80年代の後半、テレビではいわゆるアイドルが大勢生まれ可憐な姿で歌っていた。
子どもたちの間ではまだファミコンの全盛期。
子どもの教育にとって、仮想現実の遊びは目の敵にされ、
ウワサや呪いや魔法といった子どもじみた事は排除すべしとされていた。
「ライフキングの伝説」というあるゲームソフトにまつわる悲惨なウワサからこの物語は始まる。
悲惨ゆえに子どもたちは夢中になり、その謎に挑む。
主人公はキャリアのある母とマンションで二人暮らしの少年。
全国チェーンの進学塾に通い、毎日さまざまな出来事の中で
ゲームを最後までやり遂げる事で、ぼんやりとした未来の不安を晴らせると信じている。
やがて不安は、この世(おとな)をも覆いつくすものだと気がついているから、
彼と友人たちは水面下で必死でゲームを終わらせようとする。
子どもたちは次第に現実に敗退していくが、子どもの中でもキングがちゃんといる。
全国模試でトップクラスの顔も知らない仲間や、友人の弟である天才的ゲーマー。
ゲームを終わらせる事なく解決に導こうとする、彼らの健気さ。
なぜこの本を今思い出したかと言えば、今の自分を重ねているからだと思う。
物語の最後に子どもたちは、自分のデータを賢者の石(ディスク)に保存して封じ込める。
自分のデータ、自分のデータ、って何だろう。
私のデータってなんだろう。
つまり私はウェブ上で自分の「ライフキングの伝説」をやっているわけだ。