わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

なぜ私はトランプを嫌い、将来を危惧するのか

2016-11-10 | アメリカのニュース
 ブッシュ対ゴア時のやるせない怒りも蘇って、先週は自分でも驚くほどの鬱状態になってしまいました。すぐに抗議行動に出られるエネルギーは羨ましくもありますが、抗議のデモ行動だけで大した成果が望めないのは、ウォール街占拠時が何を生み出したかを見ても明白。もう一歩踏み込んだ活動が始まれば、ぜひ参加したい。トランプが世界最強軍の最高司令官であり、先進諸国首脳会議に参加する代表だなんて、地球の悲劇だと私は信じます。

 私の怒りは、トランプ自身にではなく、トランプを選んだアメリカ人に対する失望によるものです。全く政治経験のない男を、商売上手だからと選んでしまった。歯が痛いから、自動車整備工場に行くようなものです。しかも、彼は決して優れたビジネスマンではない。彼が不動産王と呼ばれる所以は、自動車王ヘンリー・フォードや、新聞王ウィリアム・ハーストと同じにしてはならない。トランプは世襲による「王」であり、己の才覚ではない。むしろ何度もビジネスに失敗している。その度に損害を取り戻したというのも詭弁にすぎない。

 この怒りは、子ブッシュ2期目が決まった時の失望にも似ています。1期目も当時、実弟のジェブが知事をしていたフロリダ州で、選挙人の表数え直しというゴタゴタの末に大統領になった子ブッシュ、戦時大統領は負けないというジンクス通りに、二期目再選を果たしました。これも、トラン雨に対する不安要素の一つです。

 トランプの人気は、就任後すぐに失速すると私は思います。直後とは言わずとも、ハリボテと虚飾で4年間、アメリカ国民を欺け続けるとは思えない。二期目を狙うとすれば、子ブッシュ政権同様、どこかに戦争を仕掛けるのではないか。子ブッシュの時も、存在しない大量殺戮兵器を理由にイラクに侵攻したのですから、火種はいくらでもでっちあげられます。背後に政界の重鎮を副大統領に据える手口も子ブッシュと同じだ。

 トランプがアピールし、支持を得たのは、白人低所得層と一般に言われていますが、彼らは勝手にトランプに幻想を見て支持したのであって、トランプが狙った本来の支持層は、懐古主義の高所得層であると私は考えます。「Make America Great Again」のスローガンは、レーガン時代は良かったと懐かしむ、悠々自適の人々。黒人が大統領になったなんて許せないのに、続けて女が大統領とか絶対容認し難いと思っている人々。ここには、同性である女性、特に白人女性も多く含まれています。それは一体なぜなのか?

 実に簡単な事だと私は思います。同性であるが故に、彼女の華々しさが憎らしい。キャンペーン中、スターに囲まれ、賞賛を受ける生意気な女。所詮は大統領だった夫のお陰でここまで来れたくせに。また、ミシェル・オバマが去って、やっとホワイトハウスを「クラス」が返ってくる、なんて声を聞きます。トランプ自身が下品を極めたような野卑な男なのに。

 私は、ミシェル夫人は正にクラス、洗練された上品さを備えた女性だと思っています。私がアメリカに来てから見てきたファースト・レディーは、ミシェル夫人の他、バーバラ・ブッシュ、ヒラリー・クリントン、ローラ・ブッシュでした。バーバラには古き良き時代の名門一家出身の音付きある品の良さが感じられましたし、ローラもまた南部出身の夫を支えるしっかりした賢命な女性らしさが感じられました。彼女達のような一歩下がった女性こそファーストレディーに相応しいと信じる人々にとって、ヒラリーの登場は鼻につくものでした。ナンシー・レーガンさんのことはすっかり忘れちゃったのかな~?

 たまたま親ブッシュ政権時とクリントン政権時にワシントンDCに住んでいた私は、「でしゃばりすぎる」ヒラリーに対する批判を身近に感じてました。それに正直、クリントン政権一年目の、ホワイトハウスの前にある「大統領のクリスマスツリー」の安っぽい派手な飾り付けに「ヒラリーさん、これはちょっと…orz」と、脱力した覚えはあります。ミシェル夫人が飾り付けたクリスマスツリーは見ていませんが、彼女は、ヒラリーがクリントン時代に持っていたと同じ程の発言権を有し、確固たる存在感を示しつつも、洗練された上品さを持つ知的なファーストレディーとして、尊敬されていたと思います。彼女よりも、ミシェルさんのスピーチを丸パクリしたトランプの3番目の奥さん、外国人の元ヌードモデルに、どんな洗練された上品さを求めてるんでしょうね?って、いじわるおばさんの私は思っちゃう(二重国籍の元ビキニモデルを党首にしてる国の人間が言えたもんじゃないかw)
 

 でも、そういった保守的な、というのか、白人であるという優位感のぬるま湯に漬かっていたい市民が多かったにも関わらず、実は、実際の得票数はクリントンの方が多かった… つまり、民衆の意思はクリントンにあったはずだったのです。にも関わらず、選挙人という大昔のシステムが未だに民意を覆して、トランプを選びました。アル・ゴアも同じで、ブッシュよりも得票数は多かった。

 現代民主主義における選挙人は矛盾する存在ではないかと、私は常々疑問に思っていました。変化を受け容れられない、世界から完全に取り残されても慣習を変えられないアメリカ人の、古いものにしがみつく弊害が、こんな所にもあったか、と、いう感じです。彼らは『変化』を求めてオバマを選び、今度はトランプを選びましたが、彼らの言う『変化』は上っ面の変化に過ぎず、根本的な変化はアメリカ人には耐え難いことも、今度のトランプ当選で暴露されたと思います。メートル法、摂氏、グラム、一般市民の銃携帯… アメリカだけが他の国に追随できないまま、取り残されている事例はたくさんありますが、民主主義世界を率いると自称する国に、このような民意の反映を阻止する体制が残っている。

 アメリカは古い価値観を捨てられない、保守的な人民によって成り立っています。トランプの台頭は、その再確認となったのではないでしょうか。そのトランプですが、私的には、彼の目標は大統領になることであって、その後はどうでもいいような気がしてならない。彼の公約のどこまでが暴言、虚言で、何処まで本当にやるつもりかどうかは判りませんし、どこまで議会がそれらを許すかも判りません。ですが、上院・下院共に共和党が占めるアメリカで、過去8年で築き上げられてきたものが崩壊するであろうことが悲しく悔しくてなりません。

 覚えておいて欲しい。ブッシュ時代の巨額な赤字と失業率を抱えたアメリカ経済を好転させたのはオバマ政権だったこと。国民皆保健を目指したオバマ・ケアは、統計的に国民の健康度を改善し、国の医療費負担を減らしたこと。オバマは今までの大統領の中でも一番多くの土地を国立公園に指定して護り、次世代へと繋げたこと。

来年一年、どんな変化が起こるのか、また、どんな変化が起こらないのか。大した影響を受けず、ただ見ていられるだけでありたいのですが、メキシコとのやり取りが多い製造会社に勤める、外国人の私が、何の影響設けずにのうのうとしていられるとは思えない。不安だ…

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