師走目前~!街に氾濫するクリスマスソングを聞くと、私もパニックになって走り回ったり、焦りたくったりしていますが(←特に理由はない)、焦っているのは個人だけではなく、アメリカ議会も、だと思いたい。なぜなら、今年の終わりのカウントダウンとともに、史上初の債務不履行(デフォルト)の危機が迫っているから。アメリカでは、国家の抱える借金に限度額があるのですが、金融危機の折、支出が多すぎて国債利払いや償還資金といった利子が支払えず、もし議会が上限引上げを承認しなければ、夜逃げする場所もなければ、遊郭に売払う娘もいないアメリカさんちは一家心中、じゃなくてデフォルトになっちゃうんですな。ちなみに現在の法定債務上限額は16兆4千億ドル(約1、350京350兆円)。確かにでかい借金だわ~
で、デフォルトなれば、お医者さんはメディケアの払戻しがもらえないんで、もう貧乏人診るの止めゆ!になっちゃうし、失業保険は打切りだし、連邦税は自動的に上がるし、小ブッシュ減税は維持できないんで収入税ももれなく上がるし、軍事費は削減されて、米国最大の雇用主である軍隊が兵隊さんを大量に切って失業増えるし、福祉プログラムはカットされるし…で、やっぱ、一家心中じゃん、てことになってしまうのです。今までにも、何度も、オバマ大統領は議会の承認を得て、モンダイの借金上限を引き上げてきたので、どうせ今回もオレオレ詐欺ならぬ超える超える詐欺で、結局は回避しちゃうんじゃないの、という見方が多勢だとはいえ、もう崖から飛び降りちゃえー!という一派も実は存在するのです、議会内に。
政府は小さいほうがいいけど、自分の資産は大きいままにしておきたい共和党の皆さんは、歳出削減を約束したら上限引き上げに同意してやるってスタンスです。まー、もう少しだけ貸したげるけど、その代わり浪費は辞めるって約束しなさい、ってのは、真当に聞こえるけど、共和党が言う「歳出」ってのは、主に社会保障への支出のこと。ここでの社会保障は、ベンツに乗った生活保護受給者がいるような日本の場合とは違って、国全体の教育費や厚生費がターゲット。日本では、学校で生徒全員に予防接種とか歯の検査があり、公園では年に一度、保健所が狂犬病の注射をしてくれる。国民全員が医療保険を有し、病気になったら医者に診てもらえる。アメリカじゃ、夢の様な話です。社会保障支出削減=貧乏人は死んでください、みたいなもんです。
貧乏人だけじゃない。例えば、麻薬中毒者の多いアメリカ都市部では、彼らを療養するお金がなければ、ムリヤリ「退院」させちゃわねばならない。結果、LAの街中なんて、アブナイ人たちが喚いてるのが普通の光景になってます。1年間の就学日は毎年ジリ減だし、お金のかかる警察官の消防員は人員削減。国がどんどん、物騒になっていく。ここに、PTSDを抱えたままに除隊させられ、新しい仕事を見つけるのに苦労しているイラク、アフガン返りの兵士が加わる。また、ジョン・ランボー氏が、一席ぶたねばならない状況になりかねない。
国全体で失業率は未だ8%を超えているし、経済成長はぱっと見は水平だけど、よーく見ると右上がりかな~、なんて状態なのに、上限引き上げに反対するなんて、どう考えても正気の沙汰じゃない、と、普通なら思いそうなものですが、先の選挙を思い返しても、その私なんぞが思う「普通」が、全く普通には思えない人が、国の半分近くいるらしいのがアメリカ。税金は全く上げないよ!なんて公約して当選した共和党議員も少なくはないんです。そりゃ私だって、税金が上がったら超困るけど、この国の赤字がとんでもないことも知ってるし、だーかーらっ!我々、貧乏人の収入税はそのままで、金持ちトップ2%から分捕れよ!と、他力本願しとるわけです。数日前にも書いたけど、大半の従業員を時給8ドルで働かせてる会社のCEOが、ボーナスだけで数億円を貰う国ですから、ちったぁ所得の均等化に努めてもいいと思うのよ、私は。
共和党は、富裕層向け税率を上げたら、小規模企業のオーナーが大きな打撃を受けて景気が停滞するといいます。TVのコマーシャルでも、私達はもう生活できなくなるわ、と初老の夫婦が心配してるところを映しだしたりしてね。あのね、心配してる多くの皆さん、あんたら自意識過剰だっつーの。あんたら、自分で思ってるほど金持ちじゃないっつーの。麻薬でも扱ってない限り、ちっこい町工場やらお店やら持ってるだけで、所得が全米トップ2%にはならんって。富裕層増税対象ってのは、トップ・アスリーツ、人気俳優や監督、整形外科医、有名人向け弁護士、ヘッジファンド・マネジャー、ウォール街のエグゼクティブ等々を言うんだわ。ロムニーみたいに豪邸5件持ってます~ってなレベルになってから、自分の税率心配しやがれ、ってんです。
NPOに勤務のわにおくんは、毎年、貧困層地域の一年生に本やぬいぐるみ、歯ブラシ等の生活用品、そして文房具を詰めたバックパックをプレゼントする、オペレーション・テディーベアという慈善事業の責任者をやってますが、パックを貰っても、何の感情も示さない子供が多いそう。自分がこんなに新品だらけのプレゼントを貰えるとは全く思ってないので、「はぁ、これは学校の備品ですか。素晴らしいですね。僕もこんなのが使えたらいいなと思いますよ。ははは。でも、無理ですね。分かってますよ」ってな感じで、冷めた目でパックを眺めてるんだって。何度も「これは皆さんのものですよ、開けてもいいんですよ。お家に持ってかえって、ずっとキープしていてもいいんですよ」と説明されて、初めて叫び声を上げたり、泣き出したりと、教室中がパニック化しちゃうのが、毎年恒例なんだって。6歳やそこらの子供に、ここまで「貧しさ」が身にしみているのです。これは特殊なケースではありません。そういう子供たちがアメリカ中に、たくさんたくさん存在するのです。社会保障を削減で最も打撃を受けるのは、こんな子供たちとその家族です。共和党の皆さんは一度、この様子を見に来ればいいと思います。
そして私はデカい仕事を逃した。これで来月も家賃が払えると思ったのに…