千曲川のうた

日本一の長河千曲川。その季節の表情を詩歌とともに。
人生は俳句と釣りさ。あ、それと愛。

へび

2019年02月05日 | 千曲川の動物


ジムグリという蛇だろうと思う。
五月、車で河川敷の道を走っているとこいつがいて、もう少しで轢くところだった。ヘビ対応の自動ブレーキは装備していない。
真っ直ぐに伸ばせば90cmくらいありそうだったが、引っ張って計測するのはやめておいた。きっと蛇が嫌がるだろうからだ。(ああ、なんて優しいのだろう)。

安部公房が蛇ついて論じた文章に、イキモノの気味悪さは「擬人化のしにくさ」と相関するとあったように覚えている。たしかに蛇は、その日常生活を想像しにくく、擬人化しにくい。蛇が主役となる話は幾らもあるが、ほとんどは人間に変身して活動するものだ。蛇のまんまでは主役になりにくい。実に感情移入しづらいと思う。
ネズミもライオンも熱帯魚もカメもスーパースターになったが、蛇が主人公のディズニーアニメなんかは多分制作されないだろう。

スーパースターはともかくとして、蛇も俳句では立派な主人公になれる。

蛇逃げて我を見し眼の草に残る  高浜虚子
蛇穴を出て見れば周の天下なり  高浜虚子
水ゆれて鳳凰堂へ蛇の首     阿波野青畝
全長のさだまりて蛇すすむなり  山口誓子
蛇いでてすぐに女人に会ひにけり 橋本多佳子
草の根の蛇の眠りにとどきけり  桂 信子
蛇消えて唐招提寺裏秋暗し    秋元不死男
音楽漂う岸侵しゆく蛇の飢    赤尾兜子
若き蛇跨ぎかへりみ旅はじまる  西東三鬼
蛇遣いなかなか袋より出さず   田川飛旅子

蛇ばかりではない。ミミズもカエルもゲジゲジも蚊もゴキブリも、何でも来いだ。
俳句は面白い。