

ショックな真実

2018-09-25 | アメリカの街の暮し
 いつものように、寝る前にiPadで標準アプリのニュースサイトを見ていたら、衝撃的なタイトルが目に入りました。ナショナル・ジオグラフィックによる「日本は如何にして違法象牙取引を廃止する努力の障害となっているか(How Japan Undermines Efforts to Stop the Illegal Ivory Trade)」と、いうのがそれ。副題は「中国が象牙の販売取締まりを始めた今、世界最大の市場である日本の法の抜け穴が密輸入者たちに機会を提供している(As China cracks down on ivory sales, legal loopholes in Japan—the world’s largest market—offer opportunities for smugglers)」。

 この記事は、著者のRachel Nuwer氏が、世界中で禁止されている象牙販売が、「違法かつ大っぴらに」行われている日本に行った著者が、浅草の宝石店で、450ドルの象牙のネックレスを見せてもらった経験から始まります。「これをニューヨークに持って帰ったら、違法にならない?」ときく著者に、店主は「違法だけど、首から掛けて税関を通れば見付からないさ。みんな、そうしてるよ」とアドバイス(?)したそうな。

 元々、世界における、ほぼ全ての象牙取引の場であり、そのための密猟の原因となっていた中国が、今年1月に、象牙の販売取引を一切禁止したことは、世界中で称賛されました。そして、この中国の勇断によって、日本が、世界最大の違法象牙取引の場となったというのです。いくら中国の当局が禁止しても、実際には完全に規制することはできないでしょうし、中国政府だからできたことであるとも思います。これを日本もすることが可能なのか…?

 たしかに昔は、根付や三味線のバチ、印鑑等々で象牙が使われていましたが、その頃はピアノの鍵盤等も象牙で、世界中が、その貴重さと、それらの象牙がどのようにしてもたらされたかへの無知ゆえに、罪悪感なしに象牙を取引していました。象牙って、ローマ時代から使われていましたし。でも、世界中で大問題になっている現代において、日本人が取引をやってたとは!無知ゆえに、これは大きな衝撃でした。

 確かにイルカやらクジラやらで独自路線を貫いてはいますが、日本はむしろ、動物愛護や世界的な法への遵守には鋭く反応する方で、こういった残酷な象の密猟だとか、象牙の違法販売・購入とかの廃止は、率先して実行しそうなのに。イルカ漁や捕鯨に対する、歴史的背景や文化を全く無視して、ヒステリックにイルカやクジラは可愛いから捕まえたらダメ!と叫ぶ欧米人にはムカつく私も、象牙取引は日本の恥だと情けない気持ちになります。そのうち、色んな組織が、イルカ、クジラに加えて、エレファント・キラー!とかって喚き出すんではないかと、いや、むしろ、騒ぎになれば日本も象牙取引を厳しく取締始めるだろうかと期待するのは、調子良すぎ?


 欧米諸国では、象牙を所有していることすらが恥ずかしいという風潮があるけど、日本では、まだそこまでの意識はなく、それが問題でもあると思います。日本における象牙の違法取引が表面化すれば、鯨・イルカとは違って、大多数の日本人が、象牙取引に反対するようになると、私は思います。象牙を違法に卸していた業者が捕まったときには、大きくマスコミに報道されても、多くの日本人は、自分とは関係のないことだと思っているのではないでしょうか。かくいう自分も、40年前に親に作ってもらった印鑑は象牙だったりします…

 日本における象牙需要の多くは、印鑑だそうです。でも、象牙加工は江戸時代以来の日本の伝統工芸だから、そう簡単にはやめられないという言い訳は、捕鯨は伝統的なものだから止めないというのとは、ちょっと違うと思う。印鑑は象牙じゃなくても、つげの木でも高級品は作れるし、この頃はキャラクター印鑑も市民権を得てきて、だいたいハンコ文化そのものが変化中でしょ?他にも、絶対象牙でなきゃ作れないって物はないんじゃないかな?需要があるから供給される。日本での需要がなくなるのが一番良いわけで…

 この記事では、2011年から16年にかけて、国際取引監視グループによれば2011年から16年にかけて、日本から流出した象牙は2.4トンに及び、その殆どは中国へ送られたとか。中国から入ってきたんかと思ったら、逆やんか!?!この間は、東南アジアで捉えられた希少な蝶の最大の市場は日本って記事も見たし、ちょっと日本、ヤバイ…


 記事内で、米国務省の方が、日本における国内象牙取引を許す法律が抜け穴となっており、世界的な努力を無駄にしていると糾弾しています。他の国々は、日本が象牙市場を完全閉鎖するよう仕向けなければならない、とも。国内でも、楽天による象牙販売の停止は賞賛を持って迎えられ、野生動物保護団体は活発に活動しています。

 でも一方で、日本には、象牙を扱う小売販売店が8,200、加工業者が300、卸業者が500も存在するのだそうです。象牙取引を禁止すれば、これらの人々は困るでしょう。この産業に従事する多くの日本人の方への補償をどうすればよいのかは、深刻な課題です。

 和歌山の伝統的な鯨漁師の方々は、老齢化が進み後継者もいないと聞きます。象牙細工も、そうなるまで待つのでしょうか。でも、日本の評判を著しく貶め、個体数の多いイルカや、捕獲量が法で規制され、ごく限られた数に抑えられているイルカや鯨とは違って、象は日本人ではない密猟者によって、その角だけのために狩られ、実際に絶滅の危機にあり、世界的な闇の中で取引が行われているのは、言い訳のできない事実です。

 時代と共に廃れていった産業は沢山あり、それによって甚大な被害を受けた人々も膨大な数に上るでしょう。炭鉱業は中でも大きな分野でしょうし、かつては街中にあふれていた写真の現像屋さんに、貸しレコード・ビデオ、本屋さん等々。大きな経済的打撃を受け、閉店、転職を強いられた人々が身近にも沢山いる。無責任であることは自覚していますが、象牙産業の人々だけを保護するという理論は、ムリがあると思います。

 それだけではありません。象牙に変わる樹脂が既に開発されています。 エルフォリン(elforyn)というものが、象牙の代用として、既に頻繁に利用されているのだそう。環境省も象牙等はルールを守って取引しましょう!なんて言ってないで、全面禁止に向けて動くしか無いと私は思います。甘っちょろい理想主義とか、鯨はいいけど象はアカンのなら、海犬とどこが違うと言われても、先に書いたとおり、鯨と象は違うもん!って、わたしゃ歯向かうよ。

写真を多く含んだ、この記事は、ここから。写真とグラフだけでも、ぜひ見てください。一枚だけ、そんな写真の中から

JTEFがアース・デーに出したのぼり


 ちなみに、ナショ・ジオの記事をいち早く翻訳して載せてくれる、私的ネタの宝庫、Yahoo!Japanは、この記事中で「日本剤台の象牙取引の場」と指名されているので、そこでは掲載されないと思います。そして、この記事を書くための調査は、日本の機関が資金援助をしているそうです。

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