今年のノーベル平和賞の授賞式が10日、ノルウェーのオスロで行われた。マイクロクレジット(無担保小口融資)と呼ばれる手法で貧困救済に努めたバングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス氏と、同氏が創設したグラミン(村落)銀行に、メダルと賞金1000万クローナ(約1億7000万円)が贈られた。
ムハマド・ユヌス氏は、一人当たりのGDPが日本の100分の1で、世界最貧国の1つに数えられるバングラデシュで生まれ、アメリカで経済学の博士号を取得した経済学者。マイクロクレジットと呼ばれる貧困層を対象とした事業を考え出し、グラミン銀行を創設し、現在も総裁を務めている。
ノーベル平和賞を受賞するほどのマイクロクレジットって、どんなものなのかというと、工芸や畜産、農産物の加工、小売業などの小さな事業を興すために必要な数ドル、数十ドルという少額の資金を、資産や土地などの担保を持たない人に貸し付けるという少額無担保融資の事業だ。
普通、銀行というものは、預貯金という形で募ったお金を必要としている人へ、担保という信用を保証に融資をするで、担保を持たない人は、信用力がないと見なされ、お金は貸してもらえない。
かつてのバングラデシュは、銀行からお金を借りることができない貧困層は、高利貸しからお金を借りるのが唯一の方法だった。稼いだお金も返済と高い利子にあてると底をつき、またお金を借りるという悪循環に陥り、貧しければ、貧しいほど貧困から抜け出せなくなる。富める者ほど大きな担保で多額のお金を借り、それを元にますます富む。融資を受けられない貧しい者は永遠に貧しいままという悪循環は、不平等である。それを裁ち切りたいという思いから、担保がない貧困層でも、借り手は同性が5人一組となってグループを編成し、連帯責任を負うことを条件にお金を借り、それを元に自立を目指すシステムを生み出した。
グラミン銀行がお金を貸すのは、土地を全く持っていないか、0.5エーカー(約二反:600坪)未満の耕作地しか持っていないことが条件とされている。つまり、お金を貸してくれるのは貧しい人だけ。資産を持っている人にしかお金を貸さない既存の銀行と全く逆の発想だ。ここに“貧者のための銀行”と呼ばれる所以(ゆえん)がある。
マイクロクレジットは、既存の経済学の論理をくつがえす革命的な事業と評される。ユヌス氏は「世界の貧困人口を2015年までに半減させる」ことを人生の最終目標に掲げている。
新しい発想で貧しい人たちに融資をし、一方的な援助ではなく、自立を促す事業を展開し、「貧困の撲滅」を目指す取り組みが世界に広がっていくことを期待している。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます