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北陸は発酵食品の宝庫だが、なかでも有名なのが金沢の蕪鮓(かぶらずし)。塩漬にした蕪に鰤の薄切りを挟み、麹に漬けたものである。蕪の漬物でもあるけれど、鰤の方に注目すれば熟れ鮨の一種ということになる。季語で言うと鮓は夏のものだが、蕪と鰤は冬で、当然蕪鮓は冬季である。
材料にはヴァリエーションがあり、写真のものは大根と鯖で作られている。これは金沢市粟崎町の割烹「あすなろ」自家製で、とてもおいしい。
蕪鮓一箸つまみ廓町 沢木欣一
吉田健一の「金沢」は幻想小説とでも呼べば良いのだろうか。読始めてすぐ退屈だなあと思うけれど、これがやめられない。退屈の種類が違うのである。話の内容はどうでもよくて「吉田健一の『金沢』を読んでいる」という状態そのものが心地良いのだ。だから何度も読返した本だけれど人に内容を伝えるのは難しい。
この小説に、金沢の人は日々の暮しに「手を掛けることを嫌わない」という話が出てくる。しかし手を掛けた跡が残るのはいけないのだともいう。きっと、この大根鮓だって随分な手間暇が掛っているのだろう。
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