「大義なき解散」、「森友・加計学園の疑惑隠し」などと揶揄されていた今回の衆院解散が、「希望の党」の出現により俄然面白くなってきた。更にこの「希望の党」に民進党が解党的に合流することが明らかになり、否が応でも今回の解散総選挙が今後の日本の命運を左右する重大な転機をもたらすこととなった。国民はこうした動きを注意深く監視し、真摯に対応する必要がある。
それにしても民進党の「希望の党」への合流は、関係者はもとよりマスメディアもまったく想定外のことであった。激しい路線闘争を勝ち抜き就任したばかりの前原誠司民進党代表が最初の仕事として党の解体を敢行するなど、誰が予想したであろうか。まさに日本人離れした荒業であると言わざるを得ない。
民進党、そしてその前身である民主党の代表に選任された人たちは異質とも言える人物が多い。政権獲得以降の初の党代表であった鳩山由紀夫氏、2代目の菅直人氏、(その後を継いだ野田、岡田の両氏はともかく)、海江田万里元代表、蓮舫前代表、そして現在の前原代表、いずれも日本人とは異なる感性の持ち主である。こうした個性豊かな人物を党代表に選ぶ政党がひとたびは政権を獲得したが、短期間のうちに消滅することとなったのは我が国の政治にとって幸運であったと言うほかない。
さて、今回の衆議院議員選挙を俯瞰した場合、
① 自由民主党は、若干数は減るであろうが、まずまずの議席を確保するであろう。安倍首相の弱味であった二つの学園問題は今回の 騒動を経て国民の関心から消え去ってしまった。
② 公明党、共産党は、予想されている通りの勢力を維持するであろう。この二つの政党は世の中が如何に変わろうとも支持者の数は変わらないからである。
③ 民進党は、前原党代表の決定通り、衆院に関しては議席ゼロになる。ただ、「希望の党」の公認を得た前議員等は数は減るが当選する可能性が高い。これに反し「希望の党」にもぐり込めなかった人たちは、無所属で出馬するにせよ、新しい政党から出馬するにせよ、政党交付金等で蓄えられた民進党の資金を使うことが出来ず、相当の苦戦を強いられるであろう。
④ 日本維新の会、自由党、社会民主党などの弱小政党は、維新の会を除き、今回の騒動がなくても消滅の運命にあり、個人的な政治力で当選可能な人たち以外はすべて議席を失うであろう。
⑤ 最後に「希望の党」公認の当選者であるが、これがどのくらいの数に登るかは予想が難しい。自他ともに選挙に強いと認められる候補者が少ないからである。「希望の党」の結成に慌てて参加した人たち、民進党前議員で無所属で戦う勇気のない人たち、それにこれまでの選挙において自民党からも民進党からも公認が得られなかった人たちが主な供給源である。最大限に甘く見積もっても、現在の民進党の議席数を超えるのがやっとであろう。
筆者は、今回の解散総選挙を通じて与野党の勢力図に変化はないと考える。一部の政治評論家が予想するような「希望の党」の躍進は実現しないと考える。
ただし、今回の衆院選挙において政権交代が起きなくても、小池都知事が意図して引き起こした政治変動は快挙として歴史に残ることだけは確かである。
今回の選挙を境に、これまで民主党・民進党のリーダー等として活躍してきた鳩山、菅の両元総理、海江田万里元代表、枝野幸男元内閣官房長官、赤松広隆元衆院副議長、福山哲郎元外務副大臣、山井和則国対委員長代行、長妻昭元厚生労働大臣、辻元清美党幹事長代行などは、影響力を持たない政治家に転落するであろう。
また、今回の政治騒動の渦中で不可思議な動きをした小沢一郎自由党代表、石破茂前地方創生担当相、渡辺喜美参議院議員等も往年の威力を失い、世間の耳目を集めることは少なくなるであろう。
更に、日本初の女性宰相候補などとして一時は巷間を賑わせた田中眞紀子元外務大臣、野田聖子総務大臣、小渕優子元経済産業大臣、稲田朋美前防衛大臣、福島瑞穂社会民主党副党首、辻元清美民進党幹事長代行たちも泡沫の花として消え去って行くであろう。
これらの人たちに共通するのはリベラルで代表されるような一種の臭気である。国政を営む見識や能力を持ち合わせていないにもかかわらず、世界の平和、民族平等、民主主義を唱える一方で、日本の優れた文化を否定し、日本人を極度に蔑視し、日本人の若者から希望を奪い去るようなことをしてきた政治家たちである。
小池都知事が独断専行して起ち上げた「希望の党」はこうした人たちを政治の世界から一掃する可能性を秘めている。小池百合子都知事が総理大臣に転進するかどうかがマスメディアで取沙汰されているが、そのようなことは問題でない。彼女の功績は、似非リベラルからの攻撃を覚悟のうえで、これまで政界を歪めてきた数々の悪しきしがらみを国民の眼に曝し、国民を覚醒させることにあるからである。このことは彼女が総理大臣になる以上の良き効果を我が国にもたらすことになる。