市ヶ谷日記

喜寿を超えた老人です。日々感じたことを、過去のことも含めて、書き記しておこうと思います。

紅白歌合戦出場者の選び方は不透明。NHK職員への賄賂は、受けた職員も、贈った業者も、法律に触れない

2016-01-23 | 独吟
 新春早々から、SMAP解散騒動が世間の耳目を集めたが、それに関連して昨年末の紅白歌合戦の出場者の選定について、様々なことがマスメディアを賑わせている。
 NHKの紅白担当者が芸能界のボスと相談して決めるとか、大勢のタレントを抱える事務所が決定権を握っているとか、レコード会社の枠があるとか、面白おかしく伝えられている。
 しかし、紅白歌合戦に誰が出場するかは、NHK(の職員)が選定し、出場者と協議して決定するのが原則である。紅白に出場することは、歌手としての経歴を飾り、後々のギャランティーを高めるうえで極めて重要である。視聴率が低下したとはいえ、テレビの歌番組で紅白以上に影響力のある番組は存在しないからである。
 それゆえ、紅白歌合戦の番組編成に関わるNHK職員はタレント歌手の生殺与奪の権を持っているといっても過言でない。歌手ならびに歌手の所属する事務所や関係するレコード会社が、紅白歌合戦に出場させてもらうために、血眼になってNHK関係者にアプローチするのは当然である。そうした働きかけが極まれば、賄賂の提供という形をとることも起こり得よう。
 我が国では、公務員がその職務に関し金銭等を貰ったり、そのような金銭等を公務員に贈ったりした場合、刑法上の贈収賄罪の対象になる。そして、公務員でなくても、公共的あるいは公益的な団体等の役職員(例えば、日銀、商工中金、政策投資銀行、国立大学、NTT、日本たばこ産業、日本郵政、日本郵便、NEXCO各社、JR各社(東日本、東海、西日本を除く)、METRO、成田・中部・関西の各国際空港、中央競馬、年金機構、スポーツ振興センター等の役職員)や本来公務員がすべき仕事を委託されている民間人(例えば、駐車監視員、自動車検査員、技能検定員等)も、贈収賄罪の適用において公務員と同様に扱われる。
 しかし、不思議なことに、NHKの役職員については、贈収賄罪の適用において、役員12人だけが公務員とみなされ、他の1万人を超える一般職員は民間会社の社員と同じ扱いである。NHKが法律により国民から受信料を徴収する権能を賦与されている特殊法人であることに鑑みれば、極めて不合理なことと言わざるを得ない。
 これはあくまでも無責任な噂であるが、NHKをはじめテレビ各社の番組に出演するには、男はお金、女は身体を提供するのが当たり前と言われている。紅白歌合戦の出場者の選定が芸能プロダクションや業界有力者の意向に沿って行われるという話が喧伝されるのは、こうした汚い部分を隠すカモフラージュではないかと疑われても仕方がない。
 李下に冠を正さず、である。NHKの職員は、贈収賄罪の適用において、公務員と同じ扱いを受け、一般人よりも重い責任を負うべきである。

婚活、遂に高尾山へ

2016-01-13 | 独吟
 体力維持のため週に一度は高尾山に登ることにしているが、先日、今まで目にしたことのない、若い男女30人くらいのグループに出会った。初老の男性ガイドが先頭に立ち、それに海外旅行の添乗員のような役割をする若い女性が同行している。グループの男女はいずれも20歳台で、きちんとした身なりをしている。こうした一行が列を乱さず行儀よく高尾山の一号路を登っているので、目に付いたのである。
 当方は高齢であり、他の登山者に次々と追い抜かれていくのであるが、不思議なことにこのグループを追い抜くことになった。彼らは若くて元気であるので、歩き始めれば直ぐに当方に追い着き、先を進む。しかし、頻繁に小休止をするので、再び当方が追い抜く、ということを繰り返した。そうこうしているうちに、この一行の様子が徐々に分かってきた。
 添乗員のような女性が列の前部に行ったり、後方に下がったりして、何やら指図している。
「女性の方はそのままで、男性の方は前の人と替わってください」
と叫んでいる。
 小休止は隣り合う男女が交代するためにしているのである。そして、新しい組み合わせの男女は互いに「私、○○といいます」と自己紹介したり、「お仕事は何ですか」とか、「趣味は何ですか」とか尋ねたりして、会話を弾ませている。
 鈍感な当方にも直ぐに、このグループが「婚活」の目的で高尾山に来ていることが分かった。婚活には縁遠い老人であっても、こうしたことにはまだ興味を失っていないので、少し無理をして彼らと歩みを一緒にし、会話を盗み聞きすることになった。
 当方も青春の時代があった。彼らの会話を聞きながら、それとなく若かりし頃、ガールフレンドを求めて努力し、時には歓喜に飛び上がり、時には落胆に打ち沈んだ記憶を思い起こした。
 自分が若い頃は、このように簡単に女性と付き合える機会はほとんどなかった。皆、貧しく、今流行の派手なトレッキング用のウェアーやシューズを持っていなかった。大体において、交通費を払ってまで高尾山に出向く余裕はなかった。老人の繰り言ではあるが、今の若者は本当に幸せだというしかない。
 それにしても、婚活の舞台に高尾山を選んだ業者(あるいはNPO団体かもしれない)の卓見は見事である。高尾山は標高が低いとはいえ、登るのは最近の虚弱な若者にはきつい運動である。登るときの姿を見て、その人の体力や健康状態を推し量ることができる。そして、結婚生活において最も必要な思いやりや頑張りの程度も的確に判定できる。ホテルやレストランでのパーティー形式の婚活に較べれば、高尾山を登る婚活の方が人生の伴侶を選ぶうえで数段も上の好条件を備えているといえよう。
 若い男女の一行から別れた後、この行事への参加費はいかばかりか考えてみた。彼らの話から、正午頃、京王線の高尾山口駅に集合したようであり、これを起点としてグループ一行の行程を勝手に想像した。高尾山口駅から高尾山の頂上まで、1時間半くらいかけてゆっくり登る。この間、お互いの顔と名前などの概要を知り合う。頂上では、自由行動。山頂付近には売店が数軒あり、簡単な飲食はできるが、これらは各自負担。ここに1時間くらい滞在して、相互の親交を深める。帰りは、整列せずに、自由に相手を選び、話をしながら下山する。ここまでは、各自が自分の負担で飲み食いした分を除けば、経費ゼロである。
 高尾山口駅の近くには、最近オープンしたばかりの「京王高尾山温泉 極楽湯」がある。利用したことがないので、その中がどうなっているか分からないが、ここで温泉につかり、食事をして解散、ということであろう。この経費が3000円くらいである。
 このほか、ケーブルカーの清滝駅から高尾山口駅にかけては、多くのレストランや料亭が立ち並んでおり、これらを利用することもできる。
 要するに、この婚活ツアーに必要な直接経費は、食事代等の3000円とガイド・添乗員の費用だけである。したがって、参加者から5000円程度の代金を徴収すれば、このプロジェクトは営利活動として十分に成立する。一方、参加者にすれば、適切な伴侶を見つけ出す確率は低くても、1日女性と行動を共にすることができるわけであり、5000円は安い出費である。
 安倍政権は今、少子化対策として保育所等の整備や子育て世代の支援事業等に躍起となっているが、高尾山を舞台にした婚活ビジネスの方が出生率の向上によりいっそう寄与するものと思われる。国は、下手に予算を付けて無駄金を使うより、こうした婚活ビジネスを振興することに努めるべきである。政治家や官僚の皆さんの発想の転換を期待したい。