なにげな言葉

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迷宮・緑柱玉の世界の独り言

緑柱玉の世界・・を評す

2008-10-21 | なにげな言葉

『緑柱玉の世界』は、雛美礼を中心に良行氏、正隆氏との3人の関係を書き上げた世界である。
『緑柱玉の世界』は、紫藤椛が書き上げる、ノンフィクションの世界をフィクションのように読ませてくれる。
同時にこの話の奥深いところには、宗教観が見え、人間の心理、本質が見えているところだ。
緑柱玉の書く現実とも、空想とも思える世界には、心理的世界が広がっている。

重くなりがちな精神世界を現実世界と交互に入り組み繋がりながら、雛美礼の成長を書き留めている。
紫藤椛の書く文章には、透明感がある。
読んだものによっては、物足りないと思うかもしれない。
アダルトな内容を綺麗にまとめたことで、『緑柱玉の世界』に独自の世界観が生まれてきている。綺麗なだけの関係ではない。
だが、表されるものに、清潔感を感じるはずである。
そこには、純粋な心で付き合いたいと言う雛美礼もしくは、紫藤椛の心の一部でもあるのかもしれない。
雛美礼の悲しみ、辛さを極限まで表現することで、正隆氏と良行氏の心の動きまでをも表現している。
3人の関係をさまざまな角度から見ることで、幾種もの、解釈が可能であり、豊饒かつ、なぞに満ちた世界が現れている。
複数の作者の表現のように、幾とおりの表現を使い分けている。
『緑柱玉の世界』には、気高さと奥行きの深さを感じるのは、僕だけではないと思う。
紫藤椛の書く文章が空想ではない証拠に、彼女自身が体験したことを表現しているからこそ、引きつけるものがあるのだ。
だが、彼女は、実話だとは言わない。
そこにこそ、謎めいた迷宮が存在するのだ。
そこに迷い込み、作者の紫藤椛を悩ませた男も数知れずと言う。

SMをSFで描いても、面白くは無い様に、絵に書いた餅では、魅力が無い。
読むものによっては、その内容が信じられないこともあるだろが、やはり気になるのは、現実との接点が多いからではないだろうか。
そして感じ方が、紫藤椛が感じた真の感覚だからだ。
嘘だと言う者も居るだろう。それはそれでいい。
感覚は人それぞれだからだ。
紫藤椛の現実を認めないものがいても当然であろう。
それは、尋常な行為ではないと言うことでもある。
だが現実に、この『緑柱玉の世界』は生きているのである。
彼女の一語一句に、生きている証拠があるが故、読者をひきつけるのであろう。

絵空事の文章なら、はじめから無理な設定が可能だ。
男に強姦され立ち直る女の心理など読みたくは無いだろう。
強姦を喜ぶ女の心など、興味が無い。
男が読むのなら、強姦するシュチュエーションだけで、十分だ。
しかし『緑柱玉の世界』では、強姦された雛美礼を巡り、男までもが苦悩しみ、お互いを受け入れていく。そこが現実なのだ。

「緑柱玉の世界」の弱点でもあるが、おどろおどろしく、エロチシズムで書く文章、それができないのも、紫藤椛の性格がよく現れている。
嘘は、残せない。
紫藤椛がいつも言っていた。
「先生との歴史を残す。」まさに、そこが原点である。

読んで感じて欲しいだけの官能小説なら、もっと違う表現をするだろう。
それをしないのは、先生である、正隆氏を汚したくないからだろう。
小説とは、自分の一部を切り出し表現するわけだ、汚れた表現で汚く書くものの性は、汚れたいという欲望があるのだろう。
欲求がそうさせるのかもしれない。文字にも人格ありという事だろう。

大切なものを大切に書くからこそ、「緑柱玉の世界」が綺麗に見えるのだ。
『緑柱玉の世界』に主である良行氏は顔を出した事で、よりこの「緑柱玉の世界」が深みを増したのではないだろうか。
主の顔の見えるものは少ないだろう。しかしそこにこそ、愛が見える。
共有の思い出を作ることで、新しい関係を見つけることができる。
そんな紫藤椛と、良行氏の性格は、話の随所に見ることができる。
その精神こそが、読むものに、気高さと品位を伝えているのだと思う。

「変わること・・・」それは自然である。

「変わっていくこと・・」を選ぶ3人。

3人は何かを求めて成長し、変わることを望んでいるのか、それはまだまだ分からない。
今までの中で分かることは、3人がそれぞれ、内なる自己と見つめあい、築き上げてきている人格があるということだ。
それは互いの関係に良き刺激を与えている。
惰性でもない安堵でもない心地よい緊張感。
これこそが、『緑柱玉の世界』の魅力なのだろう。

そして心の叫びのような文章は、正隆氏の死を経験し、生とは何か、死とは何かを思い巡らせた結果、自らの経験と知識を、一つの世界にまとめ、正確な文章で映し出そうとしたのだろう。
この話を読んで感じるのは、雛美礼の成長だけではない。
男の良行氏、正隆氏の変化も重要である。

男の心理をここまで細かく表現してくれる話を知らない。
男だって、考え思うのだ。

変わることで生まれる至極の世界。
雛美礼により、父親の様な男性二人が触れることで二人の人生そのものが変わる。
人生の分岐点の存在。
人とのかかわり方のあり方、そんな不思議も読み取れる。
己の持っていた世界観、常識さえも変わるだろう。
快楽だけの関係もいい、精神だけの関係もいい。
読み人がそれぞれ何かを読み取ってくれることで、『緑柱玉の世界』が、様々な広がりをもってくれるのだ。

愛したい人、
愛されたい人、
愛されている人、
愛している人、

それぞれがそれぞれの見方でいい。
僕は、人を信じなくなった人に、この話しを読ませている。
多様な見方が出来、性的欲求、宗教心、信じる心だけでは無い不安、疑心、私利私欲、自己愛までもが書かれて居る事で、人の心の多様性を、感じられると思うのだ。
この、「緑柱玉の世界」読んで何か一つ愛を見つけたなら、その人の心には柔軟さがあるといえる。そしてその心は、愛を見つける事が出来るのだ。
そして僕が、この世界を読ませた事で、自分を成長させる事で、新しい世界を見つける事が出来ると知った者も多い。
悩む者、楽しんでいる者代わらない日常の中で、何が違うか、心の持ち方次第と言うことだ。「緑柱玉の世界」には、学ぶ事が多い。
「緑柱玉の世界」のファンの一人として、この先を期待したい。


以前の投稿文を再構成し、改めて、迷宮・緑柱玉の世界の成功を祈りたいと思っています。

2008.10 吉日

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